2019年11月1日に『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』がついに公開。前作『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』を見てから2年間楽しみに待ち続け、やっと観ることができました。
個人的には満足できた作品ですが、中にはあまり満足できなかった方もいるようです。『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』についての解説、考察については次回の記事でやるとして、本記事では『ネタバレなし』『ネタバレあり』のレビューを書いていこうと思います。
※この記事の続編もご覧ください。
目次
ネタバレなしレビュー:前作未視聴でも楽しめる
映画が公開してから1週間ほど経ちましたが、まだ観に行けてない人も多いと思います。なかなか予定が合わない人もいれば、「金曜ロードショーやDVDで前作を観てから行こう。」という人も多いと思います。
しかし、個人的には「前作を見返す必要はない。」と思っています。これは「ITがそれほどの(見返す程)の作品ではないから」ではありません。
こう考えるのには2つ理由があります。
本作がすごく丁寧な構成になっている
1つ目の理由は『本作がすごく丁寧な構成になっているから』です。
『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』では、各キャラクターの過去や、思い出。本作の敵役でもある、ペニーワイズとの因縁なども構成に含まれています。
『ペニーワイズがどんな奴か』『子度の頃ペニーワイズと何があったか』が丁寧に描かれていて、前作を視聴していない方でも楽しめる構成になっています。
「いちいち各キャラクターをクローズアップしなくていい。」という意見もありますが、これをつまらないと思ってしまうのは実にもったいないです。
『IT』はホラー映画ですが、『スタンド・バイ・ミー』のような、子供達の『ひと夏の思い出』を描いた作品でもあるのです。
『スタンド・バイ・ミー』とは、こちらも『IT』同様、スティーブン・キング原作(こちらはホラー抜き)の映画です。
『スタンド・バイ・ミー』のあらすじは、『1950年代オレゴン州の小さな田舎町に住む4人の少年達が、線路づたいに新聞に載った“死体探し”の旅に出る。』というお話。
語部も大人になった主人公であり、いわゆる『ひと夏の思い出』を描いた作品となっています。
何度も言いますが、こちらはスティーブン・キング原作ですが『スタンド・バイ・ミー』は『非ホラー』です。
“死体探し”と聞くとなにやら怖い雰囲気ですが、これは子供ながらの『恐怖より好奇心が勝る』というのを描いただけでホラー要素はなく、むしろコメディシーンが多くあります。(『スタンド・バイ・ミー』を観てから『IT TheEND』を観るのもおすすめ!)
話が少々脱線してしまいましたが、『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』はかなり『スタンド・バイ・ミー』要素が強いと個人的には思います。
ただ『ペニーワイズに襲われる子供達』を観るのではなく、『子供達がどういう過去を背負って、どうペニーワイズに立ち向かうのか?』に焦点を当ててみると面白いと思いました。
記憶はおぼろげでいいから
2つ目の理由としては『記憶はおぼろげでいいから』です。
※ほんの少しだけネタバレ注意
『ペニーワイズが登場する街デリー』から離れ、大人になった主人公達は記憶があいまいです。
27年の時が経ち、大人になったことで子どもの頃の記憶が曖昧になっていたというのもありますが、これは『ペニーワイズが離れた』という理由もあります。
残酷で嫌な思い出ほど、人間は記憶から自然になくします。これは生きていくために仕方のない事ですが、『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』の登場人物達は『初恋の記憶』や『友達と秘密基地で遊んだ』などの楽しい思い出すら、欠落してしまっています。
子どもの頃の『楽しい思い出』『ペニーワイズとの辛い思い出』『デリー(地元)での思い出』を思い出すことが、物語のキーになっていきます。
この『思い出』という部分を引き立たせるために、『ITシリーズ』はあえて二部作構成となっているのです。
あえて『IT』『IT TheEND』と2年の間を開けたのも、「観客にも2年前の自分を思い出しながら観て欲しい」という制作陣の思惑があるのです。
2年前の自分は何をしていたか思い出しながら『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』を楽しむのは最高に乙な映画の楽しみ方だと思います。
※以下ネタバレ記事
ネタバレありレビュー:素晴らしいスティーブン・キングリスペクト。
『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』について、他の方のレビューを見ていて意見が多いのが、冒頭のゲイのカップルの暴行シーン。
「『ゲイ(同性愛者)』というだけで一方的にリンチにあったカップルが、さらにペニーワイズに襲われる」という、かなり救いようのないシーン。
この冒頭シーンを観て私は『IT TheEND』に対しての期待値が一気に上がりました。
というのも、私が同性愛者を嫌いなわけでも偏見を持っているわけでもなく、これは『スティーブン・キングリスペクト』だとすぐにわかったからです。
『IT』の原作者であるスティーブン・キングは、原稿執筆中に『同性愛者が暴行を受け死亡』という事件を見て、『ゲイというだけで、理不尽に暴力を振るわれる恐怖』に大きなショックと衝撃を受けたことがインタビューで明かされています。
『IT TheEND』ではこれを冒頭シーンに持ってくることで、今作『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』がどんな雰囲気の話なのか推測できます。
『ペニーワイズという怪物に町ごと生贄になった物語』『子供達が犠牲になっていい理由はない』という、この物語が『理不尽な災厄』を描いていることがわかります。
しかし、それは『スティーブン・キングのリスペクト』だと気付いた、コアなファンだけかと思います。
スティーブン・キングを知らずに、ホラー要素を楽しもうと思って観に来た観客からしたら、ただただゲイのカップルが痛ましくてなりません。
ファンには嬉しい演出でも、ホラーという特異なジャンルが含む『シリーズを知らないけどホラー演出を楽しみたい』という客層を冒頭から突き放してしまったのが、評価が別れる大きな要因になってしまったと思います。
上記にも書きましたが、スティーブン・キング原作の『スタンド・バイ・ミー』のようなヒューマンストーリーに焦点を当てた“思い出”シーンも、『ホラー要素』を重視した客層からは、間延びしたように感じてしまうかも知れません。
しかし、“思い出”シーンがなければシリーズ初見の人がおいてけぼりにされるのも事実です。演出が上手いが故に、冒頭シーンが不快に思えてしまうだけで、全体の構成を見ればかなりテンポのいい作品だと言えます。
さらにメイク、CG、役者の演技、演出、全てが満点に近い出来です。これらを観るだけでも2000円の価値は確実にありました。
最後に:若い人こそ観ると面白い作品
『IT』一部、二部ともにR指定がある作品となっています。これはグロシーン故のR指定です。
そのため、物語自体はかなり若い人向け、主に学生向けの作品だと思います。
実際、SNSやレビューサイトを見ると学生がかなり多いです。
ペニーワイズを見ることができる人間と、見ることができない人間が存在します。
見ることができてしまい、襲われる子ども達は必死に周囲の人間に訴えかけますが周りの人は何を言ってるのかわからない。
それはおかしな話で、町は行方不明者が異常なほど存在し、自分の息子がいなくなった親もいるはずなのです。
しかし、誰も襲われた子供達の話に耳を傾けない。
これが『ペニーワイズの呪い』なのか『厄介事に巻き込まれたくないという深層心理が働いた悲しい人間の性』なのかはわかりません。
この状況はいじめの構図にかなりにています。
『クラスでいじめが起きてるのを知ってはいるが、巻き込まれたくないから知らんぷりをする。』
遠いアメリカの田舎町のお話ですが、どこか学生にも共感できてしまい、惹かれる作品となっているのではないでしょうか?
ペニーワイズとはただの宇宙人?
今作の嬉しかった点として『ペニーワイズ』が『宇宙から来た』という設定を守っていたところです。(変にただの幽霊や怪物という設定にされなくてほんとに嬉しい。)
いままでホラー映画に出てくる敵役といえば、『化学の被害者になった人間』や『呪いを受けた人形』、『現世に未練がある悪霊』等でしたが、ペニーワイズはなんと『宇宙から来た』という斬新な設定が大好きでした。
ペニーワイズは宇宙起源生命体なのか?それとも概念のようなものなのか?
それはまた次回の記事で書こうと思います。
少々脱線した話もしてしまいましたが、次回記事では『IT』という作品の謎や設定について、徹底解説、考察していきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。
それでは次の記事で!
今回はあまり、ネタバレ無しでレビューを書かせていただきました。下記の記事は、同性愛者の暴力シーンや、映画の構造について深掘りして詳しく解説していますので、ぜひご覧いただければと思います。
【解説】『IT/イット』は最高の二重構造映画。「怖さ・恐怖」だけで評価するのはもったいない!【IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 】