【ファイアパンチ考察】トガタの正体は300歳の祝福者?最期に残した「生きて」の意味。についての記事をご覧いただきありがとうございます。
この記事では『ファイアパンチ』の考察として、『トガタ』の正体についてや、トガタが最期に残した「生きて」のセリフについて考察・解説していきます。
『チェンソーマン』でさらに世間の注目を集めるようになった、藤本タツキ先生のセンスが光る過去作『ファイアパンチ』。
前回の記事では、『ファイアパンチ』の元ネタや、アグニの能力について解説していきました。
今回は、その『ファイアパンチ』に登場する人気キャラ、そして物語にとって重要なキャラクター「トガタ」を解説・考察していきます。
彼女に注目すると意外な謎が見えてくる?
目次
トガタとは。300歳の映画大好きイカレ女!?
登場作品 | ファイアパンチ |
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巻数 | 全8巻 |
作者 | 藤本タツキ |
主人公 | アグニ |
主要人物 | トガタ |
トガタとは漫画『ファイアパンチ』に登場する重要人物です。外見は容姿の整った若い女性ですが、実は主人公と同じ再生の祝福を持っており実年齢は300歳です。
しかし、精神年齢は実年齢に比べ幼く、下ネタが大好きで自己中心的でひょうきんな性格であることが作中の描写から伺えます。(長く生きすぎた人間は記憶や人格がリセットされるというような描写があるので、もしかしたらトガタも記憶や人格に異常があったのかも。)
上記の性格や、文明が失われた世界で他の人がわからない旧世代の映画引用ネタを多用することからも、作中のほとんどのキャラクターから「イカレた女」扱いをされていますが、経験からくる判断能力と戦闘力は主人公たちを何度も救いました。
トガタの目的。ファイアパンチを主人公にした映画を撮る。
トガタは300年前の世界が氷で包まれる前の世界を知っている数少ない登場人物であり、あの世界に氷の魔女はいなくてただ地球が氷河期に入っているだけだということも知っていました。
死ぬことも老いることもできないトガタは、暇な毎日を映画で満たすことができていましたが、ある日ベヘムドルグの尖兵に住居を爆破されてしまい映画のデータをすべて失なったことで絶望し、廃人の様になっていました。
しかし、配下のゲイカップルが偶然撮影した、燃え続ける再生祝福者アグニの映像を見て、彼を主役にドキュメンタリー映画を取ろうと思い立ちます。
トガタの正体。トガタも役を”演じていた”。
自主制作映画のためアグニに格闘術を教え、彼のベヘムドルクの奴隷たちを解放したいという想いを尊重してファイアパンチを信仰するアグニ教をつくりあげました。
すべてはファイアパンチであるアグニの復讐劇を盛り上げるため、敵の配置や仲間の収集に励んでいましたが、ある日アグニ教の信者の一人、崇める心を読める祝福者に自分がトランスジェンダーであることをばらされてしまいます。
トガタとしては体が女で心が男であることは誰にもバレたくない秘密で、映画のことを放ってアグニの元から離れていってしまいます。
アグニの必死の説得によって何とか戻ってきますが、トガタもアグニと同じく生まれの不幸によって、演じたくもない役(ひょうきんでイカレた女)を必死で演じていたことがわかります。
トガタの最期「生きて」の意味は?好意か呪いか。
トガタの最期は唐突に訪れました。アグニは念願の自分を焼いた本人であるドマに復讐を果たしますが、人を殺しすぎた自分に絶望して自殺してしまいます。アグニの自殺方法は入水自殺でしたが、トガタは湖に沈んだアグニを身を挺して引き揚げます。
その際にアグニの消えない炎が体に燃えうつってしまいます。
痛くて声もまともに出せず、筋肉がこわばって歩くどころか立ち上がることもできない。トガタは燃えて初めてアグニの苦しみを真に理解できたといえるでしょう。
痛みを少しでも和らげるためトガタは考え事で頭をいっぱいにします。映画のキャラクターのようになにか死に際のセリフを残そうと考えました。
自分の好きな映画をあれやこれや思い出し、結果トガタの最期のセリフは「生きて」でした。
はじめて他人を想ったトガタ。
トガタはアグニを助けたとき、自分はもともと誰かを助ける主人公になりたかったことを思い出しました。
「せっかく助けたアグニも自分が死んだら自殺してしまうかもしれない。」
最後の最後までトガタは映画のことと自分のこと(自分の死に方)で頭の中はいっぱいかと思いきや、最期にトガタが想ったのはアグニの未来でした。そして出てきた言葉は映画のセリフの引用でもなく、ふざけるわけでもなく、「生きて」です。
この時トガタにアグニに対する恋愛感情や好意があったのかはわかりませんが、奇しくもアグニの妹と死に際のセリフが同じになったのは、同じような感情をアグニに対して抱いていたからでしょう。
トガタの正体は藤本タツキ先生本人?死んだら人間は映画館に行く意味。
トガタの“映画マニア”という設定は藤本タツキ先生の趣味が露骨に出ており、 「ダイ・ハード」や「コマンドー」、ジブリやルーカスフィルム、他にもB級映画などのセリフや小ネタが仕込まれています。
トガタの趣味趣向はそのまま藤本タツキ先生自身の考え方といってもいいかもしれません。
トガタは中盤のラストで死んでしまいますが、その後のアグニの行動に大きく影響を与えました。トガタはアグニに対して人間は死んだら映画館へ行くという妄言を語っていましたが、それは妄言ではなかったのです。
『ファイアパンチ』の世界では死ぬと本当に映画館のような謎の場所に行きます。これはいわゆる“走馬灯”を暗喩しているのだとおもいますが、トガタのトム・クルーズに対するセリフがこれの回答になっていると思います。
トガタはトム・クルーズはどの映画に出ていてもかっこいいが、プライベートを覗くと女性関係にだらしなかったり、変な宗教を信じていたりするから幻滅する。
だからといって、映画に登場するトム・クルーズのかっこよさは変わらないのだと言います。
つまりは「自分は何者かは他人からの評価で決まる」ということです。
生きている間は自分が何者かなんてわかりません。トガタも自分が死ぬときになってはじめて自分を客観視することができて、自分が何をしたかったのか思い出すことができます。
『ファイアパンチ』では“自分とは何者か”というのがテーマになっており、アグニもずっと自分が何のために生まれてきて何のために生きるのか自問し続けていました。
そんなのは死ぬまでわからない、と言ったら元も子もない気がしますが、大切なのは死んだ後に自分の人生とはどんなものだったのか、大切な人の横で観ることができることでしょう。
物語のラストでは、アグニとルナが兄妹並んで映画を観終えることができています。
これは救済だというとなんか宗教っぽくなってしまいますが、死んだ後に大画面で自分の映画を観れると思うと、映画好きなら今を頑張って生きようと思えますよね。
『ファイアパンチ』にて主人公に次ぐ重要キャラクター「トガタ」。
主人公になりたかった語っていたトガタですが、自分が作った映画ではしっかり最期まで監督の勤めを果たしました。
最初は、メタ視点をもったちょっと痛いギャグキャラかと思いきや、しっかり感動させてくれるキャラクターでしたね。
まとめると
- トガタとは漫画『ファイアパンチ』に登場する主人公と同じ再生の祝福を持った実年齢300歳の容姿端麗な女性。
- 精神年齢は実年齢に比べ幼く、自己中心的でひょうきんな性格。
- 映画引用ネタを多用し、“映画”というものすら知らないほとんどのキャラクターから「イカレた女」扱いをされる。
- トガタは、湖に沈んだアグニを身を挺して引き揚げ、その際にアグニの消えない炎が体に燃えうつり、死亡する。
- トガタの「映画マニア」という設定は藤本タツキ先生の趣味が露骨に出ている。
アグニがサンとして生きている時、トガタが撮った映画を観て拳を握りしめていました。
それは、ただ体が燃える痛みを記憶していただけかもしれませんが、かの有名な円谷英二監督もはじめて『キングコング』を観たとき、もっていたパンフレットが潰れるてくしゃくしゃになるほど興奮して拳を握りしめていたそうです。
観客にしっかり興奮と感動を与えることに成功したトガタは、立派に映画監督として仕事をやり遂げたといっていいでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。