【風の谷のナウシカ】巨神兵を徹底考察&解説。原作では破壊神ではなく調停の神!?オーマの最期、アニメと漫画の巨神兵の違い。についての記事をご覧いただきありがとうございます。
この記事では『風の谷のナウシカ』の考察として、アニメ原作でも大活躍だった『巨神兵』について徹底考察&解説していきます。
宮崎駿監督最新作2023年7月14日公開予定の『君たちはどう生きるか』、ジャンルは“冒険活劇ファンタジー”ということで、もしかしたら似たモチーフが出てくるかもしれないので、今のうちに振り返っていきましょう。
目次
巨神兵とは。『風の谷のナウシカ』物語の元凶。
登場作品 | 風の谷のナウシカ |
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名前 | オーマ |
名称 | 巨神兵 |
アニメの印象的なセリフ | 「薙ぎ払え」 「すげぇ、世界が燃えちまうわけだぜ」 「腐ってやがる、早過ぎたんだ」 |
漫画の印象的なセリフ | 「わが名はオーマ」 「風の谷のナウシカの子オーマ!!」 「光輪を帯し調停者にして戦士なり」 |
巨神兵とは、宮崎駿原作の漫画・アニメ『風の谷のナウシカ』に登場する、“世界を滅ぼす力を持つ”といわれる巨大人型人造生物です。
遥か昔、栄華を極めた旧人類の文明を終わらせた「火の七日間」と呼ばれる最終戦争で、世界のほとんどを焼き尽くしたといわれています。
漫画版とアニメ版とで巨神兵の扱いは大きく異なりますが、アニメでは冒頭の「火の七日間」のイメージで映った光る槍を持った巨人影の姿や、腐海に散らばった骨、クライマックスの身体が溶けかけた不完全な形態しか映されませんでした。
しかし、漫画版および短編特撮映画『巨神兵東京に現わる』では完全な個体の姿が描かれており、原作では流暢に人語を喋るほか、人造生物感ある巨体と本気のプロトンビーム、光輪をおびてまさに神のような姿を見せてくれます。
アニメでの巨神兵での活躍。ただの破壊兵器に過ぎない?
工房都市ペジテが地下の旧世界の遺物を掘り起こしている際、偶然生きている巨神兵の繭が発掘され、この情報を掴んだトルメキアが巨神兵強奪のためペジテに侵攻し、いざこざが起きます。
非道な侵攻作戦に復讐するためペジテは王蟲を使い、風の谷に駐留しているクシャナ軍を襲います。
王蟲の群れに対抗するため、クシャナは未成熟の巨神兵を起こし迎え撃ちますが、未成熟な巨神兵の身体はプロトンビームの衝撃と熱に耐えきれずドロドロと溶けて骨になってしまいます。
有名な話ですが、あの庵野秀明監督が描写に携わっているだけあって迫力は満点です。
宮崎駿作品の中でも屈指の名シーンですが、戦争の元凶、風の谷が襲われる原因でもあった巨神兵のあっけない最期にがっかりしてしまった方も多いでしょう。
漫画原作での巨神兵の活躍。調停者にして裁定者。
掘り起こされ方等はアニメと同じですが、漫画ではある程度成熟した状態で登場し、(アニメが3割成熟なら漫画原作8割成熟くらい)ナウシカとともに“旧世界の秘密と真実”があるという“墓所”を封印するか見定めに行きます。
アニメ版にはなかった設定で、巨神兵の制御装置として「秘石」というアイテムが存在し、この秘石を巡って序盤は物語が進んでいきます。また、巨神兵は目覚めたときに秘石を所持していたナウシカを母親として認識します。
最初は身体も強制的に叩き起こされたためか未成熟な部分もあり、力の使い方がうまく制御できていなかったり、子どもが蟻を遊びで殺すかのように人を殺し楽しむなど心身ともに幼さがみえていました。
しかし、ナウシカが巨神兵に“オーマ”という名を与えたところから知能レベルが急成長し、
「わが名はオーマ」
「風の谷のナウシカの子オーマ!!」
「光輪を帯し調停者にして戦士なり」
と自らを名乗り、ナウシカを謀ろうとするトルメキアの王子たちの謀略にも、二手三手先を読んで上をいきました。
また自分が使う“毒の光”や“プロトンビーム”の威力の調整や応用した使い方もできるようになります。
下記にて更に詳しく考察をします。
巨神兵の種類。中にはパイロットがいるものも。
巨神兵についてアニメや漫画をよくよく観察してみるといくつか種類があることがわかります。
アニメ巨神兵
劇場版に登場した、クシャナの命令に従い王蟲の大群と戦ったタイプです。
クシャナやクシャナが搭乗している戦車と比べると身体は小さく、未成熟な状態なだけで完全であれば他タイプのよううな見た目になるかもしれません。
オーマと名付けられた巨神兵
ナウシカを母と慕い、ラスボスの墓所と戦い名誉の戦死を遂げたタイプです。
アニメ版のように腐って解けたりせず、プロトンビームを連射し人語も話せますが、それでも描写のいたるところに未成熟な部分も垣間見え、力を使いすぎて弱っていっていたのか、まだ未成熟だったのか、そもそも巨神兵には消費期限がるのか疑問が浮かぶ個体です。
旧世界を焼いた火の七日間巨神兵
光の槍を持ち、世界を七日間で火の海に変えたとされるタイプです。
旧世界の超高層建造物すら霞むほどの巨体であり、一般の人が“巨神兵”と聞いてまっさきに思い浮かべる姿だと思います。
地上からは、かろうじて光る目だけが確認することができますが、これが巨神兵の“完成体”なら漫画原作版もアニメ版の巨神兵も未成熟どころの話ではありません。
ただ、この巨神兵はあくまで回想シーン、旧世界の人たちからの“言い伝え”であり、「火の七日間」という“伝説”を具現した描写のため、旧世界の言い伝えが恐ろしさのあまり、誇張された表現になったという可能性もあります。
また巨神兵にも進撃の巨人のような等級がある可能性もあり、“人造の神”として造られたものと“大量破壊兵器”として造られたタイプがあるのかもしれません。
腐海や砂漠で朽ちている巨神兵。
アニメ・漫画の序盤、ナウシカが腐海歩きしているときに見つける巨神兵が化石になったタイプです。
角が生えているものや、内部に空洞があるものなどがあります。中には空洞がありそこには明らかに“操縦桿”があってコックピットのようになっているものもあります。
「巨神兵には人が乗るタイプもあったのか…。」と驚きですが、ただ単に宮崎駿監督の中の巨神兵像がまだ固まっていなかっただけで、初期の構想では、巨神兵はナウシカが操縦することもできるようなロボットになるルートもあったのかもしれません。
人造の神としての巨神兵。墓所が語る巨神兵。の秘密。
巨神兵がエヴァの元ネタなら、ラミエルの元ネタは墓所かな?#エヴァンゲリオン #風の谷のナウシカ pic.twitter.com/P7FB95viZL
— アリスケ (@walking_planets) May 20, 2020
さて、『風の谷のナウシカ』の漫画原作には巨神兵の他にも人造の神が登場します。それは墓所および墓所の主です。
※墓所に関する詳しい考察&解説はこちら
※下記の内容は漫画原作『風の谷のナウシカ』のネタバレが含まれます。
墓所の主が語った旧世界の秘密と真実は壮絶で悲惨、最悪の惨状でした。
“数百億の人間が生きるためにどんなことでもする世界”
“有毒の大気、凶暴な太陽光、枯渇した大地、次々と生まれる新たな病、おびただしい死”
“ありとあらゆる宗教、ありとあらゆる正義、ありとあらゆる利害”
“調停のために神まで造ってしまった”
最後の文章以外は今の人類にも心当たりがあって現実的で辛いですね。
旧世界の末期は、いろんな病気や天変地異が人間を襲い、それでも人間同士で戦争をやめないまさに地獄、修羅の国です。
多種多様な考えや宗教が氾濫し、もはや人間同士での調停が不可能と判断した、当時の旧世界の文明人は圧倒的な武力を持つ第三者、つまり全ての人類を公平にみられる神のような存在を欲し、調停と裁定のために自分たちで神を作ります。
そして造り出したのが巨神兵でした。
ただ、“造られた”のは巨神兵だけではなく、ナウシカや腐海、蟲さえも旧人類が造った新世界が訪れるまでの“繋ぎ”として用意された生き物でした。
いわば巨神兵もナウシカ達人造人間も製造目的は違えど、みんな試験管で兄弟みたいなもんだったわけですね。
巨神兵が墓所を焼いた理由、巨神兵の最期。
巨神兵はナウシカの命令で墓所を焼きました。調停者というわりにはずいぶんナウシカよりなような…。
実際、巨神兵はナウシカに呼びかけられる前は墓所の反撃をくらってのびていましたから、“ナウシカ”と墓所の主の問答をきいていません。
もし、墓所の言い分もちゃんと聞いていたら、巨神兵はどのような判断をしたのかも気になります。やはり聞いたうえでも墓所の主を殺すのでしょうか?
「滅びはすでに生命の一つであり、浄化された世界で死ぬしかないならそれもまた必然。それでも諦めず生きていく。」
破滅的とも思える考え、そして自分の存在意義を否定された墓所の主はナウシカ達を中枢に閉じ込め、光による精神攻撃をします。
しかし、森の人とヴ王に守られたナウシカに精神攻撃は効かず、ナウシカの命令によって巨神兵が墓所にプロトンビームを放ちます。
巨神兵の攻撃で心臓部と卵を破壊された墓所は絶叫しながら絶命しました。
墓所にとどめを刺した巨神兵は、すでに身体はボロボロで下半身と上半身は分離している状態で、ナウシカに看取られながら墓所から噴き出る血の海に沈んでいきました。
破壊と慈悲の混沌。アニメと漫画の巨神兵の違い。
オーマの死に悲しむナウシカをみて「カアサンナカナイデ」と最期までナウシカを気遣いながら死んでいきました。
墓所はそれ全体が建造物のようにみえる墓所の主の肉体であり、真っ青な返り血をあびたナウシカはまるで伝説の“青き衣を纏いしもの”のようになっていたのでした。
「青き衣をまとったナウシカが金色の大地を歩く。」という物語のラストの絵面はアニメも漫画も同じです。
しかし、アニメ版では「王蟲の返り血によって服が青く染まっている」のが「墓所の返り血によって服が青く染まっている」になっています。
巨神兵とはアニメ版では破壊の象徴でしたが、漫画版では慈愛に満ちています。
トルメキアの王、ヴ王はナウシカを「気に入ったぞ、お前は破壊と慈悲の混沌だ」と言うセリフがありますが、これはナウシカの子である巨神兵にも当てはまる言葉でしょう。
まとめ。精神の偉大さは苦悩の深さによって決まる。
巨神兵も最初は、従順なアニメ版巨神兵が可愛いくみえるほど、残酷な人殺しや破壊を意図的に楽しむ巨人でしたが、最期には慈愛にあふれる勇敢な戦士として最期を迎えました。
精神の偉大さは苦悩の深さによって決まるとナウシカは言いましたが、巨神兵もただのモンスターではなく、一人の登場人物としておおきく成長していたと思います。
墓所に向かう道中では寒さに凍えるナウシカを気遣い、手で温めるほっこりシーンもあります。(チェレンコフ放射っぽい光だけどね…TT)
アニメの『風の谷のナウシカ』が大好きで、まだ原作未読という方はぜひ原作の巨神兵の勇姿とナウシカを母と慕うかわいいところをみてみてください。
以上まとめると
- 「巨神兵」はアニメでも大活躍だったが原作はもっと活躍する。
- アニメでは孵化がはやく未熟だった「巨神兵」は原作では完全体が登場する。
- 漫画版および短編特撮映画「巨神兵東京に現わる」では完全な個体の姿が描かれている。
- アニメ版にはなかった設定として、巨神兵の制御装置が存在している。
- 秘石を持つものを母親として認識し、作中ではナウシカを母と認識する。
- 最初は力の使い方がうまく制御できていなかったり、心身ともに幼さがみえた。
- ナウシカにオーマという名をもらうと自らを調停者となのり、心身ともに急成長した。
- 巨神兵はいくつかタイプがある。
- 旧世界の末期は、いろんな病気や天変地異が人間を襲う「地獄」だった。
- 巨神兵はナウシカの命令で墓所を焼き、調停者として旧世界の負の遺産を薙ぎ払った。
- 原作では破壊の象徴だったが、漫画版では慈愛に満ちている。
2023年7月14日に公開される宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』はどんな世界が描かれるの楽しみです。
冒険“活劇”ファンタジーなので明るい世界観なのかもしれませんが、個人的には荒廃した世界や世紀末、終末が大好きなのでそういう世界が観たいですね。
ちなみに、ここからは完全な余談ですがよく宮崎駿作品で最強は?という議論があり、その中で巨神兵が使うプロトンビームが話題になりますが、宮崎駿作品で一番強いのは、未来少年コナンに登場したギガントです。
プロトンビームは所詮最高でも核兵器程度の威力ですが、ギガントの機種に搭載されている超磁力兵器の超大型ビーム砲は、地殻を貫くほどの威力を持っているといわれています。
防御力では墓所、持久力では巨神兵が上回ると思いますが、一発の破壊力ならギガントが最強だと思います。結局人間が一番恐ろしいということですかね。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。