2022年現在もっともインターネットで注目されているWeb漫画『タコピーの原罪』。
「少年ジャンプ+」にて漫画家タイザン5先生が手がける新感覚サスペンス・ミステリー漫画です。
2021年12月10日から連載がスタートし、2022/02/08現在「第9話」までが掲載中。連載開始当時からTwitterなどのSNSで注目されています。
注目されている理由の1つとして、いじめや自殺を扱うハードな内容にかかわらず、まるでドラえもんのような、タコピーというギャグテイストのキャラクターが登場することにあります。
タコピーというギャグキャラクターによって読者は「人の死が軽く感じてしまう」というある種のホラーを感じるのです。
個人的には、心が病んでるときに『タコピーの原罪』を読むのはおすすめしません。
今回は、物語の最重要キャラクターである「タコピー」について解説、考察していきます。
目次
考察①タコピーとは?人を殺したドラえもん?
タコピーの原罪のしずかちゃん
一話の時点で『宇宙人すら魅力する魔性』が描かれているんですよね pic.twitter.com/kq80dShVJm— 九兆 (@kyu_tyou99) January 6, 2022
考察の前にまずはタコピーというキャラクターについて整理していこうと思います。
タコピーとは、「宇宙にハッピーを広める」ことを目的に旅をしている、ハッピー星からきたハッピー星人。
「しずかちゃん」といういじめられっ子が自殺してしまう未来を変えるため、ハッピー道具を使って奮闘します。
物語は現在、タコピーがいじめっ子をやっちまったので、結果的にしずかちゃんはいじめっ子から助かっています。
概要だけ聞くと、殺人をしちゃうやばいドラえもんのような感じですが、それは誤解です。
タコピーがいじめっ子をやってしまったのは、あくまでしずかちゃんを助けようとしてのことであり、殺人ではなく傷害致死です。
それでも罪は罪ですが、タコピーは自首しようとしていました。
タコピーは、ただただ無知で、世間知らずなだけで、罪の意識や倫理観はちゃんとあります。
しかし、現状は死体を隠したり罪を隠そうとして罪を重ねていっています。
だからこそ罪の重さに気づいたこれからの展開が気になります。
考察②タコピーの「原罪」とは。物語に登場する罪の数々
『タコピーの原罪』には数々の罪が登場します。
そもそも原罪とはなんなのか。旧約聖書の創世記にて語られています。キリスト教の一般的な解釈ではアダムとイヴから受け継がれた罪のことです。
罪とは有名な話ですが、アダムとイヴが神に食べることを禁じられた知識の実を食べてしまったことです。
このことでアダムとイヴの祖先である現代人は様々な苦しみがあるというのが原罪の考え方です。
この原罪という概念は、物語上でかなり重要になっています。
例えば、いじめっ子まりなちゃん。
彼女はしずかちゃんを必要にいじめ、結果自殺に追い込みます。
まりなちゃんが、しずかちゃんをいじめる理由は、父親の不貞行為にあるようです。
しずかちゃんのお母さんは水商売(場所は北海道)をしており、そのお客さんがまりなちゃんの父親なのです。
それもかなり入れ込んでおり、まりなちゃんの母親は精神崩壊寸前、家庭も崩壊寸前。
まりなちゃんはその全ての原因がしずかちゃんにあると思い込んでいます。
親の罪で子供が苦しい思いをするなんて、理不尽に思えますが、「原罪」の考え方でいくと、まりなちゃんの行動も理解できます。
(そもそも悪いのはまりなちゃんの父親なんですが…。)
罪は遺伝するものという考え(原罪)が、まりなちゃんの行動原理であり、いじめの原因です。
下記の記事でも解説しています。
アダムとイヴの禁断の行為を、まりなちゃんの父親としずかちゃんの母親の不貞行為に置き換えるのなら、責められるべきは親であり、子どもでは無いはず。
つまり、この『タコピーの原罪』という物語で、原罪という考え方は必ずしも肯定していいものではなく、いじめの理由ともなれば、むしろ否定されるべきです。
『タコピーの原罪』とは、この『原罪という考え』を打ち破る物語なのかもしれません。
聖書にはアダムとイヴが犯し、子どもに遺伝した罪を償ってくれた存在がいました。それこそが救世主キリストです。
そして、『タコピーの原罪』にもキリスト同様にしずかちゃんを罪から救ってくれる人物が現れます。
それがタコピーと東くんです。
タコピーは一緒に罪を犯した側なので、ひとまず置いといて東くんは、今しずかちゃんの救世主になろうと必死に奮闘しています。
そして8.9話では、ついにしずかちゃんから代わりに罪を被ってくれとまで言われました。
東くんが本当の意味でしずかちゃんを救える日が来るのか見所です。
そして物語の中でも、一番気になるのはタコピーの原罪についてです。
物語の演出では、第4話にて初めての殺人が行われて、それこそが原罪のように描かれています。
しかし、どうもこれがミスリードに感じてしまいます。
もちろんタコピーとしずかちゃんが犯した罪の1つであることには違いありませんが、タコピーにはもっと別の罪がありそうですよね。
考察③タコピーの正体。母星を追放された宇宙人説。未来の地球人説。
物語において、『原罪』についても謎ですが、最大の謎はやはり『タコピー』の正体です。
なぜ地球にきたのか、ほんとに宇宙人なのか?考察していきます。
正体①タコピーは、母星を追放された宇宙人説
タコピーはハッピー星から、みんなをハッピーにするために来たハッピー星人だと自称しています。
が、なぜかも星にいた頃の記憶を失っており、なぜハッピー星に帰ることができないかも忘れています。(うーん、怪しい笑)
タイトルにある『原罪』という言葉からも連想するに、これはどうみても「失楽園」ですよね。
「自分はハッピー星人で、みんなをハッピーにしなければいけない。」と思い込まされているだけで、実はタコピーの正体は、ハッピー星で大罪を犯し、他の国に追放された地球外生命なのかもしれません。
罪を償うために死刑ではなく奉仕刑で、ハッピー道具を悪用しないように記憶を消された可能性もありますね。
正体②タコピー未来の地球人説
これはSNS上でも多く考察されていました。
理由はタコピーが使う道具が全て地球人と共通概念のもの(カメラ、リボン)ばかりであることに加えて、タイムリープを行えることにあります。
未来の地球人が何らかの理由で地球にやってきているのかも知れません。
私はこの考察は面白いと思いつつも、あまり信憑性はないと思っていましたが、読み返してみるとだんだんあっているような気がしてきました。
理由としては、まずタコピーが地球に来た時の乗り物がスペースシャトルであることです。
タコピーはタコのような形をしたベタな宇宙人のような見た目ですが、UFOなどベタな宇宙人の乗り物ではなく、スペースシャトルをつかって地球に来ています。
さらに、カメラやリボンが地球人のものと形が同じなのはまだいいとして、なんと時計まで同じ形なのです。
物の形状が用途によって似通ってしまうことはありますが、文字や時間の概念まで同じだともう疑う余地がなくなってきます。
そして、私が決定的だと思ったのはタコピーが四足歩行だということです。
タコピーはしずかちゃんや東くんから「たこ」と呼ばれていますが、それはタコに似ているからという理由だけです。
タコピー本人はしずかちゃんが似ていると言っているから、タコピーという名前を受け入れているだけで、自分では似ていると思っていません。
タコピーの腕は四本で人間と一緒です。
そして、これを引き立たせるかのように、しずかちゃんがタコピーにみせた生物図鑑の『ミズダコ』のページには「種目 八腕形」と載っています。
わざわざ腕の本数を意識させるような演出を載せたのは、人間とタコピーの体の形が実は同じだということを読者に気がつかせるためだと思います。
タコピーの正体とは、別惑星に移住した未来の地球人というのが今のところあっているような気がします。
原罪というパワーワード。考察しがいのある作品。
あらゆる漫画や物語に登場する原罪とか、大罪、福音、ついついそういう言葉に惹かれてしまいますよね。
エヴァンゲリオンが代表的ですが、そういう言葉がつかわれるとどうしても聖書と読みくらべて、あーだこーだ言いたくなってしまいます。
ほんとに創世記などの物語を隠喩しているのか、ただ物語を深くみてもらうためにつかっているだけなのか、それとも読者にあっと言わせるためのミスリードなのか。
この手の作品はミスリードなのか見分けが付きにくく、考察するのが面白いです。
『タコピーの原罪』はまだ9話までしか配信されていないにもかかわらず、物語が2転3転して目が離せません。
毒親やいじめの描写は読んでいて辛い部分もありますが、ハッピー星人が物語をハッピーエンドで終わらせてくれることを祈りたいです。