スパイダーマンのこれからの方針について、ソニーから「道は閉ざされた」と発表されました。
私はこの速報を聞いて、ある程度のショックは受けましたが、少し時間が経つと「これはこれでよかったのでは?」と思えてきました。
今回はその理由についてや、そもそも「スパイダーマンの権利について」が、なぜこんなにややこしくなっているのか分からないという方のために記事を書きました。
目次
ソニーとディズニー。期待があったからこその失意。
ネットニュースなどで多く取り上げられているので、皆さん知っている方もいらっしゃると思いますが、残念ながらスパイダーマンがMARVELシリーズから事実上離脱という形になりました。
ソニーとディズニーが交渉開始という記事をみて、期待を持ったのは私だけじゃないはず。今まで交わらなかった両者が新しい時代の作品のために、ついに手を取り合うのかと思いました。
しかし、交渉は決裂。
スパイダーマンは、MARVELシネマティックユニバースから離脱という形になりました。
スパイダーマン役のトム・ホランドは、あと2作分のスパイダーマン役として契約しているため、よっぽどソニーに切り離される事はないと思いますが、それでも親愛なる隣人どころかひとりぼっちになってしまいました。
そもそもなぜ『スパイダーマンを映画に出すだけでこんなに話がもつれたの?』という疑問を持っている人も多くいると思いますので、下記では簡単な説明をしたいと思います。
スパイダーマンの生みの親は、マーベル(現ディズニー買収)育ての親はソニー。
引用:MARVEL公式サイトより
1998年。ソニー・ピクチャーズのヤイール・ランダウ。
当時マーベル・コミックは業績が振るっておらず、1997年には倒産、マーベル・エンターテインメントとして再稼働を始めたばかり。
マーベルは、何とか自社の成長のため、スパイダーマン、アイアンマン、ソー、(他アントマン等)の映画化権をまとめて、2,500万ドルでの商談をソニーに持ちかけました。
しかし、ソニー側は『スパイダーマン以外のヒーローはいらない』と返答した。
ソニーは、スパイダーマンの映画化権のみを1,000万ドルで購入。マーベル側は、スパイダーマン関連の映画の興行収入から5%と、グッズの売り上げの半分を得るという話で落ち着いた。
その後のエピソードは、
ソニーは、早速スパイダーマンの実写映画に取り掛かる。サム・ライミ監督版スパイダーマン三部作を2002年、2004年、2007年に公開。全世界興行収入は合計約25億ドルの大ヒット。
マーベルも負けずと「マーベル・シネマティック・ユニバース」を展開。2008年『アイアンマン』の大ヒットをおさめ、マーベルヒーローの一般認知度を一気に高めた。
ソニーに買われなかったヒーロー達を次々と人気キャラクターに仕立て、シリーズ作品を続々と公開。皮肉なことに、かつてソニーがいらないといったヒーロー達の映画は『ブラックパンサー』公開時点で興行収入は総額135億ドルという大大大ヒットを納めました。
これに負けじとソニーは、虎の子スパイダーマンを2012年にリブート。『アメイジング・スパイダーマン』シリーズを公開。
しかし、望んだ結果は得られず、2作品で打ち切りとなってしまいました。
もはやここまでと。2016年のマーベル・シネマティック・ユニバース作品『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』では、ソニーとマーベルがスパイダーマンの権利を分割する形で合意。
こうして生みの親マーベル、育ての親ソニーのビッグネームヒーロー『スパイダーマン』はついにアベンジャーズシリーズで、ほかのヒーローと共演を果たしました。
『ホームカミング』、『アベンジャーズ』、『ファーフロムホーム』と入れ食い状態。マーベル作品のファンは、テレビをつける感覚で映画を観てくれると言われる程になりました。
すっかりマーベル(ディズニー)の天下になりつつあった『アメコミヒーロー映画』。
その間ソニーも負けずと、2018年12月、スパイダーマンに登場するヴィラン『ヴェノム』を主演で映画化。(ヒップホップMC&俳優でもあるエミネムのEDでも話題となった。)
ここまでがソニーとマーベル(ディズニー)のもつれた映画版権事情の歴史です。
ここからユニバース化が進み『マーベル版スパイダーマン』と『ソニー版ヴェノム』の共演など、ソニーとマーベル(ディズニー)が協力していくかと思いきや、その扉は閉ざされました。
交渉決裂の発表後ソニーが叩かれてしまうことに。
ネットでは『ディズニー(マーベル側)の誘いにソニーが乗らなかった』としてソニーが叩かれがちですが、一概にそうとも言い切れません。
簡単に説明すると、今までソニーが『スパイダーマンの映画化権利』を所有しており、ディズニーが『スパイダーマンのグッズ関係の販売権利』、『興行収入の5%を得る権利』を所有。
しかし、ディズニー側は興行収入を50%ずつ分配するよう要求。
50%という数字は、一見互いの会社にとって良さそうに聞こえますが、これには制作発表後に発生するマーケティングや広告の費用は、ディズニー側には含まれていません。
よって、ソニー側が制作から発表・公開、そして広告やマーケティングまで、最終的に発生する金銭的負担は莫大なものとなります。
当然、ソニー側はそんな要求を飲めるはずもなく却下。こうして、スパイダーマンのさらなるユニバース化の道は閉ざされました。
ディズニー側からすれば『アベンジャーズシリーズを成功させたから』、『ディズニーの名を貸すから』等の言い分があると思います。
しかし、ソニー側からすれば、そもそもアメコミヒーローブームが成功できたのも、サムライミ監督版スパイダーマンのおかげであり、ソニーの名は映画関連ではディズニーに劣るかもしれませんが、その他の事業で。
上記の事実がファンの間にも広まると、徐々に捉え方も変わり始めました。
SNSでは、「ソニーは映画収益だけなのに、ディズニーはグッズも興行収入もなんて図々しい。」「ソニーがアメコミ実写ブームを起こしたのを忘れたのか?」「ファンのためと論点をすり替えるディズニーはおかしい」など、ディズニーの欲深さが批判されはじめました。
ディズニーのクリエイターや作品を批判する気は毛頭ありませんが、ディズニーの経営の仕方に腹が立つという人が多いようです。
ビジネスがあってこその映画であるため、どれだけ収益が見込めるかは大事なことですが、そこを隠して「ファンのために尽力したが、ソニーが断った」と言い切ってしまったディズニーに疑問を感じました。
ディズニーが壊してしまった名作、『スターウォーズ』
SNSには「ディズニーにとられなくてよかった」、「ソニーは交渉延期して正解」という意見もあります。これには私も共感できる部分が多々あります。
それは何故かというと、ディズニーは過去にルーカスフィルムを買収し、現在スターウォーズの続編『スターウォーズ エピソード 7』『スターウォーズ エピソード8』までを作製しました。
しかし、このエピソード7.8はファンの期待を大きく裏切るものでした。過去作の設定を無視した流れや、過去の人気キャラクターを無理やりストーリーにねじ込んだ上、ストーリーもエピソード456の二番煎じというもの。
スターウォーズエピソード1~6の生みの親ジョージ・ルーカス監督は『ディズニーが新しいスターウォーズを生み出したいと言うから案を出したが、それを無視して商業奴隷映画をつくってしまった。』と語っていたほどです。
この話を知っているスパイダーマンファンの一部は、ディズニーにとられなくてよかったと思っているかもしれません。
最後に:ファンにできるのは祈ることだけじゃない。
ビジネスあっての映画なので、各会社の方針が上手く合わなかったのはしょうがない事です。
だからといって、ファンはスパイダーマンのさらなるユニバース化を祈ることしかできないのかと言われると、そうではないと思います。
SNSで『ソニーがせっかくのディズニーの誘いを断った!』、『監督達はファンの事よりお金儲けか?』などの無責任な書き込みをして、両社のネガティブキャンペーンをするのをやめましょう。
(今回の交渉は、監督などのクリエイター自身が行ったものではなく、経営陣の話し合いです。)
1キャラクターとはいえ、スパイダーマンという作品の発展は多くの人の人生がかかっているものです。これはディズニー側にも言えることです。
関係者は「道が閉ざされたとはいえ、保留と捉えてもらってもかまわない。」と語っています。
軽率な発言をして両社にプレッシャーをかけるのではなく、正しい事実を受け止めた上で温かい目で見守っていきましょう。
それでは次の記事で!!