初週から『シン・ゴジラ』を超える興行収入を叩き出し、大ヒット公開中の『シン・ウルトラマン』。
今回は『シン・ウルトラマン』の作中でも特に異彩を放っていたキャラクター『外星人メフィラス』について解説していきます。
動画版も出しているのでよければ観てください。
目次
初代の異名は“悪質宇宙人”メフィラス星人とは?
『シン・ウルトラマン』に登場したメフィラスは主に初代の個体をリスペクトして、造形されたキャラクターなので今回は初代に焦点を当てて解説していきます。
『外星人メフィラス』を語る前に、初代『ウルトラマン』に登場した『悪質宇宙人 メフィラス星人』をまずは振り返っていきましょう。
『ウルトラマン』第33話「禁じられた言葉」にて初登場し、ウルトラマンに“倒されなかった敵”として特に印象に残っているというファンの方も多いです。
ウルトラマンとは対照的に、黒い体色に青い目とまるで悪魔のような顔がかっこいいです。
『ウルトラマン』に登場した宇宙人としてはバルタン星人に次ぐ人気と知名度があります。
物腰が丁寧で礼儀正しく、これまで好戦的だった宇宙人とはギャップがあるところも魅力的です。
その上、実力も確かなもので、ウルトラマンとは互角の体術、光線技をもっています。
しかし、ウルトラマンがスペシウム光線の構えをとったところで戦いを中断し、自らの敗北を認めました。
「宇宙人同士で争ってもしょうがない」というメフィラスのセリフは、ウルトラマンに対して言っているものの、ウルトラマン頼りになりつつある人間達に対する皮肉にもなっています。
前回の記事では、円谷監督はウルトラマンを子供向けに作っていたということを語りましたが、このウルトラマンVSメフィラス星人のバトルシーンは子ども向けとは思えないほどめちゃくちゃ凝っています。
ウルトラマンが光線技を出す時、予備動作があってから攻撃に体制を変えます。
メフィラス星人はその僅かな体制のズレをみてカウンター技を出すか、スキをついて攻撃するか判断しています。
2人の大人のスーツアクターが本気で自分の手からビームを出せるものだと思って戦っています。
『ハンターハンター』のネテロVSメルエム戦みたいな、一挙一動で生死が決まるような戦いをしています。
ほかの宇宙人や怪獣はウルトラマンと戦う時、ウルトラマンが出てきた時点でやられ始めるか、最初は優勢でも、すぐに劣勢に追い込まれます。
この辺りの演出も、メフィラス星人が初代の中でも特別扱いされているとわかるシーンなので、まだ初代ウルトラマンを観たことないという方は是非ご覧になってください。
『シン・ウルトラマン』では、この初代メフィラス星人の良さを残しつつも、外星人メフィラスとして現代版にアップデートされていました。
人間状態、巨人状態でもウルトラマンの対になる存在。外星人メフィラス
メフィラス星人というキャラクターは上記で語ったようにウルトラマンと対になるようなデザインです。
メフィラスという名前は、メフィストフェレスという悪魔から由来するものであり、顔のデザインが仏様に由来する(諸説あります)ウルトラマンとはまさに真逆のような存在です。
「仲間」「相棒」というような単純で前向きな言葉を好むウルトラマンに対して、外星人メフィラスは、「鼓腹撃壌」「捲土重来」のような四字熟語やことわざを好みます。
素直で人間の文化に不慣れなウルトラマンと違い文化に溶け込み、言葉も達者なメフィラスは外星人の多様さを上手く描いていると思います。
「私は暴力を嫌悪します。ですがザラブのように暴力を行使する輩からの自衛力と起こさないための抑止力はやも得ないと考えます。」
という「それって銃や核の話?」と現実問題の風刺をつい連想してしまうようなセリフもあり、良くも悪くもメフィラスの言葉には含みがあるように感じます。
ウルトラマンが言う『仲間』というような単純だけど前向きで優しい言葉と、メフィラスが言う丁寧なようで本意を煙に巻くような言葉は、まさに対照的に描かれていて、“悪質”という言葉がこれ以上ないくらい似合うようにアップデートされています。
垣間見える邪悪さ。ついに激突するウルトラマンとメフィラス星人
戦闘面ではついに過去作で描かれなかったスペシウム光線とメフィラスの光線技が直接ぶつかり合うシーンがあります。
メフィラスは過去作では、スペシウム光線の構えをされた瞬間、停戦をもちかけていた為に、「ウルトラマンのスペシウム光線が怖かったのでは?」という不名誉な考察がされていました。
しかし、『シン・ウルトラマン』ではスペシウム光線に対して光線技で対決し、しっかり押し返していました。制作陣にメフィラス星人推しがいたのかもしれません。
ウルトラマンが手出しできないように、ちゃんと準備してきたのに、ちょっと無理がある理論で計画を台無しにされてしまいました。
「捲土重来、私の苦手な言葉です。」と言って紳士的に対応していますが、メフィラスからしたらレスバで負けた相手が職場にリア凸してきたようなものです。
内心穏やかではないはず、ここでメフィラスも巨大化してウルトラマンと戦います。
この時、メフィラスが使うベーターカプセルはまるでメリケンサックのような形をしているのも、内なる暴力性が垣間見えて面白いです。
戦闘はメフィラス有利で進んだものの、ゾーフィの登場により、メフィラスはウルトラマンに停戦をもちかけ、足早に撤退してしまいます。
さらばウルトラマンというメフィラス星人のセリフからゼットン編突入までの流れが完璧。
メフィラスはウルトラマンの戦闘の最中、ゾーフィがやってきたことを察知します。
「君を殺してまで手に入れるだけの価値は無さそうだ。」というメフィラスのセリフから察するに、ゾーフィが光の国の裁定者ということは知っていて、さらにゼットンも持ってきていることも知っていたようです。
このあとウルトラマンVSメフィラスの戦いについて、
「外星人同士の話し合いがあったのでは?」
「何事も対話で解決することが一番」
という人間側の解釈が語られますが、実は一番対話からかけはなれた存在が地球にやってきたからというのは皮肉が効いています。
そして『さらば、ウルトラマン』というメフィラスの言葉は初代『ウルトラマン』第39話(最終回)『さらばウルトラマン』と重なったセリフになっており、このシーンには思わず震えてしまったファンも多いのではないでしょうか。
ウルトラマンは戦闘においてもセリフにおいても、おいしいところをメフィラス星人に全部もってかれました。
一番食べてるのにちゃっかり割り勘にするところとや、名刺を用意してくるところも魅力的で、続編や番外編にてメフィラス(山本耕史役)の再登場を望む声も多いと思います。
名刺に注目。メフィラスの登場と実は『シン・ゴジラ』の存在を暗示していた?
あのメフィラス星人が出てきた名刺いいですよね。個人的にもあのアイテムがすごく欲しいのでグッズ化をして欲しいところです。
そして、あの名刺、よく見てみるとすごく面白いことがわかります。
『特命全権大使』という呼称も、いかにも自分が外星人の代表であるが如く堂々としていて良いですが、注目なのは『外星人第0号』と書かれていることです。
地球人からすると、ウルトラマン、ザラブ星人に続く3人目の外星人なので3号となるはずですが、自分が一番最初に来たということだけは譲らないという意志と、1番はウルトラマンに譲るという配慮がいかにもメフィラスっぽくておもしろいです。
そして一番大切なのが“第0号”という概念があることです。ここで思い出して欲しいのが、ガボラが禍威獣第8号であり、そこから数えるとゴメスが禍威獣第1号になります。
では、禍威獣の第0号はなんなのでしょうか?考えすぎかもしれませんが、シン・ゴジラが第0号として存在していたら?と考えると面白いですよね。
最後に。メフィラス(山本耕史役)怪獣散歩やってほしい。
山本耕史さん演じる外星人メフィラスは本当に良いキャラしていました。人間よりも遥かに進んだ技術と強い力を持っていながら、地球の文化を本当に好きになっちゃうところも全てが魅力的です。
ウルトラゾーンにてメフィラス星人のTVドラマシリーズがあったりと前例があるので、ついつい外星人メフィラス(山本耕史役)の番外編を観てみたいです。
(絶対ウルトラマンと行った店以外にも美味しいお店知ってそう。)
『シン・禍威獣散歩』をぜひ観たいです。
これからも禍威獣や外星人の解説、考察記事を上げていきます。
合わせてYouTube動画も上げていくのでそちらもチェックして頂けると嬉しいです。