ROBOT魂 機動警察パトレイバー [SIDE LABOR] 零式
『機動警察パトレイバー』の30周年突破を記念して今年はトークショーやイベントが目白押しです!
今回の記事では『機動警察パトレイバー』についての簡単な解説。そして個人的に『機動警察パトレイバー』の1番好きなところである『ケレン味』についても解説していきたいと思います。
目次
あらすじ:『機動警察パトレイバー』の名前からは想像できないリアルさ。
引用:(C)HEADGEAR/バンダイビジュアル・カラー
『機動警察パトレイバー』というタイトルを見て、『機動戦士ガンダム』のパロディおふざけ漫画かなと思ってしまう方も多かったと思います。
しかし、実際は漫画としてのおふざけ要素はありつつも『労働問題、多国籍企業、外国人差別、格差社会』といった、かなり大人向けのテーマを扱っている作品でもあります。
ハイパーテクノロジーの急速な発展とともに、あらゆる分野に進出した汎用人間型作業機「レイバー」。
しかし、それはレイバー犯罪と呼ばれる新たな社会的脅威をも生み出すことになった。連続するレイバー犯罪に、警視庁は本庁警備部内に特殊車両二課を創設し、これに対抗した。通称「パトレイバー」の誕生である。 (機動警察パトレイバー 冒頭ナレーションより。)
本作の魅力となった『リアルなロボット物』
『リアルなロボット物』と言っても、初代『機動戦士ガンダム』のようなリアルとはまた違います。
主人公は、警察用レイバーの『パトレイバー(パトロールレイバー略してパトレイバー)』の最新機『イングラム』に搭乗する泉野明。
この漫画では彼女の成長や葛藤も描かれ、魅力の一つでもあるが、それだけで終わらないのが『機動警察パトレイバー』。
本作は、群像劇としての1面も持っており、人間ドラマにもストーリーの重点が置かれている。
さらに、現実の建築用車両などに近づけたデザインやカラーリングのロボット、ロボットのソフトやハード面を題材にした話で構成されている。
現場とメーカーとの対立やすれ違いをする描写もあり、リアルに描かれている。
「これほんとに『週間少年サンデー』で連載してたの?」って思ってしまうくらいに内容が大人向けです。
今までのロボット物とは違う先見的な発想。現実味溢れる描写。放送が終わった今でも、フィギュアなどの立体物が販売され、イベントの集客数から、人気が衰えていないことがわかります。
『機動警察パトレイバー』の敵は会社でラスボスは課長?
『機動警察パトレイバー』で主人公達の敵となるのは、基本的に犯罪者達です。警察組織なので当たり前なのですが、災害救助や一般作業用のレイバーで暴れる暴徒の鎮圧などが、彼らのお仕事なのです。
しかし、主人公が属する『特車二課』にも一応『ラスボス』、『ライバル』ポジションの敵が存在します。
その敵とは『シャフトエンタープライズ』という多国籍企業の日本支部企画7課。
多国籍企業シャフトエンタープライズは、利益のためなら違法行為にも手を染める企業であり、企画7課も例外ではなく違法すれすれの営利活動を行う。
しかし、企画7課は企画7課の課長である内海のやりたいことをやる部署と私物化されており、上司からは厄介者扱いされているものの、上層部からは『変わり者だけど優秀な点』を評価されており、ほぼ野放しの状態にされている。
企画7課の表向きの仕事は、主にゲームの企画や市場調査を行う部署だが、その裏には企業倫理もクソもない真っ黒な商売をしている。
そもそもシャフトエンタープライズという企業自体が、密輸や人身売買など、いかにも悪い事を幅広く手がけている企業であり、その一部として内海率いる企画7課は違法なオリジナルレイバーの開発をしている。
内海以外の職員も度々描写され、一見普通のサラリーマンに見える上に、笑顔も多く見られる理想の職場である。
しかし、実際のところは人としての倫理観が欠けており、善悪の区別がつかない人間の集まりで、『悪のカリスマ』として『内海』に心酔している人間で企画7課は構成されている。
悪役内海が教えてくれた『正しいケレン味』
『機動警察パトレイバー』の魅力が語られる時、『特車二課』や他の人間模様、劇場版やレイバーについて語られる事が多く、なかなか内海率いる企画7課を特集した記事がないのが悲しいです。
やっている事が人として最低であり、とても擁護できるものではありませんが、個人的に内海が語る『悪役論』が個人的に大好きです。
内海が使うセリフの中に『正しいケレンを見せてあげよう』というのがあります。このセリフに内海課長の魅力が集約されていると思います。
そこでまずは、内海課長の人物像と、『ケレン(外連)』について考察、解説していきます。
内海課長はリアルな悪の組織のボス
上記でも書きましたが、内海課長は悪徳企業である『シャフトエンタープライズ』日本支部の企画7課のの課長。地球侵略を企む、悪の組織のボスではありません。
常に笑みを浮かべるポーカーフェイス中年。優秀で切れ者であるが性格は天真爛漫。
自身のやりたい事に忠実で、悪事であろうとその欲求を満たすことに能力を使っている。
特車二課の後藤喜一隊長(こちらは魅力を色んなところで語られている)と対になる存在。どちらも一見頼りなさそうに見えるがどちらも切れ者。
シャフト・エンタープライズ・ジャパンの技術力のアピールとして、”現時点に於ける最高性能のレイバー”『グリフォン』を開発。
法定規格も生産性も無視した完全なる『内海の趣味』であるグリフォンを、警察用レイバーである『イングラム』と対決させ、イングラムのデータ奪取を計画。
しかし、二度の特車二課のパトレイバー小隊との戦いに予想外の苦戦。グリフォンは、結果的に敗走する形となってしまったため、因縁の『イングラムVSグリフォン』の再戦に尽力する。
シャフトエンタープライズ上層部からは『ストップ』がかけられたものの、最終的にはテロ組織を雇い特車二課本部を襲撃。無理やり『イングラムVSグリフォン』を実現させた。
『手段のために目的を選ばない男』
まさに、子どもがそのまま大人になったような人間で、『イングラムVSグリフォン』をしたいがために『イングラムのデータを奪う』という目的を無理やり企画。
ここまで内海というキャラクターの悪口の様に聞こえるかもしれませんが、だからこそ内海が出てくる場面は面白いのです。
意味が悪くも良くも使われる『ケレン』とは?
みなさんケレンという言葉を知っていますか?
ケレンの意味は『はったりやごまかしをする様』を意味します。
基本的に、フィクションの舞台や演劇などに使われる言葉で、『この作品はケレン味がある』=『この作品は邪道で正統派じゃない』というような意味合いで使われていた言葉です。
しかし、近年では意味合いもポジティブなものに変わってきました。
『この作品はケレン味がある』=『この作品はワクワクするような演出がある』というような褒める言葉へと変わっていきました。
内海課長は後者の意味合いで『ケレン』という言葉を使います。
『機動警察パトレイバー』で内海課長は『正しいケレン』を見せてくれた。
小さい頃、『戦うロボットが人型である必要はあるの?』というような意地悪な言葉に傷つけられました。
上記の疑問にはちゃんと設定があり、物語がありますが、小さいころの自分には設定もよくわからなかったのです。
わかった後、『ミノフスキー粒子がどうのこうの』等のアニメの設定込みの説明をしてもイマイチパッとしませんでした。
そんな中、出会ったのが『機動警察パトレイバー』です。
日本の日常生活に違和感なく溶け込み、現実的なロボットを描く『機動警察パトレイバー』に、どことなく「この作品に答えがあるのではないか?」という期待がありました。
結果的に『機動警察パトレイバー』に『ロボットが人型である意味』を見つけることができましたが、その答えには目から鱗が落ちました。
『機動警察パトレイバー』では、レイバーが人型である事の意味が『直感的に操作出来るから』と、されています。
直感的と言っても操作方法が瞬時にわかるという意味ではありません。『同じ機能がついていても人型の方がわかりやすい』という意味です。
例えば、右手に拳銃があり左手に盾があるという状況。右手で攻撃して左手で守るというイメージが直感的に湧いてくることで作業効率は上がります。
ここまで現実的な『ロボットが人型である意味』を物語全体で説明しているのです。
しかし、なにが『機動警察パトレイバー』すごいかって、ここまでが『ロボットが人型である意味』ちゃんと説明しているのに、それでも『ロボット同士が闘うのがかっこいいから』とあえて開き直った理由をキャラクターに代弁させた事がすごいのです。
内海課長が何がやりたいか?ここまで説明したとおり『イングラムVSグリフォン』です。
内海は、イングラムとグリフォンが闘っている姿を『巨人同士の殴り合い』と称し、バド(グリフォンのパイロット)が銃をイングラムとの闘いで使った時、『わかってないなぁ』と発言するなどロボット同士のフェアな闘いを望んでいるのです。
さらには、『霧の中からグリフォンを登場させる(鉄人28号でのブラックオックスの登場シーンのオマージュ)』、最新鋭機に対して『偽グリフォンか?』と発言するなど、内海は子供の頃好きだった事を現実でもやろうとしているのです。
内海が『怪獣』や『偽○○』、『巨人同士』という発言をするあたりからこの『機動警察パトレイバー』の世界観には『ウルトラマン』のような作品があったことがわかります。
(怪獣という言葉を知らない世界の例として『シン・ゴジラ』の巨大不明生物というのが上げられる。)
内海は『巨大ロボット同士が闘うのがかっこいいから巨大ロボット同士を闘わせる』のです。
これはアニメや映画、特撮の全ての作品に言えることです。
『機動戦士ガンダム』ではロボット同士が闘う理由として『ミノフスキー粒子度が高い中ではミサイルや戦艦等のレイダーが使えない。だから人型ロボットで戦う。』という設定をつくりました。
しかし、それも『ロボット同士が闘うため』の理由であり、どこか『アニメ、創作物』としておおらかに観ている部分がありました。
そこを『機動警察パトレイバー』では『手段のためには目的を選ばないキャラクター』を登場させ、ものすごく細かく丁寧に『ロボットの人型である意味』について描いているのに、あえて『かっこいいからロボット同士で闘わせるんだ』と言い放ってくれたのです。
私はこれを理解した時、目からウロコが落ちました。しかも、これを悪役に言わせるのがまた胸を熱くさせます。
最後に:『機動警察パトレイバー』30年後にも語られる
こんな事を言うと年齢がバレてしまいそうですが、私が『機動警察パトレイバー』を知った時すでに『機動警察パトレイバー』がつくられてから10数年立っていました。
それでも『機動警察パトレイバー』は当時の作品に負けないくらい面白く、そして新しく感じました。それは今見返しても同じです。
確かに、ブラウン管やガラケーが出てくる描写には時代を感じさせられるものがありましたが、人間模様やロボットデザイン、社会情勢は今にも通ずるものがあります。『機動警察パトレイバー』がこの先30年後にも残っていることを願います。
この記事タイトルを見て、記事を開いてくれたということは『機動警察パトレイバー』を知っている人がほとんどかもしれませんが、まだ読んでいないというのならぜひ!一度読んでいただくことをおすすめします。
絶対後悔しません。私が保証します。
それでは次の記事で!