
今回は『チェンソーマン』のアニメがつまらない、酷いといわれている件について考察・解説していこうと思います。
PV公開当初から話題になっていたアニメ『チェンソーマン』ですが、声優やCGの出来について特に批判的な意見を見かけます。
それは単に”アンチ”とは言い切れない評価なので、引き画の多用する撮り方についても監督や制作陣のインタビューなどを踏まえた上で考えていきましょう。
アニメ『チェンソーマン』の円盤売り上げは初動1735枚、累計2060枚とかなり伸び悩んでおり、さらにそのことに対する中山竜氏監督のコメントが逆効果となり、国内外で批判の声が上がっています。




目次
アニメ『チェンソーマン』とは。豪華な作画とOP&ED
チェンソーマン(アニメ)
原作 | 藤本タツキ |
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制作 | MAPPA |
監督 | 中山竜 |
シリーズ構成・脚本 | 瀬古浩司 |
アクションディレクター | 吉原達矢 |
チーフ演出 | 中園真登 |
製作プロデューサー | 木村誠 |
クリエイティブ・プロデューサー | 瀬下恵介 |
美術設定 | 中野尚美 |
チェンソーマン(アニメ)は2022年秋アニメとして、テレビ東京系列全6局で毎週火曜日深夜24時に放送されていた、藤本タツキ氏の『チェンソーマン』を原作としたアニメです。
毎週変わる豪華エンディングや画面でキャラクターがヌルヌル動く「超作画」が話題になりました。
しかし、高評価の反面、批判的な意見も多く、これからチェンソーマンの映画や二期を展開していくのには、不安が残る作品になってしまったのには間違いないでしょう。
アニメ『チェンソーマン』がつまらない理由。批判される理由は?
「ネット上の批判的な意見」を盾にするのはフェアじゃないので、先に筆者の感想を述べておきますが、筆者は漫画『チェンソーマン』はかなり好みの作品でした。
『チェンソーマン』のみに限らず、『ファイアパンチ』や短編作品も藤本タツキ氏の独自の作家性が感じられるものでどれも楽しく読み切ることができました。
藤本タツキ漫画の考察・解説・レビューはこちら
肝心のアニメ『チェンソーマン』はというと…正直言えば途中(8話くらい)で辛くなってアニメの視聴をやめてしまい、覚悟を決めてから1クール完結後に全話視聴し直しました。
作画が良いと言われていますが、ヌルヌル動きすぎて逆に不自然を感じさせるところがありました。
戦闘シーンはヌルヌル動いても違和感ないですが、マキマがヤンキーみたいに肩で風を切るような下品な歩き方をしている動作を観ていて辛かったです。
SNSや大手アニメ評価サイト、VODの視聴データを調べてみても、途中でアニメの視聴をやめてしまったという人は少なくないようで、理由としては
- EDが毎週変わる
- 声優の演技、声量が小さい
- テンポが悪いアニオリが無駄
- 漫画のセリフや構図が変更されてて意味が違う
などがあるようです。
不評理由①EDが毎週変わる。ファンがつきにくい?
筆者はEDに関してはあまり気になりませんでしたが、EDが毎週変わるのが気になってしまったという視聴者もいるようです。
「内容とEDがあっていない」などはあくまで個人の感想ですが、「毎回違うとファンがつきにくい」というのはなるほどと思いました。
たしかに毎回EDが変わってしまうと「このアニメといったらこのED」というのがなくなってしまい、視聴者を増やすというのには向かない手法だと思います。
しかし、結果的にはどのEDもyoutubeの再生数やオリコンを見る限り好評のようなので、これはアニメ『チェンソーマン』の不評の理由にはなりえないと思います。
不評理由②声優の演技、声量が小さい。何言ってるかわからないのは致命的。
これは特に「永遠の悪魔戦」で感じました。
永遠の悪魔戦といえば、無数の口や目がある不気味な悪魔と、そんな不気味さを物ともしないデンジのクレイジーさと頼りがいのある様子が描かれる重要な場面です。
永遠の悪魔は2週にわたってメインばりにEDに登場し、戦闘シーンも次週に先延ばして視聴者の期待を高めます。
しかし、いざ戦闘シーンが始まると、SEやBGMが大きすぎて重要なセリフが何を言っているのかわからないという事態になっていました。
これに限らずアニメ『チェンソーマン』は全体的に声優の音声が低めです。演技が上手い下手は気になりませんでしたが、セリフが聞こえないことで、丁寧にはられている伏線がわかりにくくなっていました。
監督が実写を意識しているからか、あえて漫画的なケレン味のあるセリフを聞こえにくくしているのかもしれませんが、それにしても限度があります。
原作未読の人はセリフが聞き取りづらい故、意味がわからないという感想になってしまい、原作ファンにとっては、楽しみにしていたシーンの迫力が欠けるという二重苦になっています。




不評理由③テンポが悪い。アニメオリジナルシーンとしての意味。
テンポやアニオリシーンについては完全に個人の好みの部分で、好きな人もいると思うので一概に不必要なシーンとは言えません。
原作のテンポの良さも「早すぎてついていけない」という人も確かにいました。
しかし、わざわざ原作の”テンポの良さ”を悪くしてまで、人気のシーンを引き延ばした割には、人気シーンはあっさり終わってしまいます。
そして、そのかわりにかなり長めの尺でアニオリシーンが入っているとなると、どれだけアニオリシーンが優れていても、「そんな時間あるならもっとあのシーンを丁寧にやって欲しかった」というファンの不評を買ってしまいますよね。
デンジやアキなどの、魅力的なキャラクターがまるで生きているような生活感のあるアニオリシーンがあるのは良いのですが、それはあくまで悪魔とのバトルシーンという非日常の部分がしっかり描かれているから映えるシーンになるのだと思います。
不評理由④漫画のセリフや構図が変更されてて意味が違う。アニメ版の一番悪いところ?
デンジの「俺達の邪魔すんなら」ってセリフの“俺達”ってところ切っちゃってたけど、マキマとの最終決戦の「私達の邪魔をするなら」の私達も切っちゃうのかな。
どっちもポチタ大好きな感じで比較されてて好きなセリフ
— アリスケ (@walking_planets) December 7, 2022
「漫画のセリフや構図が変更されてて意味が違う。」これは一番言われていることです。
こちらでも語りましたが、引き画の多様やアニオリシーンの追加などは、まだアニメ監督の作家性として許容できる、楽しめる部分もあるとしても、セリフの意味や物語の展開に違和感がでるような改変の仕方はどうしても気になってしまいます。
すでに有名ですが、例えばデンジのセリフである「俺達の邪魔すんなら死ね」というセリフの“俺達”という部分がアニメだと抜けていて、ポチタとの運命共同体であるというデンジの想いも後半の伏線も消えてしまっています。
アメコミの大人気ヴィランに”ヴェノム”というキャラがいます。
彼も体の中に化け物が同居していて、悪魔のような見た目に変身して戦うダークヒーローっぽいキャラなんですが、自分のことを“Iam”ではなく“We are ”と言います。
これはヴェノムというキャラクターが、デンジとポチタの様に人間と化け物が2人で1つというのをたった一言で感じさせられる最高の一人称だと思います。
これが初実写化では一人称がIamになって叩かれ、後の実写化作品ではWe are という一人称に直っていてそれだけでファンから大絶賛されていました。
そういった背景も踏襲している映画好きの藤本タツキ先生らしいリスペクトだと思っていましたが、アニメでは期待していた分、カットされていて残念でした。
また、パワーがアキ家にやってきたシーンでは、なぜかパワーが「トイレで糞を流さない→風呂はたまにしか入らない」という流れになっており、原作とは順番が逆になっています。
であるにも関わらず、そのあとデンジがパワーが糞を流さないで詰まったトイレをしぶしぶ掃除するシーンになっており、展開がおかしくなっています。
ここはパワーのはっちゃけぶりと”胸を揉ませる”という約束を守ることで、デンジへの信頼と好意が最初に感じられるファンも多いシーンなのに、意図が不明な改変で違和感があるシーンになってしまっています。
上記でも書きましたが、テンポの悪さやアニオリシーン、引き画の多用などは個人の好みの問題として考えたとしても、原作の良さや流れをなくしてしまう改悪に関しては、やはり気になってしまいます。
まとめ。引き画も実写撮りもかっこいいのだが…。
『新世紀エヴァンゲリオン』などアニメをあえて実写のように撮る(描く)ことで味のある戦闘シーンや生活感のある日常シーンをつくっているアニメもあります。
アニメチェンソーマンも人型人外同士の殺し合いのシーンなんか、ハリウッドに劣らないかっこよさと迫力がありました。
なので監督の実写のようにアニメを造るのもいいとは思いますが、原作の人気なシーンを消してまでやることではないのかと思います。正直あの完成度では原作の良さを消してまでやる意味はなかったように感じてしまいます。
以上をまとめると
- 藤本タツキ氏の「チェンソーマン」を原作としたアニメ。毎週変わる豪華エンディングや画面でキャラクターがヌルヌル動く超作画が話題。
- 高評価の反面、批判的な意見も多い。
- 声優の演技や声量が小さい→セリフがちゃんと聞こえないと丁寧にはられている伏線が台無しになる。
- テンポが悪いアニオリシーンが無駄に多く感じてしまう→アニオリは個人の好みでも、アニメ化に至るまでになった所以である原作の人気シーンを消してまでやる意味はなかった。
- 漫画のセリフや構図が変更されて違和感があるシーン→物語の展開に違和感がでるような改変の仕方は気になってしまいどうしても集中できない。
原作改変は悪いことではないです。
有名な庵野秀明監督や宮崎駿監督など名立たる監督たちも、原作があるものをアニメ化する際に自分流にした結果、原作者と揉めたなんて話はよくあります。
いいアニメを造ろうとしているのが画面からビシビシ伝わってくるからこそ、それが空回りしている感じがして観るのが辛いわけですが、二期や劇場版もぜひ同じ制作陣にやってもらいたいと思えるクオリティはありました。
どこかが致命的に悪いというよりも、いろんなところがちょっとづつ噛み合わなかったという印象なので、今後のアニメ『チェンソーマン』の展開に期待です。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。