2019/08/30金曜ロードショーで『天空の城ラピュタ』が放映されました。なんと今回で17回目の放映だとか。未だに人気は衰えず、視聴率は14.5%をマーク。
根強い人気を持つ『天空の城ラピュタ』ですが、実は『天空の城ラピュタ』製作するにあたり、宮崎駿監督は、当時のSFやロボットアニメのアンチテーゼの意味も込めて『天空の城ラピュタ』を製作したそうです。
そんな『天空の城ラピュタ』についての魅力や考察を少しマニアックな目線から書いていこうと思います。
目次
ラピュタの世界はSFでもファンタジーでもなくスチームパンクな世界。
『天空の城ラピュタ』を観て、誤解しがちなのは『天空の城ラピュタ』のテーマ。宮崎駿監督は『天空の城ラピュタ』を作る際、当時流行っていたありがちなSFやファンタジーにならないよう意識したそうです。
飛行石等が呪文で起動している場面などを観ると、つい魔法かと誤解してしまいますが、あれは音声認識機能で魔法が使われているのではありません。
そういった超科学を魔法のように魅せるためにも、時代設定を産業革命当時の「ちょっと油臭い感じ(スチームパンクの世界)」にしたのです。
スチームパンクとサイバーパンクなどの違い。
※下記は「だいたいこんな感じの意味だよ」という解説で例外的な作品や、違う意味を付与した作品もありますのであしからず。
スチームパンクとは、『スチーム(蒸気機関)』+『サイバーパンク』の造語。
サイバーパンクとは、主にフィクションなどの分類にあてる言葉で『社会構造・モラル・技術進歩が現実の技術の想像を超えた(パンク)』世界。
つまり、スチームパンクとは『スチーム(蒸気機関)』が盛んに発達していた時代(世界史で言う所の産業革命)が社会構造や技術面の基本となった世界観ということです。
蒸気機関がメインな時代だからこそ、他のメカがカッコイイ!
蒸気機関が主になっている世界観であるため『天空の城ラピュタ』では『パズーが働いている採掘場の掘削機やエレベーター』、『軽便鉄道の機関車』は蒸気機関が使われているものの、『ラピュタ』や『飛行石』、『ロボット兵』などは蒸気機関を原動力にはしていません。
ドーラ一家こそ『スチームパンク』な部分?
さらに『ドーラ一家』が所有する『タイガーモス号』や『フラップター』、『オートモービル』も蒸気機関は使われていません。
そんなドーラ一家の使うメカの解説&素晴らしさを紹介していきたいと思いますが、その前にドーラ一家が使うメカは全てドーラの亡き夫が開発したものだという事を知っていますか?
あのタイガーモス号の機関室に居るおじさんは、ドーラの夫ではなく古株の団員。
ドーラの夫は天才的な発明家でタイガーモス号やフラップター、グレネードランチャー(ムスカ曰く大砲)
は夫の発明。
オートモービルは発明品かどこからか、くすねてきたのかは不明なものの、下記で説明していきますがタイガーモス号の焼玉エンジンなどを造れたならオートモービルを造れても不思議じゃない。
あの時代のオートモービルは珍しい
ドーラ一家がシータ&飛行石を探している時に使っていたオートモービル。これを発見した際、パズーが「オートモービルか、めずらしいなぁ」と言っていますが、全くその通りなのです。
形こそ蒸気機自動車スタンレー1904モデルに似ていますが、設定ではドーラ一家のオートモービル(というかドーラ一家が使うメカ全て)は、ガソリンを使ったエンジンで動くそうです。
蒸気機関が主流の採掘場の街で育ったパズーはオートモービルを1発で見抜きました。
こういった何気ない「オートモービルか、めずらしいなぁ」というセリフも『パズーが機械に強い事』『エンジンメカが普及していない事』を視聴者に違和感なく伝えています。
パズーの言葉選びのセンスが大好きです。笑(他・悪漢に追われてるんだ等)
さらにこの後、蒸気機関車に簡単に追いついてしまうなど、【蒸気機関 < エンジン】の構図は当時の時代背景の皮肉にも感じます。
完全なSF。フラップター(オーニソプター)
これこそラピュタの中で『風の谷のナウシカのメーヴェ』並に有名な乗り物。
昆虫の様な透明な四枚羽を持ち、それを羽ばたかせて体重移動や操縦桿によって空中を飛び回ります。
船底には『紅の豚』の『サボイアS.21』と同じ船底部分のデザインや、『サボイアS.21』の同様に穴にクランクを差し込んでくるくる回すことによってエンジンをかける様子から、『サボイアS.21』と同じ水冷エンジンを使っていたのではないかと考察出来ます。
※要塞内でロボット兵に水冷式機関銃を打っていたシーンから水冷式は世に広まった世界観だと思われます。
しかし、このフラップターには人工筋肉が使われているらしく、そこに発電した電気を流して羽を動かしているならそれは完全なSFですね。
年代によって違いますが、教科書にも乗っていたルイージ・カルヴァーニの(カエルの足に電気を流すと動く)実験が1771年にされており、『天空の城ラピュタ』の時代背景が産業革命時を題材に描いているなら、かなり最新鋭の技術。
※ゴム動力のゼンマイ模型でオーソニプターを造っていたパズーは将来有望過ぎますね(笑)。後に発売された公式グッズのジグゾーパズルでは自作のオーソニプターでドーラ一家に会いにいくパズーとシータの絵もあるそう。
母船機能を備えたタイガーモス号
ドーラ一家の母艦で、腹部にフラップターを格納してあります。動力原は焼玉エンジンで、高速飛行する際に、クラッチ操作で四重反転プロペラを駆動させる。
一見、翼に付いてるプロペラが推進力に見えますが、あれは垂直上昇やホバリングに使われています。
エンジンひとつで動力と舵をわけ、さらに操縦はエンジンルームではなく操縦室で行えるなど、ドーラの夫の天才っぷりが伺えます。
上記でフラップターを格納する母艦機能があると書きましたが、推進時にも発進、着艦出来るよう船体後方に出入口があります。
これは宮崎駿監督のガンダムのアンチテーゼと言われていています。
ガンダムの場合、ホワイトベースやガウ攻撃空母、アーガマなど船体前方からモビルスーツが出ていくのを宮崎駿監督はそんなものリアルじゃないと語っていたとか。
※個人的にはガンダム作品の場合、発進演出はカタパルトを意識している節があるため、一概にどっちがリアルとは言えません。
宮崎メカはドーラ一家だけじゃない!軍隊&ラピュタの科学力
宮崎メカのカッコいい部分はもちろんドーラ一家の物だけではありません!
ラピュタのロボット兵はもちろん、軍隊の飛行戦艦やジェット機などもよく観るとなかなかカッコイイんですよね。
ラピュタ探索に本気。軍隊のメカ達
まず『天空の城ラピュタ』にでてくる軍隊は、空中戦艦ゴリアテやシータ&パズーを追跡していたジェット機。そして装甲列車など軍隊もラピュタ程ではありませんがかなり進歩した軍事力を持っているよう。
上記でも書きましたが、水冷式の機関銃や銃剣が主兵装として利用している世界観に、ジェット機が出てくるあたりはパンクな部分ですね。
シータ達を追跡していたジェット機にはパルスジェットが搭載されています。このパルスジェットを数台使って、ゴリアテを浮かしていると言われていています。(空中に停止中などどう見てもエンジンが稼働してないように見える時もある。)
スチームパンクの引き立て役。ラピュタ脅威のメカニズム。
ラピュタの兵器と言えば、まず浮かぶのがロボット兵ですよね。次点でインドラの矢とかですかね。
ラピュタのロボットは、戦闘用と空中庭園にいたロボットがいますね。
戦闘用ロボット兵は、目の様な射出口からレーザー(プロトンビームかも?)を乱射でき、エネルギーはどこから来ているかは謎のようにも思えます。
しかし、このロボット兵の謎も、飛行石が核エネルギーをモチーフにしているのなら説明がつきます。
飛行石は核エネルギーの結晶体?
ロボット兵はすごく複雑で、今の科学力では解明できないだけですが、飛行石はもっと理解不能なものとして描かれています。
飛行石の正体として、飛行石が核のメタファーだという説は有名かと思います。飛行石といえば、青く発光するのが特徴的です。
これは、原子炉の中の燃料棒とすごく似ていて、これをチェレンコフ光と言います。
※ゴジラが放射熱線を吐く時、背鰭が青白く発行するのもこれと同様の理由で、決してガス火で青く光ってる訳じゃないんです!
ポムじいさんが「わしには(光が)強すぎる」と言っていたのも、長年微量の飛行石が含まれた洞窟(現実で想像するならウラン洞窟)にいたからと考えられます。
シータがこれまでの自給自足してこれたのも「飛行石には、畑を豊かにさせる力があるから」という設定があります。
60年代には放射能は農作物をよく育たせるという文献が発表されており、当時のSF作品にもそういったシーンを見ることが出来ます。
ラピュタ人は謎の病によって衰退して地上に降りたと言われていていますが、もしかしたら飛行石による放射能汚染が原因だったかもしれないと考察すると面白いですよね。
ソドムとゴモラを滅ぼした天の火。インドラの矢
ムスカがモウロ将軍達に見せた天の火。ラピュタの攻撃的な一面の代表的なものです。
ここでの見所は、この大爆発を見せられたモウロ将軍。
ラピュタの時代モチーフが、1960年頃。兵隊たちの武装が銃剣な部分から察するに、あの時代では大量破壊兵器などなかったでしょう。
戦争の歴史から辿っても、戦場が対立国同士の中間地点から飛行機が開発され、兵器運用されるようになり、やっと大量破壊兵器(核爆弾など)という物が生まれました。
いくら飛行戦艦が発達していたとはいえ、兵士たちの武装から、まだまだ戦争の歴史は浅い様子だと窺えます。
そんな彼らが、いきなり核爆発を見せられたらどんな反応になるでしょう?反抗する気も失せ、開いた口が塞がらない事でしょう。実際兵士達も固まってしまっていました。
しかし、モウロ将軍はムスカ大佐の危険性を判断し、すぐさま極刑にかけました。
彼は小物やバカと言われ、結果は海にポイ捨てされちゃいましたが、軍人として肝が据わっている部分は凄いと思います。
『天空の城ラピュタ』は何度観ても良い。
『天空の城ラピュタ』の世界観についての考察や解説をさせていただきました。話が脱線した部分もありますが、上記のような、蒸気機関文明を圧倒するエンジンやラピュタの兵器こそ『天空の城ラピュタ』の魅力のひとつだと思います。
『天空の城ラピュタ』は小さい頃から大好きで、特にロボット兵がティディス要塞を破壊するシーンが大好きでした。
ちなみにロボット兵の目らしき部分から出る光線は、プロトンビーム派です(笑)。レーザーなどとも言われますが、レーザーでレンガや石を切断しても爆発しませんからね。
※プロトンビームとは、簡単に言えば超強い水鉄砲。陽子を収束させ発射するもの
ロボット兵に飛行石エネルギーが使われているとして、飛行石を核の比喩と考えるのなら、プロトンビームを打ててもおかしくないはず。
ロボット兵の造形も極まっていて、やっぱりハイゴッグやカプルなど蛇腹腕のロボットはカッコいい。
シータを助けるため飛んでいくフラップターも、未来的なメカなのにビスなどが打たれていて、子供の頃本当にしびれちゃいました!
この記事を読んで、ちょっとでも次に観る『天空の城ラピュタ』の各シーンごとの印象が変わっていたら嬉しいです。
それでは次の記事で!