【風の谷のナウシカ】“ドルク”に詰まった宮崎駿の“国”の流儀。土鬼諸侯国連合。解説&考察についての記事をご覧いただきありがとうございます。
この記事では『風の谷のナウシカ』の考察として、土鬼諸侯国連合の戦士について神聖皇帝について考察・解説していきます。
宮崎駿監督最新作2023年7月14日に公開予定『君たちはどう生きるか』楽しみですね。
タイトルから察するに近代が舞台のお話かと思いきや、ジャンルは“冒険活劇ファンタジー”ということで、公開までどんなストーリーになるか妄想しながら楽しみにしています。
今回は宮崎駿監督が漫画家として描き上げた傑作『風の谷のナウシカ』に登場する“土鬼諸侯国連合”や神聖皇帝について書きます。
もしかしたら新作の舞台がファンタジーなら、似たモチーフが出てくるかもしれないということで、今のうちに振り返っておきましょう。
目次
土鬼諸侯国連合とは。超能力者が王の宗教国家。
登場作品 | 風の谷のナウシカ |
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巻数 | 全7巻 |
作者 | 宮崎駿 |
出版社 | 徳間書店 |
主人公 | ナウシカ |
主要登場人物 | クシャナ ナムリス ミラルパ |
主要国家 | ルメキア ドルク |
土鬼諸侯国連合とは漫画『風の谷のナウシカ』に登場する国名です。土鬼は「ドルク」と読み、士族名前です。
トルメキアと並ぶ作中屈指の大国で、皇帝領、7の大侯国、20の小侯国、23の小部族国家の集合体です。
国名は『土鬼諸侯国連合』ですが、実際は帝政を執っている為、正確には『土鬼諸侯国連合帝国』になります。
もともとは土着信仰を重んずる土王と呼ばれる王族が士族をまとめ上げていましたが、神聖皇帝がその地位を奪う形で帝政の国家へと移り変わりました。
神聖皇帝は旧世界の技術によって不死の力をもっており、数百年にわたって国を維持し続けました。
神聖皇帝は2人で、表向きは兄のナムリスと弟のミラルパが兄弟で皇帝を継いでいるということになっていますが、実権は超常能力者であるミラルパにあり、政治も軍部も法もすべてミラルパに権力が集中しています。
ドルクをトルメキアが恐れる理由。聖都シュワにある墓所。
土鬼諸侯国連合の首都は“旧世界の墓所”があるという聖都シュワです。
映画ではトルメキアや風の谷が主になって話が進んでいましたが、漫画では3巻~最終巻まで全て土鬼諸侯国連合の領地が舞台です。
ドルクはトルメキアに比べ、防具や兵器、空中戦艦が貧弱にみえますが、トルメキアが扱う旧世界の技術が“エンジン”や“自動小銃”など、現代人でも仕組みが理解できる範疇の技術です。
それに対し、ドルクの扱う旧世界の技術は“不老の肉体”や“超能力”、“マスクを貫通する瘴気を放つ粘菌”や、“不死身の人造兵士ヒドラ”などの完全な オーバーテクノロジーで、現代の技術水準をはるかに上回ったものを扱います。
『風の谷のナウシカ』のラスボス?神聖皇帝と墓所の関係。
墓所とは旧世界の技術の暗部と、旧世界の人間の卵を集めた箱舟のような存在であり、土鬼諸侯国連合の王はこの技術を守るために選ばれたために超能力や不死の力を持たされています。
つまりドルクの王は墓所の主との契約により、旧世界の技術を駆使できたのです。
墓所の正体や戦闘描写についてはこちらの記事で解説しています。
ドルクの最期。墓所が消え、神聖皇帝も消えた。
物語の終盤、ナウシカと巨神兵の尽力によって墓所は破壊され、ドルクにわずかに残った士族はトルメキアと和平を結び、ナウシカとともに再び中興の道を歩むところで物語は終わります。
墓所が消えたことで旧世界の怪しげな技術は失われ、神聖皇帝のような宗教によって権力を集中させるような人間もいなくなったので、当面は平和になったと思いたいところです。
しかし、作中では人間は何度も同じ間違いを繰り返す事や、ナウシカがドルクのもとを去ったことも語られている為、いまいち最期にはすっきりしません。
神聖皇帝弟。聡明で強力な超能力者ミラルパ。
土鬼諸侯国連合の実質的な支配者ミラルパは作中で中ボスのような役目をになっています。
大量の目が描かれた僧侶の衣装を纏う巨漢で、 念動による衝撃波、相手の心を読む力、不死の力に加えて超能力をもっており、短時間なら幽体離脱の様に自分の影を敵に飛ばして精神と身体同時に攻撃を仕掛けることもできます。
このとき影は、ナウシカ曰く“刺すように冷たく焦げるほどに熱い”闇をまとっているとのことで、遠距離攻撃なのに強すぎますね。
物語のかなり序盤に登場しますが、人間としての強さではおそらく作中どころか、宮崎駿作品の中で最も強いといっても過言ではありません。 ミラルパがドルクの最高権力者として数百年間君臨できたのは、超能力のおかげともいえます。
兄ナムリスに実権がなかったのは、生まれつきの超能力がなかったのが理由でもありますが、一方でカリスマの違いも作中では描写されています。
土鬼諸侯国連合帝国は多民族国家で、常に民族紛争の火種を抱えていますが、ミラルパの布教した宗教を強制することでなんとか1つにまとめ上げていました。
ナムリス曰く「嘘も100年繰り返すと本人まで信じる」と馬鹿にされ、本来民をまとめるための手段であった宗教が、いつの間にかミラルパ本人も縛る信仰になってしまった狂気が作中で描かれています。
第三の主人公。ナウシカの影ミラルパ。
『風の谷のナウシカ』第二の主人公がクシャナなら、第三の主人公はミラルパといえるかもしれません。
物語序盤ではナウシカの命を狙う邪悪な敵、狂気の独裁者として描かれていますが、100年前はナウシカのような徳の高く聡明な人物だったと語られます。
兄ナムリスでさえ、当時のミラルパを名君と評しましたが、それも最初の20年程度で、いつまでたっても愚かな民衆に絶望し、徐々に弾圧を強めていってしまったようです。
しかし、それすらも決してミラルパの私利私欲ではなく、ドルクの民衆が滅びることを誰よりも危惧していたからでした。
ミラルパの直属の部下である僧会は、身分を問わず能力を重んじる人材登用であり、自分に対して意見するものにも、理不尽な解任や処罰をすることはなかったです。
それ故に、臣下には慕われており、本来墓所に使えているはずの博士の一部からも真の忠誠心を向けられていました。
作中で悪の権化、諸悪の根源の様に描かれていた人物の過去が、まさかのナウシカと同じ志を持っていて、なんなら今も持っているが苦悩し続けた上で、今の状況にたどり着いていたという真実が読者に衝撃を与えました。
ヒドラのかわりに巨神兵、僧会のかわりに蟲使いを率いてるだけでナウシカと本質的には変わりません。
それを知ったうえで、それでもナウシカは進みました。
ナウシカが墓所に対して「私達は血を吐きつつ繰り返し繰り返しその朝をこえてとぶ鳥だ!!」というセリフがありますが、生命が試行錯誤で変わっていくように、ミラルパの生き様があったからこそ、ナウシカが同じ大失敗を繰り返さず済んだのだと思います。
神聖皇帝兄。愚直で好戦的なナムリス。
ミラルパの兄ナムリスは、ミラルパと対照的に愚直で行き当たりばったりの快楽主義者です、
体の拒否反応による死を恐れて、不老の手術を行わなかったミラルパに対し、ナムリスはヒドラとの移植手術を行っており不老不死の体を手に入れています。
ナウシカを倒そうとして返り討ちにあったミラルパが弱ったところを謀殺し、日陰者にされていた鬱憤を晴らすため、軍を率いてトルメキア進行を企てます。
この際クシャナとの政略結婚を図ったり、遊び半分で巨神兵を連れて行こうとしたりしますが、巨神兵が暴走したことで首から下の胴体に穴を開けられ、挙句の果てにナムリスを裏切ったクシャナによって、首だけの姿にされてしまいます。
そして、何よりも望んでいた面白いこと(巨神兵の復活)を見届けられないまま、クシャナによって空中戦艦の甲板の上から投げ捨てられました。
死んだ際には民衆が大喜びしており、死してなお忠誠を誓う臣下がいた、弟ミラルパとはカリスマに雲泥の差があります。
宮崎駿作品にめずらしく、一切、善性や悲しい過去などがない人物で(悲しいのは弟のが優秀だったくらい)、シンプルな欲望とさっぱりした性格故に、意外とファンが多いキャラクターです。
…が物語終盤のちょっとしか登場せず、せっかくの戦闘シーンも巨神兵のインパクトが強すぎて印象は薄いです。
まとめ:宮崎駿監督の空想国家は面白すぎる。
ドルク兵も欲しいし、蟲使いも欲しい。
ナウシカと墓所へ行くときversionの蟲使いのフィギュア化待ってます! https://t.co/8TQIdbv0DX
— アリスケ (@walking_planets) February 25, 2023
今回は、宮崎駿監督世界で、個人的に一番好きな空想国家“土鬼諸侯国連合”について解説、考察しました。
ナウシカに立ちはだかる敵であり、超えるべき課題であり、守るべき民でもあるドルク。是非劇場でみたいほど面白い国です。
以上まとめると
- 土鬼諸侯国連合は漫画「風の谷のナウシカ」に登場する超能力者が王の宗教国家。
- 作中のトルメキアと並ぶ作中屈指の大国である。
- 連合国ながら実際は帝政を執っている為、正確には「土鬼諸侯国連合帝国」。
- 帝国をおさめる神聖皇帝は旧世界の技術によって不死の力をもっている。
- 神聖皇帝は兄弟だが、実権は超常能力者である弟ミラルパにある
- 兄ナムリスはどうしようもない快楽主義者だが弟ミラルパは狂王ながらも臣民と国を思う名君であった。
トルメキア、ドルク、ラピュタ、キングズベリー
宮崎駿監督の描く空想国家は本当に面白いですよね。
どうやって栄えてどうやって滅んでいくのか、王国なのか共和国なのか、統治者の思想は反映されるのか、何を信じ何を恨んでいるのかがちゃんと設定されていて、まるで創世記を読んでいるかのような気分にさせてくれます。
新作のファンタジー世界にも宮崎駿監督の空想国家が登場するとおもうと今からワクワクしてきますね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。