SNSを中心に、『AKIRA』の「オリンピック予言」が話題になっていますね。
知らない方のために、簡単に説明すると、
「現実の2020年の日本が、コロナウィルスの影響で、オリンピックの中止が囁かれる中、『AKIRA』という漫画ではすでにそれを予言していた。」
というものです。
※この記事ではその『予言』に言及した考察ではありません。
どのような形でであれ、過去の名作に目が当てられることは嬉しいものです。
『AKIRA』の舞台が2019年ということもあって、各映画館での上映会や、新規造形フィギュアの発売などなど。
私自身も『AKIRA』に登場するメカに、惚れ惚れした記憶があります。
そこで今回は、『AKIRA』についての基礎知識やかっこいいシーン、ほかのマンガと一線を画するAKIRAメカについて、考察や解説をしていこうと思います。
『AKIRA』を観たことがない方でもご安心ください。
ネタバレはあらすじ程度しかしません。『AKIRA』をすでに観たことある方には「もう一度観てみようかな」と思って頂ければ嬉しいです。
それではまず、『AKIRA』の基礎知識、あらすじや世界観についてのおさらいからいきましょう。
目次
アニメと漫画は別物?『AKIRA』についての概要。
『AKIRA』とは大友克洋さんによる、週刊ヤングマガジンで1982年から1990年までに連載された、サイバーパンク・SF漫画です。
前作『童夢』から言われていた「週刊連載では不可能」ともいわれる、繊細でこだわったシーンが当時から話題になっており、1988年には劇場版アニメが公開されました。
公開当時はヒットこそしなかったものの、欧米を中心に話題になり、現代日本の「クールジャパン」を代表する作品の1つになりました。
漫画と劇場版アニメの違いは、大きく言えばひとつです。
劇場版アニメでは、舞台となる「ネオ東京」の崩壊までが描かれ、漫画では「崩壊後」も描かれています。
細かいキャラクターの設定や、容姿の違いはあるものの、登場するキャラクターの性格や雰囲気はかなり似通っています。
劇場版ナウシカと漫画版ナウシカと似たようなもので、劇場版公開当時に原作漫画が終了していなかったために起こる、『映画だけで楽しんでもらうための仕方ない』違いです。
劇場版アニメ、原作漫画どちらも面白いのでオススメです。
細部の設定が少し違いますが、本記事ではアニメを中心とした解説をしていきます。
アニメでの大友克洋メカのかっこよさは正直、異常です。
圧倒的退廃美『AKIRA』の世界観について。
物語は1982年に東京に新型爆弾が落ちた、36年後の2019年『ネオ東京』が舞台です。
東京で大爆発が起こり、世界の均衡は崩れ、第三次世界大戦が勃発。
日本はなんとか復興し、東京は爆発以前よりもはるかに繁栄した。
繁栄とは逆に人々の心は荒廃し、テロや暴力事件が日常茶飯事になっていた。
主人公の金田正太郎は、暴走族のリーダーで仲間達と共に暴走行為に明け暮れていた。
ある日仲間の1人、島鉄雄が超能力を持った少年と接触した事で、超能力が覚醒。
仲間を助けたい金田と、暴走する鉄雄。それはやがて、世界を巻き込む戦いになっていった。
現実の東京よりも、ネオ東京は発展していて、複雑な構造の建造物が立ち並んでいるのにもかかわらず、どこか『人間だけは進歩していない』ような雰囲気を終始感じます。
立ち並ぶビルや、高層建造物は立派でも、その足元は落書きや整備が行き届いていない物、壊れたままの物に溢れています。
街には、暴力にためらいのない若者があふれていて、それを「見て見ぬふりをする大人達」、「自分の進んでいる方向がわからない若者達」と、「導くことを放棄した大人達」が、言葉で説明されずとも、絵で表現されています。
テロや暴力事件に対して、機関銃で対処する機動隊がいる点や、国軍が存在しているなど、現実の日本とは相違点が多くあります。
軍が直接政治を指揮する場面や、その場で射殺命令を下すなど、三権分立は何処へやら。
豪華絢爛な建物の下には、汚水が垂れ流してあったり、違法ドラッグが蔓延していたりと、良い意味で「綺麗なはずなのに汚い世界」が描かれています。
「こんな未来になって欲しくない、なるわけが無い」と思いつつも、誰しも身に覚えのある感覚を刺激される為、どこか不安を感じます。
たからこそ、そんな世界でも「美しいものはある」、「守るべきものがある」と奮闘する主人公達の、『希望』や『人間賛歌』を応援したくなります。
超能力の表現や予知など、オカルト的な評価がされがちですが、人間ドラマも熱いのが『AKIRA』の素晴らしいところです。
『AKIRA』と言ったら『金田の真っ赤なバイク』
インターネットで『AKIRA』と検索すると、必ず真っ赤なバイクが出てきます。
誤解されがちですが、あれは「金田のバイク」であり、「アキラのバイク」ではありません。
金田は『AKIRA』という物語の主人公で、「アキラ」は物語の根幹になる超能力者の名前です。
いまだに『SFバイク』といったら『金田のバイク』と言われるほど、名前が轟いており、ターミネーター3やマトリックスのバイクをおさえ、影響はハリウッドにまでおよんでいます。
スティーブン・スピルバーグ監督の『レディプレイヤー1』には、ついに現物が登場しました。
金田のバイクのかっこよさは、見た目の派手さや前衛的なデザインだけではありません。
特にアニメでは細かな設定が公開されました。
金田専用に改造されたバイクの、ピーキーな設定がとにかくかっこいいです。
中でも「エンジンを5000回転以下に落としてギアチェンジすると、エンストしてしまう。」という設定は、衝撃と、ある答えを与えてくれました。
答えとは、アニメでよくある「◯◯専用機」に対しての答えです。(例:機動戦士ガンダム「シャア専用ザク」等)。
「◯◯専用ってなんでその人しか乗りこなせないんだ?」
「動かすぐらい出来るだろ。」
という疑問に対して、「速すぎて普通の人じゃ対応できない」という漠然とした答えではなく、
「そのメカに対する『慣れ』と『特性の理解』がなければ、そのメカはスペック通りの動きができない」という当たり前なことを、教えてくれました。
他にも「ガソリン発電で、両輪のコイルに電気を流している」など、かっこいいところです。
なぜ両輪に電気を流してコイルを回転させるかというと、現代でいう「ハイブリッドシステムを使っている」ということです。
「電気を流すことで、車輪の摩擦を少なくして、車輪の回転を上げている」と言った方が正しいかもしれません。
この超伝導の際に、電気が伝わる描写がとにかくかっこいいのです。
金田のバイクよりかっこいい?フライングプラットフォーム。
フライングプラットフォームとは、空飛ぶバイクの事です。
スピーダーやワッパなど、SF作品に度々登場するフライングプラットフォームですが、『AKIRA』にも登場します。
フライングプラットフォームの歴史は、現実にもあります。
もともとは、ベトナム戦争時にアメリカ陸軍が開発したエアカーが元ネタになっています。
戦場が『密林』や『市街地』、どんな場所でも3次元的な対応ができる兵器が必要なため、開発されていたのがエアカー(エアジープ、エアバイク)です。
現代では、ドローンに人が乗っかってるようなエアバイクがありますが、有人かつ戦争で使えるような物はありません。
戦争ならば、それこそ人ではなくドローンだけで済みます。
しかし、『AKIRA』の世界では、警備のために使われています。
何階層にもおよぶ高層建造物の中で、侵入者に対抗するために使われています。
敵に対して無条件で発砲できる戦争とは違い、侵入者かどうか判断して、その場で的確な判断を下すにはやはりドローンではなく、有人でなければなりません。
金田達を襲うフライングプラットフォームは、本当にその場にいるかのようにリアルです。
段差を超えるときの、高低差から生じる反動や、機関銃を打った時の破片の飛び散り方など、とてもリアルです。
これは『AKIRA』全体にも言えることですか、『破壊』のシーンがとてもリアルでかっこいいです。
それが極まっているシーンの1つがフライングプラットフォームが登場するシーンです。
鉄砲玉が水面に当たった時と、地面に当たった時のかき分けはもちろん、コンクリートや瓦礫など、それぞれの砕け方が描かれています。
「あたりまえじゃん」と思うことかもしれませんが、意外にも「物質の壊れ方」の描き分けがされていない作品は多いのです。
そんな徹底したリアルな描写が、フライングプラットフォームと合わさることで、見たこともないSFメカが、その場にあるように感じるのです。
「どうやって飛んでるのかわからない」「二重反転プロペラが入ってるにしては小さすぎる」など、引っかかることはありますが、それを自然にみせることを、アニメでやっていることがまた凄いのです。
『AKIRA』はアニメも漫画も同じくらいオススメ!
どんな作品も、アニメか漫画どちらがオススメかと聞かれたら必ずどちらか偏りが出ますが、『AKIRA』は違います。
『AKIRA』の漫画には、劇場版アニメにはないシーンがあってもちろんおすすめですが、アニメはアニメでレベルが高すぎる作品です。
アニメは漫画と違い、アニメは多くの人が作画にかかわります。
関わるアニメーターさんに支持が行き渡っている上で、一人一人が意識していないとこんな作画(物質事に破壊描写を変える)はできません。
こういったレベルの高さがどんなシーンでも感じられるからこそ、今でも伝説のアニメとして『AKIRA』が語り継がれるのだと思います。
この記事を見て『AKIRA』を少しでも面白くて観てもらえれば光栄です。
それでは次の記事で!