
2019年12月20日公開の『スターウォーズ エピソード9 スカイウォーカーの夜明け』は全世界興行収入1000億を越え、2020年日本の正月映画の中では動員数一位を獲得しました。
終わったはずだった『スターウォーズ 』のさらなる“終わり”を見届けるため、多くのファンが劇場へと向かいました。今作は、アクションや映像美はそれなりに良いため、ファミリー映画としても楽しまれています。
※以外重大なネタバレあり。
そこで今回は、映画として良かった点について話したいと思います。その良かった点とは…
カイロ・レンをしっかり消滅させたところ。(正しくは霊体化?)
なぜ『カイロ・レン』を死なせたのが、評価されるべきところなのか?
『カイロ・レン』というキャラクターのストーリーをおさらいしながら、解説していきたいと思います。
目次
今作の『ダースベイダー』ポジションだったカイロ・レン。過去と今作に至るまでのおさらい。
個人的に『スターウォーズ エピソード7』から『スターウォーズ エピソード9』までの三部作から登場する新キャラクターの中では、唯一気に入ってるのが『カイロ・レン』です。
『クローンの攻撃』や『シスの復讐』の時のアナキンに似た感情の不安定な様子や、おじいちゃんコンプレックスな様子。パワハラばかりしてることで、部下に尊敬されないところがすごく「ダースベイダー兼アナキンっぽさ」をかもし出させています。(ほんとに〇〇っぽさを出すのがJ・J・エイブラムスはうまい。)
では、なぜそんなお気に入りである『カイロ・レン』が死んでよかったのか?
それを解説する前にまずは『カイロ・レン』についておさらいしていこうと思います。
まずは『カイロ・レン』の過去から
ハン・ソロと、レイア・オーガナとの、実の息子。本名ベン・ソロ。
そのため、ダース・ベイダー(アナキン・スカイウォーカー)と、その妻パドメ・アミダラの孫にあたる。
新三部作でのカイロ・レン
このように、ダークサイドとライトサイドで揺れる。エピソード1.2.3なら主人公になれそうなカイロ・レンです。
「ジョージ・ルーカスが本当にやりたかったこと。」「ディズニーの思惑。」「J・J・エイブラムスがダメなのところ」こういった部分全て覗いて考えるのなら、新三部作において『カイロ・レン』というキャラクターはとても魅力的です。
では、なぜ彼が死ななければならなかったのか?理由は簡単です。
カイロ・レンが死ななければならなかった理由。それは“悪い事”をしたから。
“悪い事”をしたから死ななければならなかった。これは「ディズニーって勧善懲悪で悪役消せばいいと思ってるとこあるよね」とか言いたい訳ではありません笑。むしろ『悪役をしっかり殺す』というストーリーは、評価される点だと言えます。
大事なのは「人を殺したものは救われても、罪が消えることは無い」ということです。『カイロレン』彼自身が親にも師にも裏切られた時、強く惹かれたのは『ダースベイダー』というもうこの世にはいない存在。
『ダースベイダー』といえば冷酷無慈悲で反乱軍の兵士やジェダイ達を殺ししてきました。帝国軍に支配が及ぶことによって多くの罪のない命が失われていきました。
その後を追うように『カイロ・レン』もまた、反乱軍の兵士や数多くの罪のない命を奪ってきました。
虐殺を繰り返してきた悪役が改心してみんなと仲良くエンディングを迎えることは、誰も納得しないでしょう。『命』というものを奪ってきたということは、それ相応の代償を払わなければなりません。
ジョージ・ルーカス監督の『スターウォーズ ジェダイの帰還』ではダースベイダーは、ルークによってジェダイの心を取り戻しましたが、命は落としてしまいました(歴代ジェダイのように霊体化した)。
しかし、ディズニーに買収されてから作られた『スターウォーズ エピソード7』以降の作品である『スターウォーズ エピソード9 スカイウォーカーの夜明け』ではひょっとしたら「カイロ・レンは改心してみんなと仲良くなって終わるのでは?」と心配していました。
しかし、そこはしっかりしていました。『カイロ・レン』というキャラクターは、レイという主人公を助け息を引き取りました。まるで『ダースベイダー』がアナキンに戻り、ルークを助けたように。
しかし、『ダースベイダー』は、ルークの「父を信じる心」によってライトサイドへと帰還することが出来ました。
ルーク「父さんを救いたいんだ」
アナキン「もう救ってくれたんだ、ルーク」
この名言は、ルークが父の命を救いたいと訴える中、アナキンは『息子が父を信じる心』が自分を「悪に堕ちたまま死ぬことから救ってくれたんだ」と返しました。
それでは『ベン・ソロ』を『カイロ・レン』から救ってくれたのは誰だったのでしょうか?少なくともレイではありません。助力はしたでしょうが、決定的に彼を救ったのは、他でもない『ハン・ソロ』です。
カイロレンをダークサイドから救ったのは、父ハン・ソロ。
『スカイウォーカーの夜明け』では、カイロ・レンはレイとの決闘に負け、命を助けてもらいました。その後、レイは諸悪の根源であるパルパティーンの元へ向かっていってしまいます。
一度死んだ身。立ち尽くしてしまうカイロ・レンに声をかけたのは、自分が殺してしまったはずの父、ハン・ソロでした。
「死んだのはカイロ・レンだ」「ベン・ソロはまだ生きている」
自分の心の中の存在なのか、霊体化した存在なのかは分かりません。しかし、その言葉は彼を『カイロ・レン』から『ベン・ソロ』へと戻しました。
どこか感じる『ジェダイの帰還っぽさ』である「悪が改心して主人公を救うシーン」の正体がこれです。ただ、J・J・エイブラムスはそのまま『ジェダイの帰還』をやることはせず、ここにひとひねり加えました。
『エピソード6 ジェダイの帰還』では『息子が父を救った。』という構図でしたが、『エピソード9 スカイウォーカーの夜明け』では、『父が息子を救った。』という構図に変わっているのです。
父ハン・ソロを殺し、「もう後戻りはできない」と自分に言い聞かしてきたカイロ・レンでしたが、父から『許し』という“救い”をもらうことで「レイを助ける」という善行を成すことができました。
結果、命こそ失ったものの歴代ジェダイのように霊体化することができ、魂はダークサイドから救われました。
残念なのは、こういったところで熱い展開をみせているのに、なぜ「ベンとレイのキスシーン」を入れてしまったのか?
ただのキスではなく、神聖なものだったのか、「スカイウォーカーの名をレイが受け継ぐに相応な儀式」だったのかもしれません。
しかし、それをただそれを男女のキスシーンで描くのには、やはり無理がありました。(おでこをくっつけ合わせるとかじゃダメだったのか?うーん惜しい。)
余談:命を救えるのは『シス』の力だった!?
もともと「傷を癒す」「命を救う」というのは『シス』のダークサイドのフォースの力です。その誰しもが欲してしまう“不死性”故に、シスは凶悪で堕ちやすいのです。
愛する母を失い、愛する妻の死ぬ苦しむ姿を予知夢で見てしまったアナキンは、「命を救う方法」を求めました。そこをパルパティーンにつけこまれて、『ダースベイダー』へと堕ちていってしまったのです。
そんな『シス』へと通ずる『癒し』のフォースの力を、ダークサイドに堕ちたカイロ・レンはともかく、なぜレイは簡単に使えてしまうのか? 答えは簡単でした。
なぜならパルパティーンの孫だから。
「いやでも、あんなに乱用したらダークサイドに堕ちちゃうのでは?」「もしかしたら、すでにシスに堕ちてるとかかも?」という考えを持っていた時期が私にもありました。
しかし、公式から出る答えは「レイはパルパティーンという巨大な力をもつ血を引いてるから、それくらいできて当然でしょ。」
もう「ぼくがかんがえたさいきょう」を映画で観させられた気分です。せっかく『家族愛』や『父と子の絆』、『スカイウォーカーサーガ』のテーマに恥じない「カイロ・レンとハン・ソロの和解」も、肝心の主人公のせいで霞んでしまうのが残念でした。
今回は「父と子の和解」というテーマについて、『カイロ・レン』というキャラクターに焦点をあてて話しました。ただ、どうも良いところだけを語ろうとしても、どうしても悪いところまで出てしまいます。
良くも悪くも新三部作『エピソード7.8.9』はフォースの様に光と闇が密接にくっついている作品なのかも知れません。