※公式「少女終末旅行」より
『少女終末旅行』は、2人の少女が衰退した世界を生きるために旅する物語です。
ほのぼのとしつつも、世界がなぜ滅んだのか示唆する描写もあり、なかなかおもしろい作品でした。
一つの作品が、「〇〇のパクリ」という酷評を避けるのが難しい時代になっています。
多くの作品に「どこかで見たことあるようなシーン」や「どこかで見たようなセリフ」、「どこかで見た事あるような設定」があります。
もちろん中にはあえてそうしているものもあります。
「パクリ」と「オマージュ」や「パロディ」は違います。
これは持論になってしまいますが、作者が影響を受けた作品を、あえて自分の解釈で描いた作品こそ名作だと思っています。
かの有名な宮崎駿監督も「七人の侍」や「ゴジラ」に大きく影響を受けたことを語っています。
だからといって、宮崎駿監督は「七人の侍」や「ゴジラ」の「パロディシーン」を作品の中に入れるかと言ったら違います。
絶対にそんなことをはしません。
「俺ならこう描く。」
「俺ならこういう終わり方にする。」
「俺ならこういうかっこよさを描く。」
そういった熱い思いがこもるからこそ、影響を受けた作品に並ぶくらい、自分の作品が面白くなるのです。
パロディがある作品が悪いとは言いません。ですが安易にパロディに走るということは、それを神格化したのも同然です。
「この作品を自分は越えられない」と認めてしまうことになります。
読者が作品を観て、「自分ならこうしたい」と思うのは当然の感想です。
それを実際に作者側になって、世の中に作品を送り出そうというのなら、立派なことです。
名作を超えて見せようとすることはおこがましくもなんともありません。
そんな想いを『少女終末旅行』からは感じました。
宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』から影響を受けたことを感じる作品ではありますが、それを「パクリ」と感じないほど作者の「想い」が、『少女終末旅行』感じられる作品だと思います。
前置きが長くなってしまいましたが、これを説明しなければ、「ナウシカと似ている作品だから褒めている」と誤解されかねないので話させていただきました。
目次
風の谷のナウシカとは?人類が一度衰退し、再度繁栄しようとする物語。世界浄化計画。
『風の谷のナウシカ』という作品を知っている方は多いと思います。金曜ロードショーの定番ですからね。
しかし、原作の『風の谷のナウシカ』を知っている方は少ないかと思います。
漫画版の『風の谷のナウシカ』を、簡単に説明すると映画番の『風の谷のナウシカ』のその後までが描かれているのが、漫画版です。
漫画版では、ナウシカ達の出生の秘密や、他の部族との交流、トルメキアの王族や世界の歴史にまで話が広がっています。
※以下『風の谷のナウシカ』の微ネタバレあり。
ナウシカ達は実は人造人間で、腐海が世界を浄化した後に、人類(創造主)を起こす役目があるために生きていた。
これが漫画版『風の谷のナウシカ』では描かれています。
この真実が明らかになるシーンには、これまで感じたことの無いカタルシスを感じることができるので、読んだことの無い人はぜひ読んでみてください。
もしナウシカ達が衰退したらどうなるのかが『少女終末旅行』には描かれている。
漫画版『風の谷のナウシカ』で、ナウシカは自分たちが腐海がある世界(空気が汚い世界)でしか生きられないということを知ります。
ナウシカは、腐海や他の今共に生きている人達と共に生きることを選択し、創造主達が眠る場所を燃やし尽くします。
ナウシカ達がこれからどうなるかわかりません。
空気が正常になっても耐えられる体に進化していくかもしれないし、腐海の絶滅と共に滅びるかもしれない。
その疑問のひとつの答えが『少女終末旅行』には描かれていると思います。
文明を最高潮に発展させた、旧人類の世界は一度滅び、次に繁栄した二次的な文明は、旧人類の兵器や物資を使えるものだけ使って生きようとする。
しかし人類の滅びの流れには耐えきれずに、緩やかに人口は減っていく。
『少女終末旅行』はナウシカ達が衰退した世界。と言うよりも、ナウシカが現れなかった世界と言えるかもしれません。
少女終末旅行では『ヌコ』という生物が、風の谷のナウシカでいう腐海や蟲の役目をになっています。兵器(火薬や化学物質、核兵器)を食べる存在。
そんな『ヌコ』という存在に希望を抱き神として崇めていた人達がいることも劇中では明らかになります。
『風の谷のナウシカ』にも「腐海」や「蟲」を神格化して扱う人達がいました。
世界が浄化されていく中、人間は懸命に生きようとするけど、いつか終わりを迎えます。そして最後の人間も必ず存在します。
それが少女2人なのです。
これが男女の物語ならば、お話は創世記となるでしょう。しかし、少女2人だからこそ「終末」を迎えることになります。
『風の谷のナウシカ』と似ている部分はあれど、しっかりと『風の谷のナウシカ』では描かれなかったお話が描かれているのが『少女終末旅行』です。
余談・あの世界は日本とドイツが対戦に勝った世界?
明確に示唆する場面はありませんが、日本製品やドイツ兵器が多く存在するところを見ると、あの世界は第二次世界大戦で、日本とドイツが勝った世界線なのかもしれません。
あの世界は現実の世界とは別の世界とも考えることもできますが、
日本とドイツという国が勝った世界が、辿る運命を『終末』として描いているのなら、なかなかの皮肉でおもしろいですね。笑
『少女終末旅行』の漫画版では、『風の谷のナウシカ』もそうですが、『2001年宇宙の旅』のモノリスを連想するようなものも登場します。
Amazonプライムビデオで『少女終末旅行』のアニメを全話無料で見ることができますが、気に入った方はぜひ漫画版もご覧になってはいかがでしょうか?