2021年12月から連載開始され、インターネットで注目を集めている『タコピーの原罪』。2022/02/14現在、ついに第10話まで連載されました。
下記の記事では、『タコピーの原罪』において最重要ともいえるキャラクター「タコピー」について考察をしました。
さらに、『タコピーの原罪』には、いじめられっ子のしずかちゃんと、その元凶である、まりなちゃんが登場します。
今回は、まりなちゃんに焦点を当てて、いじめの行動原理や、毒親について解説と考察していこうと思います。
目次
いじめっ子まりなちゃん。ジャイアンとは比べ物にならないほど陰湿ないじめ。
『タコピーの原罪』は、ところどころにドラえもんの雰囲気を感じることができます。
「しずかちゃん」というキャラクターの名前や、いじめられっ子が主人公で、それを人外が道具をつかって助けるという部分も似ています。
逆に似てないところは、自殺や殺人の描写があったり、いじめの内容がハードで陰湿なところです。
しずかちゃんを自殺に追い込むほどハードないじめをしていたのは、同級生の「まりなちゃん」というキャラクターです。
フルネームは雲母坂まりな。(きららざかまりな)
このまりなちゃんは、しずかちゃんの持ち物を何度も隠したり、殴ったり蹴ったりと、「いじめ」と聞いて思い浮かぶことを一通りやっています。
そして、挙句の果てには、ネグレクトされているしずかちゃんの心の支えになっていた愛犬「チャッピー」を、まりなちゃんは計画的に保健所送りにします。
これが原因で、しずかちゃんが自殺をすることになったり、タコピーがまりなちゃんを殺すことになってしまいます。
まさに諸悪の根源。
物語の序盤は、彼女が悪役のように描かれており、読者は「彼女さえいなければ平和なのに」とついつい考えてしまいます。
しかし、物語を読み進めていくと、彼女の家庭環境にも同情できる部分が多くあることがわかります。
家庭崩壊、毒親のお手本。まりなちゃんの両親とは。
まるで、毒親のバーゲンセールのように『タコピーの原罪』には、お手本のような毒親が多く登場します。
しずかちゃんの親、東くんの親、そしてまりなちゃんの親も例外なく毒親です。
まりなちゃんの父親は風俗通いでそれを隠そうともせず、母親は精神崩壊寸前で娘に対して過干渉になっています。
だから、いじめをしていいというわけではありませんが、同情の余地があるのは確かです。
毎日のように夫婦喧嘩をみせられ、父親は自分に無関心で母親には依存され、生まれながらの聖人でもなければ人格が歪んでしまって当然です。
親から遺伝するまりなちゃんの行動。母親はタコピーの変身に気がついていない。
まりなちゃんは親から受けたストレスを、そのまましずかちゃんにぶつけています。
そして、まりなちゃんの言動に注目することで、まりなちゃんの行動原理がよくわかります。
人の悪口のボキャブラリーは言われたことがある言葉か、自分のコンプレックスしかありません。
親の言葉遣いは、子どもに似ていきます。
正確に言えば、親がよく使う口癖や、育った環境で使われていた悪口のボキャブラリーが、そのまま子どもに受け継がれるのです。
しずかちゃんに対するまりなちゃんの態度や言動は、まりなちゃんが親から言われてきた言葉や受けてきた扱いが反映されています。
例えば、タコピーが変身した偽まりなちゃんが、父親の味方をした、第7話のシーン。
母親がまりなちゃんを偽物であると気がついたような描写がありました。
あのシーンは、母親が偽まりなちゃんの正体に気がついたのか、まりなちゃんの態度が気に入らなくて、ヒステリックを起こしたのか考えられますが、後者が正しいのでないかと考えます。
あの場面のまりなちゃんの母親の行動を思い返してみましょう。
この行動は一見、まりなちゃんの母親が、あたかもタコピーの変装に気がついたように見えます。
しかし、「前はずーっとママの味方で」という発言をしていることから、正体うんぬんと言うよりは、「ママの味方じゃないまりななんて、私の子(まりな)じゃない」というニュアンスなんだと考えられます。
さらに、第4話のまりなちゃんの回想シーンには、「まりちゃん、わかるよね?」といって母親がまりなちゃんの頬に手を当てるシーンがあります。
「まりちゃん、わかるわね?」という発言が、第7話のビンタシーンにもある上、第4話の回想コマをよくみると、まりなちゃんの頬は赤く腫れています。
恐らく、母親は、まりなちゃんが気に入らない行動をすると、日常的に同じような行動(暴力)をしていたのだと考えられるのです。
そして、この『質問⇒気に入らない返答⇒ビンタ⇒質問⇒気に入らない返答⇒ビンタ⇒要求』という行動はそのまま、まりなちゃんもやってしまうシーンがあります。
それは第4話のタコピーが殺人をするきっかけともなった、しずかちゃんに対するまりなちゃんのいじめのシーンです。
そして、2話でも同じように『質問⇒ビンタ』のやり取りをタコピーとしています。
まりなちゃんがお母さんに日常的にやられている拷問のような問答のやり方は、そのまましずかちゃんに対するいじめのやり方になっています。
しずかちゃんに対する悪口は、母親の言動や自らのコンプレックスを、そのまましずかちゃんにぶつけています。
「まりちゃんを返して⇒パパを返して」母親とまりなちゃんの言動はそっくりで、しずかちゃんの愛犬を奪ったのも、父親がしずかちゃんの母親に奪われたからなのでしょう。
『タコピーの原罪』という物語において「親が子に与える影響」=「原罪」である。
そもそも原罪とはなんなのか。旧約聖書の創世記にて語られています。
キリスト教の一般的な解釈では、アダムとイヴから受け継がれた罪のことです。
アダムとイヴが神に禁じられた知識の実を食べてしまったことで失楽園し、このことでアダムとイヴの祖先である現代人は様々な苦しみがあるというのが原罪の考え方です。
本来、子どもが親の罪を背負うって理不尽ですよね。
実際、しずかちゃんの母親が、まりなちゃんの父親と不貞行為に及んだからといって、しずかちゃんまで責められる筋合いはありません。
しかし、物語を追ってみるとわかりますが、しずかちゃんの魔性っぷりはどうみても親から受け継がれているようにみえます。
そして、まりなちゃんも母親のヒステリック質問法を受け継いでいます。
そもそも『タコピーの原罪』には、まともな大人が登場しません。
そんな大人達を親に持ってしまった子ども達が、どうやってその罪と向き合っていくかが物語の鍵になってきます。
聖書では、アダムとイヴが犯し、子どもに遺伝した罪を救世主キリストが償いました。
「原罪」という考え方において、やはり親から遺伝する罪は子が払拭しなければならないのです。
『タコピーの原罪』という物語において「親が子に与える影響」=「原罪」であり、償わなければならないことです。
そして、しずかちゃんのまりなちゃんの原罪は同じで、親が不貞行為に及んだことです。
本来、手と手を取り合って共に困難に立ち向かえば、毒親であれど、しずかちゃんとまりなちゃんは、お互いが支えになれたはずです。
さらに、大ハッピー時計を使えば、まりなちゃんを復活できる可能性もあります。
個人的に、まりなちゃんには救われて欲しいキャラクターでもあるので、何とかハッピーエンドになってほしいものです。
第10話にて東くんは、兄に救われることで親の呪縛から解き放たれました。
しずかちゃんとまりなちゃんにも、救いが待っていればいいのですが…。
物語も終盤。タイザン5先生の作品はハッピーエンドのものが多いので、ここからの展開が毎週楽しみです。