今回は映画『テネット/TENET』について考察、解説していきたいと思います。
車が逆走したり、発射した銃弾がもどったりと、アクションの処理に頭が持っていかれて内容がイマイチ把握できなかった方も多いと思います。
なんで未来人と戦っているのか?ラストのビル破壊シーンの意味は?そもそもTENETってなに?
気になる疑問について書いていこうと思います。
「『テネット/TENET』を観たけど設定や描写がよくわからなかった。」
「2回目をもっと楽しみたい。」
「どんな映画なのか初めからある程度知っておきたい。」
という方必見です!
第三次世界大戦が奪い合うのは領土でもお金でもなく『時間』。
『テネット/TENET』では一体誰と誰が戦っていたのか?
対局を見れば「未来人VS現代人」ですが、劇中で描かれているのは「悪の未来人に現代人抹殺の司令を受けた現代人(セイター)」VS「善の未来人に現代人抹殺を阻止する命令を受けた現代人(名もなき男やニール)」です。
つまり『テネット/TENET』は壮大な代理戦争というわけです。
「過去へ旅立つ」というのは、SF映画では多く描かれてきました。
どんな作品でも「過去へ旅立つ」には必ず、人や物を過去へと運ぶタイムマシンや時間を飛び越える道具が登場します。
そしてそのマシンや道具は人間をあっという間に過去や未来に運んでいってしまいます。
しかし、『テネット/TENET』に登場する回転ドアという装置は人間を過去に運んでいってくれません。
「過去に行きたいなら自分の足でいけ」と言わんばかりに人間が進む時の流れだけを逆にします。
つまりどういうことかと言うと、10年前に戻りたいなら、10年間時間を逆行しないといけません。
10歳の男の子が10年前に戻る頃には20歳になっています。
みんなが思い描くタイムマシンではない、一見使えなさそうにみえる『回転ドア』ですが、悪い未来人達はこれを使ってとある計画を考えました。
「時間の向きを逆にすることで、地球の環境を逆再生しよう。」
未来人の生きる世界では、既に地球は荒廃しており、もはや人間が住めなくなっていました。
そこで悪い未来人は時間の流れを逆側にして、だんだん綺麗になっていく(汚れる前に戻っていく)地球で済むことに決めました。
しかし、自分たちが逆行しようとすると、順行に進んでいる現代人達とぶつかってしまいます。「じゃあ現代人を皆殺しにすればいいや。」と
時間の流れは一方通行です。
例えるなら、道は1本で、大阪から東京にいくのは大丈夫ですが、東京から大阪へは戻れません。
戻ろうと思っても、一本道の道路を車が逆走すればぶつかってしまいます。
でも大阪に戻りたい東京に来てしまった人達は、道路の標識を「大阪→東京」から「大阪←東京」に変え、今大阪から東京に向かってきている車を全部破壊することに決めました。
標識を帰るのが回転ドアの役目、大阪から東京に向かってきている車を全部破壊するのがセイターの役目です。
悪役セイターの動機。どうせ死ぬなら人類全員道連れだ!
未来人達は、逆行する世界で、順行する現代人とぶつからないように、順行している現代人を皆殺しにできる『力』を送りました。
その力を受け取ったのはセイターです。未来人から送られてきたのは「逆行する技術」「金」「司令の手紙」です。
どんな司令かはわかりませんが、セイターが残りの寿命を知っていたことや、死ぬ間際で現代人も殺そうとしていたことから、
「残りの寿命を裕福に暮らせる金をやる。その代わり逆行技術を使って、現代人全員と無理心中をしろ。」といった感じでしょうか?
セイターは放射能汚染された区域でゴミ拾いをしていました。誰よりも深い絶望を知っいる上、自分の寿命が少ないことも呪っていたことでしょう。
ここから未来人に現代人皆殺しの司令を出されたセイターVS未来人に現代人を守る司令を出された名もなき男達との代理戦争が始まっていくわけです。
『TENET』の意味はラストの10分間を指す言葉?
劇中で『TENET』という言葉の意味が明かされました。正体は、未来の名もなき男がボスの順行する現代を守る組織の名前でした。
しかし、『TENET』にはもうひとつの意味があります。
それは主義や思想という意味ではなく、スタルスク12での10分間の挟撃作戦を指す言葉なのです。
『TENET』は順行するTEN(10分)と逆行する10分(NET)をくっつけた言葉、つまりラスト10分間の現代と未来の挟撃作戦を指す言葉だったのです。
まさに回文映画。クリストファー・ノーラン監督の映画のタイトルはほんとにどれもかっこいいです。本編でしっかり描いておきながら、多くは語らない姿にしびれちゃいますね。
ニールの正体は成長したマックスだった?
映画を観ると、ついつい登場人物達のバックボーンや経歴が気になってしまいます。『テネット/TENET』では悪役、主人公、ヒロインのバックボーンや経歴は明かされましたが、準主人公ともいえるニールの経歴が中途半端でした。
命をかけて名もなき男を守り、自分が死ぬ運命とわかっていても名もなき男と行動を共にした映画で1番かっこいい登場人物です。
映画カサブランカの名言「これが美しい友情の始まりだな」を彷彿とさせる「これが美しい友情よ終わりだな」は、映画を観ていて男泣きしそうになります。
その正体については未来の『TENET』のボスになる名もなき男に司令を受けてやってきた未来人だっのですが、素性は明らかになっていません。
これに関しては映画監督の山崎貴氏が面白い考察を語っていました。
それは「ニールは成長したマックスではないか?」という考察です。
「ヒロインのキャットと悪役セイターの間に生まれた息子マックスが、成長して母親を命をかけて救ってくれた名もなき男を助けるために戦場へと向う。」
たしかに成長したマックスなら過去に戻っても子供なので名もなき男にも周囲の人間にも正体はわかりません。
それに、命をかけて他の人の命を守るにはそれなりの理由があるはず、全く無関係の人間ではないと思っていましたが、ニールがマックスで、「名もなき男への恩返しをする。しかも、自分が無力だった頃に戻って。」と考えるとニールはますますかっこいい登場人物ですね。
その結果、主人公は助かり、無事にミッションを終えることが出来ました。
滅びの未来は変えようが無いと思えていたが、希望が生まれました。主人公は変え未来を変えることができたのです。
それすらも未来人の計画通りだったかはわかりませんが…!
いろいろ複雑にみえた映画の構造も、よく考えればなんの矛盾なく作られているのです。
クリストファー・ノーラン氏がみせてくれた新感覚のタイムアクションは、この時期の映画館を救ってくれることでしょう。
それでは次の記事で!