2021年12月から2022年2月にかけて配信された『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』。
スターウォーズシリーズの人気キャラクター『ボバ・フェット』を題材にしたスピンオフストーリー。
スターウォーズファンの中でもボバ・フェットが一番好きという方も多く、期待十分の中配信が開始されました。しかし、全7話が終了してみると意外にも賛否両論別れることに…。
本記事では賛否両論別れる原因と、見所について解説、レビューしていこうと思います。
目次
『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』とは。
『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』は『スターウォーズ』のフランチャイズ作品の一つであり、マンダロリアンのスピンオフとしての立ち位置でもあります。
『スターウォーズ』に登場し、少ない登場シーンながらもそのデザインのかっこよさと、クールなキャラクターから人気を博した『ボバ・フェット』がギャングが仕切るタトゥイーンという星でギャングの“ボス”を目指す物語。
個人的にもボバ・フェットは指折りのキャラクターで、あの“宇宙の賞金稼ぎ”といった感じの見た目が大好きです。
ジャバ・ザ・ハットが死んでから、混沌としたタトゥイーンの裏社会をいかにボバ・フェットがまとめるのか?
そもそもボバ・フェットはどうやって助かったのか?
この疑問をいかに丁寧に描いていくかが物語の面白さの鍵になります。
みどころポイント:丁寧に描写される改心したボバ・フェット
「俺は敬意をもって支配する」「バカな依頼主に使えて無駄死はごめんだ」
「あれ?ボバ・フェットってこんなキャラだっけ?」とセリフだけ聴くと思ってしまいます。
ボバ・フェットといえば、帝国に雇われた凄腕のバウンティハンターで、あのハン・ソロを負かしたキャラクターです。
言葉数が少なくて、依頼を着実にこなすクールな仕事人の印象がありました。
予告や配信前の告知を観るかぎりでは、またディズニーにスターウォーズが丸くされちゃったのか、と残念に思っていましたが、いざ観始めてみると予想を良い意味で裏切られました。
サルラックに飲み込まれ、装備も剥ぎ取られ、裸一貫で砂漠をさまようボバは、あろうことかタスケン・レイダーに奴隷として捕まえられました。
しかし、ボバはタスケンの子どもをクリーチャーから助けたことで部族の仲間入りを果たしました。
そこでボバは敬意の概念を学び、いかにタトゥイーンが混沌に陥っているかを目の当たりにしたのでした。
砂漠の荒くれ者だと思われていたタスケンにも礼儀や作法があり、略奪者と思っていた彼らは実はインディアンのような被害者でもあったのです。
タスケンと共に過ごしたボバと、ボスになってから混沌としたタトゥイーンをまとめるために、奔走するボバを同時に描く二重構造が上手くまとまっていて、現在のボバの人格形成をちゃんと理解することができます。
予告だけを観た時は、「ボバ・フェットはそんなこと言わない。」と思っていましたが、観始めてみるとボバ・フェットがいかに“かっこよく改心した”かわかります。
タトゥイーンの荒くれ者達にも彼らなりの立場や生き方がある。それを恐怖で押し付けて支配するのではまた混沌が繰り返されるだけ。
ボバは上がクズだと下がいかに苦しむかを身をもって体験し、敬意をもって支配することを学んだのでした。
ボバの人格形成、タトゥイーンの現状、タスケンなど往年のスターウォーズキャラクター、すべての配置が完璧と言っていいほどでした。
主演俳優の演技に宿るボバ・フェットの鼓動。
ボバ・フェットを演じたテムエラ・モリソンの演技も素晴らしいものでした。60歳とは思えないほどアクションが素晴らしい…とまでは言えませんが年齢よりは若く見えます。
ただ、アクションよりも細かな演技に注目したいです。彼の演技は正しくエピソード5や6で登場したボバ・フェットそのものなのです。
右手で持つブラスターの手に左手を重ねるような仕草や、古臭くてダサい動きが逆に過去の三部作を思い出させてくれます。
スマートなアクションシーンも好きですが、泥臭いブラスターの撃ち合いも大好きです。
バックパックでの飛び上がり方やブラスターの扱いが、そのままエピソード6から受け継がれていて、“改心はしても技は忘れていない”というのが画面から伝わってきます。
監督の演技指導とジャンゴを演じたテムエラ・モリソンだからこそできた演技なのでしょう。
賛否両論ポイント:マンダロリアンとルークの登場は必要あったのか?
さて、ここまで聞くと完璧な作品のように感じますが、賛否両論がわかれてしまったのには理由があります。
現在と過去のボバを描く二重構造はとても上手くできていて物語にどんどん惹き込まれていきました。しかし、それも第5話でリセットされてしまいます。
第5話にてマンダロリアンが物語に加わってきます。
第5話にて描かれたのは『マンダロリアン』のその後。カメオ出演ではなく、がっつり登場します。
第6話、第7話ではボバはマンダロリアンと協力してタトゥイーンを治めることになります。
ここが、賛否両論別れるポイントとなってしまっています。
確かに参戦したところで物語は面白かったですし、公開前から『ボバ・フェット』は『マンダロリアン』のスピンオフストーリーとしての立ち位置にもあると説明がありました。
ただ、やっぱり視聴者的にはボバ・フェットが自らの力でギャングスターへと登りつめていく姿を観たかった思いがあります。
『マンダロリアン』が8話で描ききれなかったものを、『ボバ・フェット』に持ってこられているようで、純粋にボバ・フェットのストーリーを楽しみにしていた層からすると、すこしがっかりしてしまったのではないでしょうか。
さらに第6話でルークも登場しました。ルークとザ・ベビィの会話ではスターウォーズのテーマ曲もバックで流れる場面があり、第4話までのタトゥイーンの混沌とした裏社会の雰囲気は一旦途絶えてしまいました。
マンダロリアンが参戦したことでザ・ベビィも物語に加わり、結果的においしいところを彼がもっていってしまいました。
マンダロリアンやザ・ベビィ、ルークも好きなキャラクターなので、登場して全く悪い気はしません。
しかし、せっかく第4話まで丁寧に描かれた『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』の雰囲気が一度リセットされたように感じました。
最終話にかけての盛り上がりもラストも綺麗にまとまっていて面白いには面白いですが、第4話までが予想を上回るおろしろさだっただけに、つまらなくはないですが違和感を感じてしまいました。
個人的にもボバ・フェットのエピソード6以降を描いたコミック『ダーク・エンパイア』とは違う、新しいボバ・フェットのストーリーを気に入っていただけに、第5話からのマンダロリアンの参戦に微妙な気分になってしまいました。
どうしてもマンダロリアンと絡ませたいのなら、ボバ・フェットが一連の事件を解決した後にして欲しかったかなとも思います。
賛否両論ポイントとして、他にもタトゥイーンの市長の部屋が受付から直通で行けたり、改造人間達がスターウォーズキャラクターっぽくなかったりと色々ツッコミたくなりますが、総合的には面白い作品だったと思います。
今後『オビ・ワン』などスターウォーズのスピンオフ作品は増えていくようなので、今後の作品には美術的な視点でもこだわったものを見せて欲しいです。