
【ファイアパンチ考察】サンの死亡の理由。犬と信仰とマキマが繋がる。解説&考察。
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この記事では『ファイアパンチ』の考察として、『サン』の正体についてやサンの最期、マキマとつながる信仰心について考察・解説していきます。
『チェンソーマ』で、さらに世間の注目を集めるようになった藤本タツキ先生のセンスが光る過去作『ファイアパンチ』に登場する人気キャラ“サン”。
彼に注目すると意外な面白さがみえてくる。




目次
サンとは。性別は男性、見た目は女性の中世的な美男子。



登場作品 | ファイアパンチ |
---|---|
巻数 | 全8巻 |
作者 | 藤本タツキ |
主人公 | アグニ |
主要人物 | サン |
祝福 | 電気を操る |
サンとは漫画『ファイアパンチ』に登場する重要人物です。外見は中世的な美男子で、その見た目からベヘムドルクに捕まった際には、女の子に間違われて慰み者にされそうになってしまいます。
サンには度々不幸が降りかかりますが、超ポジティブ思考な彼は、物語の終盤まで曇った顔をしません。
サンのアグニへの信仰心。救ったのか救われたのか。
自分の故郷が滅んだことで幼くして一人旅をしていたサンは、放浪中にベヘムドルクの人狩り部隊に捕まってしまいます。
そこをたまたまドマへの復讐に燃えるアグニに助けられますが、その後他のベヘムドルクの兵士アグニと共に再度捕まってしまいます。
はじめは上記の理由から慰み者にされるところでしたが、サンはわずかながらにも電気を生み出すことができた為、ベヘムドルクの“薪”にされてしまいます。
“薪”とは、ベヘムドルクのインフラを支える為のエネルギーを生み出せる祝福者のことで、目隠しと拘束をされ、死ぬまでむりやり祝福を搾取され続けます
サンはアグニに救われてから、アグニの事をずっと神の使い、神そのものとして扱うようになっており、薪になってからも希望を捨てず、アグニの助けを待ち続けました。
結果、トガタによってベヘムドルクの死刑執行部隊から助けられたアグニは、サンを助けに戻ってきます。
ここからサンは、ますますアグニを神の様に崇め、信仰するようになります。
この後の展開を知っていると一見サンの一方的な想いにみえますが、アグニもアグニでサンに救われています。
これまでアグニはドマを殺すためだけに生きてきて、復讐だけを目標にし、他のものには目もくれず生きていました。しかし、サンを助けたいという自分の本心に気が付いたことで、アグニは人間性をすこし取り戻します。
他にもサンは、ネネトという同じくベヘムドルクの奴隷にされていた少女の心も救っており、サンの純真さはある意味人間にとって大事な感情を呼び起こしてくれるのかもしれません。
サンの祝福。電気を生み出す神業級の能力。
サンの祝福は電気を生み出したり、操ることができる能力です。
幼少期はごくわずかな電気しか生み出せませんでしたが、青年のなると空から雷を落せるほどの威力になりました。
某海賊漫画の神様が電気能力者だったがために、炎よりもよっぽど神様っぽいです。
しかし、サンはそんな神業レベルの能力になってからもアグニを信仰し続けており、自らの電気さえもアグニの力によるものだと語っていました、
サンの最期。死亡原因はアグニの炎。
サンはアグニに助けられたあと、同じくアグニに助けられた者たちとアグニ信者の村を築いて暮していました。
途中からアグニは信者の村から離れてしまいますが、アグニがいない10年間ずーーーっとアグニを信仰し続けており、その信仰はもはや信仰というよりもヤンデレっぽい感じになっていました。
「〇〇なんて〇〇じゃない」
「〇〇は〇〇しない」
「〇〇な〇〇なんて嫌」
などのセリフは完全にヤンデレのそれです。
アグニではなくファイアパンチとしての生き方を決めたアグニと、ファイアパンチではなくアグニを信仰するサンの想いはすれ違い、ついに戦いになってしまいます。
戦うことになてなお「これはアグニ様から与えられた試練だ」といっており、誰よりもアグニを想い続けた結果、もはや頭の中の理想のアグニを創り出してしまっていたようです。
サンの戦闘力はすさまじく、戦闘では終始アグニを圧倒します。
途中に頭を消し飛ばされたアグニが正気を取り戻し、サンの事を思い出しますが、「これは演技だ」と疑ってしまいアグニを消し炭にしてしまいます。
アグニの焼死体最期の試練を破ったと大喜びしますが、アグニの最期の力を振り絞った拳の炎がサンに引火しサンはそのまま燃えて死亡します。
死に際パニックになったサンは「助けてくださいよ」「正義を見せてください」「主人公でしょ」など、のたまいますが、一度消し炭にされて記憶を失ったアグニに「誰?」と返され絶望し、「アグニいいいい!!」と絶叫しながら絶命しました。
※アグニの炎について詳しい考察はこちら
サンは“トガタ”と“マキマ”に似た存在!?『チェンソーマン』とつながるメッセージ。
#チェンソーマン
#ファイアパンチ
マキマもサンも信仰心が似てる— アリスケ (@walking_planets) February 27, 2023
サンは『ファイアパンチ』の作品内外で、人物像が重なるキャラクターが存在しており、『ファイアパンチ』内ではトガタと表裏一体のキャラクターだったように感じます。
二人とも祝福者で外見は女性だけど中身は男性であり、自分の想いをアグニに押し付け、アグニに「生きて」といった数少ないキャラクターです。
違ったのはアグニへの想いのみ。自分の映画に対する想いをトガタはアグニに押し付けますが、最期にはアグニの想いを尊重します。
しかし、サンは最後の最後まで理想アグニ像をアグニに強要し続けました。
人間味のあるラスボスは珍しくないですが、自分の想いを他人に押し付けようとしてしまうところは、なんだか読んでいる読者側も少なからず同情してしまう部分ではあります。
同じく藤本タツキ著『チェンソーマン』にもマキマというサンのような狂信者が登場しました。
「〇〇はこうでなければならない」という信仰の末たどり着いた、ただの自分の理想を絶対のものとしている感じをみていると、サンとマキマの姿を重ねてしまいます。
どちらも信仰しているのは神様でもなんでもないもので、「物は見方によって神にも悪魔にもみえる」というなんだか深いことが描かれているようにみえますが、「他人に自分の理想をおしつけるな」という単純なメッセージとしてよむこともできます。
そもそもアグニが炎に身を焼かれ続け、妹も友人も知り合いも死んだ世界で生きていなければならないのは、ルナに「生きて」といわれたからでした。
兄妹とはいえ、他人の意思で苦しみながら生きてきたアグニにとって、人になにか命令されたり指示されたり、言うこときかされるのは地雷だったでしょう。
自分の意思で生きなかったことに葛藤していたアグニは、物語の終盤で自らの意思で“ファイアパンチ”として生きていくことを決めます。自分の意思で動いた結果、アグニは救われました。
同じく他人の意思に従って生きてきたことを後悔している『チェンソーマン』の主人公デンジもいつか救われることを願っています。
まとめ&余談 「神は言っている」の元ネタ。狂信者マキマのもととなったキャラクター“サン”。
時にアグニを客観視した存在となり、時にアグニの生きる原動力になり、時にアグニの敵となる。
サンは他にあまりみない面白いキャラクターだと思います。
ちなみに大人になったサンが裏切り者を処刑する際に言うゼキエル25章第17節っぽいセリフは元ネタが映画「パルプ・フィクション」だと言われています。
そしてゼキエルといえば「神は言っている〇〇〇、〇〇と」というよくネットミームにもなっている言葉が有名です。
これをネットミームやネットの悪ふざけが大好きな藤本タツキ先生がネタで入れたのか真意はわかりませんが、知っている人には狂信者のサンがより滑稽にみえるような面白い小ネタでした。
以上まとめると
- サンは漫画「ファイアパンチ」に登場するラスボスである。
- 外見は中世的な美男子。
- 度々不幸が降りかかるが、超ポジティブ思考で決してくじけない。
- ポジティブ思考の根底にあるのはアグニが自分を助けてくれた時の想い出。
- 成長してアグニを軽く倒せるほどの強力な祝福者になるが、アグニの事を信仰し続けていた。
- 途中から信仰というよりただの願望の押し付けになっており、記憶を失ったアグニ本人によって殺される皮肉な末路を辿る。
- 『チェンソーマン』のマキマと狂信者のラスボスという点で重なる。
アグニのすごさを語ったり、『ファイアパンチ』の世界の残酷さを見せてくれたり、『ファイアパンチ』という作品はサンがいてこその作品だと思います。
それでも他の作品のラスボスや敵キャラのように「もう一人の主人公」とは呼べないような“ずれ”があって、徹底して「自分は脇役、主人公はアグニ」として生きている姿は読んでいて最後まで面白いキャラクターだと思わせてくれました。




最後まで読んでいただきありがとうございました。