今回はNetflixにて独占配信中『ガメラリバース(GAMERA -Rebirth』についてレビューしていこうと思います。
初めて予告がでた時はガメラファンはもちろん、ゴジラやウルトラマンなど怪獣ファンが興奮して楽しみにしていましたが、いざ公開されてみるとあまり話題になっていないような…。
そういう自分も配信が完結してから一気に観ました。いざ、視聴してみると…うーん、なんだか手放しに楽しめない内容でした。
レビューサイトやSNSなどでも評価はかなり分かれているようで、今回は『ガメラ リバース』の”良かったところ”、”気になったところ”にわけてレビューしていこうと思います。
最終話まで視聴済みですが、本編のネタバレは極力なしでいきます。
目次
『ガメラリバース(GAMERA -Rebirth』 、ガメラとは?ガメラ渾身のリブート作品
そもそもガメラとは、『ガメラリバース(GAMERA -Rebirth』とはなにか、おさらいします。
ゴジラで有名な東宝…ではなく大映が生み出した怪獣”ガメラ”。亀をモチーフにした怪獣で、作品ごとに多少の誤差はあるものの子どもや自然の味方として敵対する怪獣と戦います。
ゴジラやウルトラマンより知名度は低いものの、映画のストーリーや特撮、怪獣デザインは魅力的なものが多く、今も尚熱烈なファンがいます。
『ガメラリバース』はそんな昭和、平成と愛されてきたガメラシリーズの集大成であり、リブート作品でもあります。
『ガメラリバース(GAMERA -Rebirth』あらすじ。怪獣×スタンド・バイ・ミー!?
『ガメラリバース(GAMERA -Rebirth』のテーマは夏、友、怪獣。
あらすじは1989年の夏、小学6年生の主人公ボコとジョー、ジュンイチは、小学生最後の夏休みを迎えていました。
ボコは私立に進学するため卒業したら離れ離れ…。他2人も家庭と人間関係に大きな悩みを抱えており、将来の不安と目の前にいる友達とのいつかくるわかれに不安を抱えた日々を過ごします。
そんな3人の前に、在日米軍司令官の息子であるブロディが現れ、いつでも3人で連絡を取り合えるよう無線機を買おうと、少しづつ貯めていたお金を奪われてしまいます。
ボコ達がお金を取り返しに行くと、街にギャオスとガメラが現れ戦闘になり、なんやかんやあって命からがら危険地帯から抜け出したことで、ボコ達とブロディは和解します。
そして怪獣を間近で見た少年達は、ガメラを良く知るという、ユースタス財団と共に行動することになります。
次々と現れる怪獣と戦うガメラ…。少年達はガメラと共に戦いの中で成長していきます。
時代設定も1989年というのが昭和であり、平成でもあるという意味深なもので、今までのガメラシリーズを繋ぐという意味が込められているのかも知れません。
それか最新の兵器や、戦術作戦を描くことから逃げてしまったか…。
レビュー:良かったところ
時代設定やあらすじは置いておき、先ずは『ガメラリバース(GAMERA -Rebirth』の良かったところから語っていきましょう。
怪獣プロレスの臨場感
ガメラリバースはとにかく爆風や火の粉がまうような表現、煙の漂い方が凄い!
怪獣プロレスが観ていて面白いというのはもちろんですが、特撮ではどんなに上手く誤魔化しても”火”や”爆発”は大きさ相応のものになってしまいました。
しかし、ガメラリバースでは火や爆煙に違和感がなく、アニメなだけあって周りの雰囲気に完全に溶け合っており、怪獣の巨大感や攻撃の凄まじさが特撮に勝るとも劣らないものになっていました。
子どもが主人公
ガメラといえば子どもが主人公です。今風かつ、昭和の雰囲気も感じる子ども達でした。
中流家庭で教育ママを持つ主人公ボコ、オタク趣味で周りに馴染めないジュンイチ、片親で親父が酒飲みのジョー、最初は嫌な奴だけど根は良い奴なブロディ。
彼らの成長も丁寧に描かれていました。
レビュー:気になったところ
しかし、ガメラリバースには何点か気になったところもありました。一部の描写や設定が不明瞭で、視聴者に疑問を投げかけるシーンもあったように思えます。
子ども…いる?これは”誰に”向けた作品なのか。
ガメラリバースのテーマは夏、友、怪獣と言いましたが、実際割合は1:1:1くらいです。
どれも時間をかけて丁寧に描こうとしているのはわかりますが、はっきりいって尺が長いだけで雑だと思いました。。
彼らが仲良くなる描写も、その回でスポットが当たる少年が周りと揉めて、ガメラが戦ってる足元でわちゃわちゃやってる内に仲直りするというものです。
その子が抱えている根本的なコンプレックスの部分はなにも解決せずに、うやむやにしてるだけです。
“悩みが解決されない”
という部分ではスタンド・バイ・ミーも少年が抱えている悩みが解決せず、物語が終わっていくため、それと同じように、少年時代の夏の刺激的で切ない思い出と言えなくもないですが、凄く薄味です。
例えば、いつも気丈に振る舞っているジョーが実は飲んだくれの親父に悩んでいるのなら、みんなの前でその悩みを打ち明けて、解決はできなくても一緒に涙を流すくらいしてもいいと思いました。
映画の尺やコンテクストの制約により、それらを全て表現するのは難しいことは理解しています。少年の青春だけでなく、怪獣も描かなければいけませんからね。
ただ「子どもが主役である必要が本当にあるのか?」と考えさせられました。
この映画は元々、子ども向けに制作されていますし、子どもを出演させることは意味があるとは思います。
大人では思いつかないような作戦を思いついたり、ガメラが協力することで敵をやっつけるのは、子ども達にとって胸熱なポイントかもしれません。
しかし、子どもが考える作戦以下の行動をする軍隊や脚本の都合で、あり得ない行動をする大人キャラクターを観たとき、冷めてしまいました。
現代では、大人も子どもも引き込まれるストーリーが求められていると思います。
下記でも語りますが、はっきり言って”子ども向けだから”、”子どもも観るから”という甘えが垣間見える描写が多かったです。
時代設定や兵器にリアリティが無い
戦車や航空機は、凄くリアルに描かれています。ブロディやジュンイチも兵器に関して、ウンチクを語っているセリフが、わざわざ入れられていたりと、制作陣の気概を感じます。
しかし、1989年という時代設定にも関わらず、イージスシステム搭載艦やストライカー装甲車といった、軍隊の装備が最新鋭どころか未来の技術を使っています。
冷戦時代らしく、アポロ計画の話も出てきたかと思いきや、月面基地まで存在し、月に人が暮らしているという設定まで出てきます。
言い訳を考えるとするなら、ガメラやギャオスを創った古代人が技術提供したとも考えられますが、作中では一切説明はありません。
戦闘も在日米軍が出張ってきて、新宿で市民の避難無視してドンパチやったり、逆に怪獣の足元までわざわざ戦車で行って踏まれに行ったり、”作戦”という二文字が画面から全く感じません。
在日米軍が出張ってくるというのは、アメリカが世界の警察になると言っていた頃の話なので、ありがた迷惑な感じがリアルといえばリアルかもしれません。
しかし、シン・ゴジラを観た後だとチープな印象がありました。
人間のセリフや動きの違和感
ガメラリバースに登場する人間はセリフや動きが良い悪いではなく、”気持ち悪い”です。
少し過激な表現になってしまいますが、他に表現しようがないです。
CGでアニメをつくっているせいか、人間がよく動きます。でもよく動くだけで、舞台俳優のような身振り手振りを意味もなくします。
これが舞台や実写映画なら演技としていいかもしれませんが、アニメの画風でやられると違和感しかないです。
更に身振り手振りが多い割には表現が固いです。
例えば人間の笑顔にも、微笑から泣き笑う表情が色々あると思いますが、ガメラリバースの場合CGパターンが少ないのか笑顔がワンパターンで不気味です。
まあ上記の問題は「絵柄が気に入らない」というような個人の問題なので、気にならない人もいると思います。実際自分も最終話辺りでは気にならなくなっていました。
しかし、人間の気持ち悪さはセリフにもあります。
例えば以下のやりとり。(怪獣の卵の状態を波形にして観察している様子。)
「この数値…。」
「気になるのか。」
「わずかだけどパルスが生じてる。」
「移送に問題はなかったはずだろ。」
「ノイズの可能性は?」
「そうですね誤差の範囲かと」
こんな会話がいきなりでてきます。一応この会話は後にジャイガーが卵から孵るという伏線(?)になっているのでまだいいほうですが、作中にはやたら専門用語”風”の横文字を入れてきます。
他にも少年達が軽口を叩きあったりしますが、全て意味深でかっこいい風なだけで、その場の流れやキャラクターの感情をぶった斬るようなセリフがほとんどです。
わざわざ、難しい言葉で専門家風なやりとりをしていますが、やりとりがかっこよくもなければ実際に使われるような専門用語を使うわけでもなくてモヤモヤします。
視聴者の脳に無駄な専門用語を刻んでくるぐらいで、やっと観ていて楽しい人間シーンになります。
まとめ。観る価値はある。続編にも期待したい。
少し気になったところの方が多くなってしまいましたが、怪獣プロレスは最高でしたし、見る価値はあります。
特に監督も自信があると語っているように怪獣プロレスは観ていて面白いですし、昭和生まれの怪獣が生き生きと暴れている様子は観ていて楽しいです。
インタビューによれば、実は怪獣プロレスのシーンは本編の倍以上あったそうですが、尺の都合上カットしてしまったそう…。
ますます子ども騙しの人間シーンは最低限にして、怪獣プロレスに振り切ったものにしても良かったと思ってしまいますね。
さらに言えば平成ガメラでガメラのみならず、怪獣ブームをリバースしてくれた金子修介氏がガメラのリブート企画を持ち込んでいたらしいが、本作の企画が既にあったせいでボツになってしまったそうです。
あまりゴジラの名前を出したくはないですが、シン・ゴジラ以降、脚本の都合でキャラクターをバカにするのではなく、キャラクターの頭の良さを描いた上で怪獣の人智を超えた力を描かないと観客はシラケるようになりました。
いや、シン・ゴジラではなく正確には、平成ガメラ第一作以降と言ってもいいかもしれません。
そんな平成ガメラのいい所を切り取って、昭和ガメラ後期の迷走していた雰囲気をリバースされても、ファンも新規も誰も喜ばないと思います。
以上まとめると
- 「ガメラリバース」は、ガメラシリーズのリブート作品で、昭和、平成と続くシリーズの集大成である。
- ガメラは、東宝のゴジラとは異なり、大映の怪獣である。
- エフェクトと表現手法は、特撮をも上回るクオリティを持ち、怪獣の巨大感や攻撃の凄まじさが強調されている。
- しかし、映画の尺が長く、ストーリーや登場人物の描写が雑に感じられる。
- 時代設定や使用される兵器にはリアリティが欠け、未来の技術が使用されているが、劇中での説明はない。
- 登場人物の動きやセリフは不自然で、表情も不気味に描写されている。
- 怪獣プロレスのシーンは観ていて面白く、昭和生まれの怪獣が生き生きと暴れている様子は楽しい。
レビューしていて何度も思いました「ガメラに何をそこまで求めてるんだ」「元が子ども向け怪獣映画だからいいじゃんか」と。
でも今や子ども騙しでは子どもは好きになってくれないと思いますし、これでまたガメラシリーズが長らくやらなくなるのかと思うと悲しいです。
人間シーンを削っていっその事ガメラシリーズの怪獣全員だすか、逆に人間シーンをシン・ゴジラやスタンド・バイ・ミー並に丁寧にやるかしないと、観ていて辛いです。
最終話は無難な終わり方で、次回作には期待できるようなつくりでしたが、次回作を造れるだけの予算が集まるか心配です。
以上最後まで読んでいただきありがとうございました。