現在(2020/05/06)YouTubeにて、『エヴァンゲリオン新劇場版』シリーズが株式会社カラーによって無料公開中です。
これを機に『エヴァンゲリオン新劇場版』を一気に観て、『エヴァンゲリオンシリーズ』を観はじめた方は多いと思います。
『エヴァンゲリオン』はメカニックデザインや、美しい破壊描写、魅力的に描かれるキャラクター達が特に魅力的です。
そして、人類の起源に迫るような謎も『エヴァンゲリオン』を魅力的に感じさせてくれます。
『使徒』や『アダムとリリス』の謎や『人類の起源』という謎に、私たちはなぜここまで興味を惹かれるのでしょうか?
過去のSF作品で『人類の起源』はどうやって描かれてきたのか?紹介、解説、考察していきたといと思います。
目次
進化論ではない。人類は高度な知的生命体によって生み出された生物。エヴァンゲリオン流創世記。
『エヴァンゲリオン』には、「人類を生み出した存在」や「人類に文明や知恵を与えてくれた存在」が描かれます。
『エヴァンゲリオン』では「人類は、単純原始生命体→猿→人間と段階的に進化したのではなく、人類は高度な知的生命体によって生み出された生物」として描かれています。
旧約聖書の『創世記』がインスピレーション元だとされており、監督や制作陣も物語に深みをだすために用語やセリフを引用したことを語っています。
本来『エヴァンゲリオン』とはそういった『わけわからないことだらけの世界』での、「他社との繋がり」や「親と子関係」「自立」をテーマにしたものです。
なので、どちらかと言うと『人類の起源や人類補完計画の謎』よりも上記の方が重要なテーマなのです。
しかし、だからといって『謎』の部分が面白くないわけではありません。
『エヴァンゲリオン』主要製作陣は生粋のSFオタク揃いです。
しっかりこだわり、過去のSF作品に勝るとも劣らない設定があります。
人類は『リリス』という、人類よりも格上の生命体によって生み出されたものです。
「知恵の実」を与えられ他存在で、個々の生命力は貧弱でも、知能が高く文明を作り上げることができます。
しかし、知能が高いからこそ孤独を感じ群れ、知能が高いからこそ他者を疑います。これを『エヴァンゲリオン』の世界では『原罪』と読んでいます。
「孤独を感じること」「群れること」「他者と完全に理解し合えないこと」これが『エヴァンゲリオン』の世界では『罪』なのです。
だからこそ「碇ゲンドウ」は、『セカンドインパクト』によってアンチATフィールド(ATフィールド「心の壁」それを取り払ってしまうもの)が展開され、個々の境がない世界になった南極の海のことを「原罪なき汚れのない世界」と称しているのです。
旧約聖書の『創世記』では、原罪とは「神にそむくこと」とされています。アダムとイブが神の教えに背き、禁断の果実を口にしたことが原罪です。
禁断の果実とは「善悪の知識の実」で、知恵を得たアダムとイブは「裸でいることを恥ずかしい」と思い、イチジクの葉で局部を隠しました。
この「他者と完全には理解し合えない心の壁(イチジク葉)」こそATフィールドなのです。ネルフのマークに半分に切れたイチジクの葉が使われているのは、そういった意味です。
ホモ・サピエンスまで進化した生き物が、知能を飛躍的に高めた。2001年宇宙の旅流創世記。
『2001年宇宙の旅』では、「ホモ・サピエンスまで進化した生き物が、モノリスに触れたことで知能を飛躍的に高めて今の人類に至った。」という『人類の起源』の描き方をしています。
モノリスはいわば、人間の想像が及ばない高次元の物体で、生死の概念を超えた存在なのかもしれません。
このモノリスこそ『2001年宇宙の旅』での『禁断の果実』の役目を果たしています。
モノリスに触れたことで、「知恵を得ることが出来た、しかし、それ故に他者とを疑い排除する攻撃性をも手に入れてしまった。」
『エヴァンゲリオン』とは『禁断の果実』や『知恵を与えてくれた存在』は違えど、『原罪』のあり方や『人類が知能の高い理由』は似ていると思います。
それもそのはず、あの世代(庵野監督達の世代)のアニメや漫画を造るクリエイターで『2001年宇宙の旅』を知らない人はいないと言うほど、『2001年宇宙の旅』は衝撃的なものだったのです。
それまでに、「人類の起源が宇宙にある」という考えの作品はあれど、『2001年宇宙の旅』ほどリアルかつ繊細に設定が組まれたものはありませんでした。
オマージュのようなシーンはなくとも、『2001年宇宙の旅』が『エヴァンゲリオン』の設定が出来た背景の一部にあることは確かだと思います。
人類の過去を未来で迫る。エイリアン、星を継ぐもの流創世記。
『エヴァンゲリオン』からは少し遠ざかりますが、『エイリアン』と『星を継ぐもの』は、「人類の過去を未来で迫るお話」という部分でかなり面白い作品だと思います。
『エイリアン』は名前だけは知っているという人も多いと思いますが、「なぜかエイリアンの体が人間に似ている」「遺伝子に人類と同じ部分がある」という謎に迫るのもがテーマになっています。
『星を継ぐもの』では、未来の宇宙開拓時代に月で『宇宙服を着た人間』が発見されます。
しかし、その『宇宙服』は「5万年前に作られたも」だと解析されます。
万年前といえばちょうど人類誕生の時期です。
『エイリアン』と『星を継ぐもの』も、『アダムとイリリス』や『モノリス』と同じように、『人類の起源』に「宇宙人が関わっている」としたものです。
『文明を与えるもの』=製作者
『リリス』や『モノリス』など、人類創造主とは製作者のメタファーではないでしょうか。監督は物語やキャラクターに役割を与える存在です。
作品にとっての『リリス』や『モノリス』は、監督や製作陣なのです。
『エヴァンゲリオン』も『2001年宇宙の旅』も『エイリアン』も『星を継ぐもの』も自分達の創造主や起源を知ることで、人間は新しい段階に進化していきます。
『エヴァンゲリオン』がなぜすごいと言われるのか?
それはTVアニメ最終回で、シンジが自分達を創った存在を知り、自分達がアニメーションの存在と気付き、
そして、現実世界と虚構の世界が無くなり、それを実際にアニメで描いたからだと思います。
新しい段階に進化すること、他の作品ではただ人類が進化していくだけのことのように描いています。
しかし、『エヴァンゲリオン』では『創造主』を理解することで新しい段階(虚構のアニメの世界から現実)の世界に飛び出しています。
『エヴァンゲリオンが存在する世界』『エヴァンゲリオンが存在しない世界』
両方の世界が存在することを知ることで、物語は終わりを迎えました。
TVアニメ版エヴァンゲリオンは「予定がなくて終わり方が雑になった」「終わり方が思いつかなくなった」と言われますが、そんなことはありません。
過去のSF作品を知っていれば知っているほど、『エヴァンゲリオン』の終わり方は面白く感じると思います。
おわりに:人類の起源に迫るっていいよね
人類の起源に、「何か理由があるに違いない」と考えるのは、それだけ人間が自分達をすごいと思えるうぬぼれがあるからだと思います。
しかし、そのうぬぼれにはロマンがあることも事実で、多くの人に夢やワクワクを与えてくれました。
猿に禁断の果実が与えられたことで、文明が飛躍したように、若い人に面白いSF漫画が与えられることで、世の中にはさらに面白い作品が増えていきます。
それでは次の記事で!