今回は漫画『藤本タツキ短編集17-21』の中の一つ『庭には二羽ニワトリがいた。』についてレビューとちょっとした考察&解説していきます。
漫画もアニメも盛り上がっている『チェンソーマン』の作者“藤本タツキ”先生の短編の一つである『庭には二羽ニワトリがいた。』。昔に描いただけあって絵は『チェンソーマン』や『ファイアパンチ』ほど綺麗ではありませんが、『チェンソーマン』やほかの藤本タツキ先生の作品がより楽しめる内容でした。
『藤本タツキ短編集「17-21」』
10/4月発売記念✨
カウントダウン企画①‼️収録作品から
『庭には二羽ニワトリがいた。』
をご紹介。
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宇宙人の陽平は学校では飼育係。
今日も庭の鶏にエサやりをするが!?
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明日の作品もお楽しみに❗️ pic.twitter.com/fkpevGdD2X— チェンソーマン【公式】 (@CHAINSAWMAN_PR) September 30, 2021
SNSや漫画評価サイトをみると“短編”、“絵が汚い”というイメージで読んでいない人も少なくないようなので、これを気に読んでみようと思っていただけると幸いです。
目次
『庭には二羽ニワトリがいた。』とは?担当編集者がみた藤本タツキ先生の”凄み”
作品名 | 庭には二羽ニワトリがいた。 |
---|---|
作者 | 藤本タツキ |
出版社 | 集英社 |
収録 | 藤本タツキ短編集17-21 |
主人公 | 陽平ユウト |
『庭には二羽ニワトリがいた。』とは、『藤本タツキ短編集17-21』に収録された短編漫画です。漫画賞投稿作品で、この作品をきっかけに現在の担当編集者林士平さんと出会っているそうです。
林士平さんはかなりの映画好きだそうで、藤本タツキ先生も林士平さんの影響で映画をよく観るようになったと語っているため、この出会いがなければ数々の映画パロディやオマージュが作品内から消えていたかと思うと、まさに運命の出会いと言えます。
物語は、宇宙人が人類文明を滅ぼした地球が舞台で、人間を家畜程度にしか思っていない宇宙人の魔の手から、ニワトリに変装した男女が生き延びようとするという話です。
短いお話ながら冒頭の「見た目がやばい宇宙人達による学園ラブコメディ」の部分と中盤の「人間と宇宙人の圧倒的な力の差」が明かされる真相回想パート、そしてラストの伏線回収パートで構成されており、どの部分も雑に描かれていません。
藤本タツキ初期作品ということもあって、荒っぽい絵柄や風景に目が行きますが、それも「コメディのようなノリなのに人間とニワトリの区別もつかない宇宙人」というキャラの恐ろしいギャップを際立たせています。
ファイアパンチにいました?見たことあるデザインの主人公陽平とユウトの”変形姿”
藤本タツキ先生の短編の中には、後の作品に登場するキャラクターに似ていたり、名前がそのまま同じキャラクターが登場する時があります。
『庭には二羽ニワトリがいた。』の中では、宇宙人の主人公陽平とユウトが後の作品に出てくるキャラクターにビジュアルが似ています。
普段の姿はどちらも個性的な見た目をしていますが、宇宙人の特性である“変形”をすると姿かっこよく、恐ろしくなり、陽平の変形した姿はまるで『ファイアパンチ』に登場した“仮面の男”のようです。
仮面の男とは、藤本タツキ著の漫画『ファイアパンチ』に登場する金属の仮面で頭を覆うブリーフ一丁の男性のキャラクターです。
中世の甲冑のようになっている金属の仮面や、筋骨隆々で身につけている衣服がぱっつぱつなところも似ていますが、主人公を助けるためため命をかけて戦ってくれるところもにています。
『チェンソーマン』のあのトラウマシーンの元ネタが?ユウトの変形姿。
チェンソーマンのここってエヴァのパロディだったよね pic.twitter.com/W7CVP4xrYJ
— さ巫女 コミティア143 く06a (@s35_mmsg) January 22, 2021
夕焼けを背にする敵キャラってかっこいい
#エヴァ参号機
#ウルトラ怪獣
#銃の魔人
#チェンソーマン
#庭には二羽ニワトリがいた。— アリスケ (@walking_planets) February 5, 2023
ニワトリの頭をかぶり、人間の女の子を側で守っていた男の子の正体は宇宙人でした。
そばにいるうちに大切な存在となった女の子を守るため、もう一人の主人公ユウトは変形します。その姿はチェンソーマンに似ています。
食いしばった無数に生えた牙や、目のないいかつい顔、額から飛び出した突起物はチェンソーマンにそっくりです。
チェンソーマンの元ネタは『ABARA 』の黒ガウナだそうですが、ここからすでにあのかっこいい姿のイメージは固まっていたのかもしれません。
そして、ユウトが変形して、敵の宇宙人に立ち向かう姿は『チェンソーマン』屈指のトラウマシーンである銃の魔人にデンジが追い詰められるシーンに酷似しています。
チェンソーマンに変身したデンジ→夕日を背にする銃の魔人
変形したユウト→夕日を背にする宇宙人
というコマの流れも、もともとお互いが仲間同士なところもそっくりです。
このころから藤本タツキ先生のセンスが光っていたんですね。見抜いた林さんすごすぎる…。
まとめ:藤本タツキユニバース
今回は『藤本タツキ短編集17-21』に収録されている『庭には二羽ニワトリがいた。』についてレビューとちょっとした考察&解説をしました。
担当編集者の林さんの語る通り、短編ながら起承転結に伏線回収、インパクトのあるキャラクターデザインに、ハイセンスなギャグ風シリアス展開が魅力的な藤本タツキ先生の魅力が詰まった作品だと思います。
以上まとめると
- 庭には二羽ニワトリがいたが収録されているのは藤本タツキ短編集17-21。
- 絵は荒々しいがセンスが光っている。
- この作品をきっかけに現在の担当編集者林士平さんと出会っている。
- 特徴的なコメディのようなノリなのにシリアスなストーリー進行はこのころから。
- 陽平は漫画「ファイアパンチ」の仮面の男にデザインが引き継がれ、ユウとはチェンソーマン引き継がれている。
- ユウトが変形して、敵の宇宙人に立ち向かう姿は『チェンソーマン』のトラウマシーンである銃の魔人にデンジが追い詰められるシーンに激似。
短編は好きではない人は結構いて、個人的にも作品がかなり気に入らない限り作者のた作品も読んでみようとはなりませんが、今回に限っては読んで損は絶対ないといえます。
藤本タツキ先生は自分に影響を与えた出来事や作品を、特に自分の作品に落とし込む作家性があると思いますし、これから過去作のキャラクターが元ネタの新キャラクターがでてきたりもすると思うので、未読の方はぜひ読んでみることをお勧めします。
近年流行っているユニバース化も、藤本タツキ先生のキャラクター達なら違和感なく同じ世界に同居できそうなので成功しそうです。
最後までお読みいただきありがとうございました。