今回は『チェンソーマン』きってのギャグキャラクターである鶏の悪魔”コケピー”について考察・解説していきます。
出オチのギャグキャラとみせかけて実は重要な伏線も?そしてSNSで話題になった『タコピーの原罪』とのつながりや元ネタも解説していきます。
目次
鶏の悪魔”コケピー”とは。何話から登場した?
鶏の悪魔”コケピー”とは漫画『チェンソーマン』第2部の記念すべき第1話(98話)より登場した作中最弱レベルの悪魔です。
高校生の三鷹アサが通うクラスにて飼われることになった「鶏の悪魔」で見た目は頭がないこと以外は普通の鶏です。
大きさも現実の鶏サイズで、首につけた蝶ネクタイから人語を喋ること以外は特に異常性を感じません。
悪魔としての危険度も低く、担任の田中先生は3か月クラスで育てたらコケピーを殺して食べると言っています。
果たして悪魔は食べられるのか?という疑問はひとまず置いておいて、いくらなんでも悪魔を軽く見すぎな気がします。
しかし、読者の不安もすぐに取り払われます。
コケピーはすぐにクラスメイト達と馴染んでいって、一人もコケピーに襲われたりはせず、仲良く3ヶ月が経過しました。
コケピーの能力。弱い弱いといわれているが、喋られる悪魔は強いのでは?
コケピーに能力はありません。しいて言うなら首がない(頭部がない)のに生きていられることと人の言葉を喋られることです。
コケピーは教室から逃げ出したところで、野良猫に殺されてしまうほど弱いそうです。
食べられるまでの3か月間、教室から逃げ出さなかったのは逃げ出したところで野良猫や野良犬、デビルハンターにすぐに殺されてしまうからでしょう。
『チェンソーマン』の作中ではトマトの悪魔や豚?の悪魔などの人間に食べられるものの名を冠する悪魔は弱く描かれています。
トマトや豚の悪魔からは知性が感じられず、モブとして処理されていました。
コケピーも鶏の悪魔なだけあって、戦闘能力が弱いのはしょうがないとして、喋られる時点で悪魔としては強そうな気がします。
『チェンソーマン』1部”レぜ編”では、人語を喋る悪魔状態のレぜをみた民間のデビルハンターが「うおっ喋った…」「なかなか強いぞコイツ」と反応しています。
その時のレぜは、華奢な女の子らしい体格に制服の上からエプロンをつけた姿をしています。爆弾はチェンソーマンに食べられたことで、人間の記憶から忘れられているので、頭の形は脅威に感じないはずです。
この時のレぜの戦闘力を測る材料は、目の前で倒れているサメの魔人の焦げた姿のみで、さらに人間の姿をした悪魔は友好的だという情報も知っていれば、この民間のデビルハンター達がレゼを強いと思ったのは、人語を喋ったからです。
確かに”人語を喋れる”というのは悪魔にとって大切なはずです。
人間と契約するにも、他悪魔と連携をとるにも有名なインバイトをするにも人語は必須です。
人語を喋れるどころか、自虐ネタで人から笑いをとれるほど話が上手いコケピーは、本当は弱くはなかったのではないかと思います。
作中ではっきり死んだと明記されているので、なんとも言えませんが、そもそも鶏の悪魔があの世界で生まれた時点で少なからず人々から恐怖されているということです。
鶏を題材にしたホラー作品は意外と少なくなく、漫画やゲーム、小説や映画にも鶏を怖く演出しているものがあります。現実世界でも感染症の媒介者となることもあり、アレルギーや恐怖症を持っている人もいます。
記念すべき2部1話の1ページ目から登場したのに早々に物語から退場してしまったコケピーですが、今後もどこかで登場するかもしれません。
三鷹アサや正義の悪魔との関係。
コケピーはクラスで話し合った結果、友達になったので3か月経っても食べずに生かすことになりました。
その結果に悪魔に親を殺されて以来、悪魔嫌いの三鷹アサは不機嫌になりますが、コケピーの屈託のない態度やクラスメイトの優しい態度にアサもコケピーを迎え入れようと決心します。…が悲劇は起こってしまいました。
アサがコケピーを抱いた直後転倒してしまい、アサはコケピーに覆いかぶさる形で転倒してしまいます。コケピーは、そのままアサに潰されて内臓が破裂し死んでしまいました。
アサはこの事件以来クラスメイトからいじめられるようになってしまい、下駄箱に鶏肉を入れられたり、陰口を聞こえるように言われる陰湿ないじめにあうようになってしまいました。
アサは自殺を考えるほど落ち込み、無気力になっていきます。
しかし、このアサの転倒事件は、後に正義の悪魔と契約したアサのクラスの委員長がアサを貶めようとして、わざと足をひっかけて殺したことがわかります。
そしてさらに、アサはコケピーを殺したことは悔いておらず、みんなの前で殺したことを見られたことを悔いていたことがわかりました。
正義の悪魔と契約した委員長には恋敵を陥れる計画の一環として殺され、殺した本人のアサも別にコケピーを殺したことは悔やんでいないという、死んでからも報われないのがコケピーの不憫でかわいいところです。
コケピーの元ネタは?SNSで話題になった新しいチェンソーマン構文
コケピーの元ネタは色々なものが語られています。
作者の藤本タツキ先生は『チェンソーマン』のアニメOPでもみせたように、多くの作品のリスペクトやオマージュを作品内に取り入れています。時に物語の根幹に関わる大事なセリフや、アイテムであったり、本当によく見ないと気が付かないレベルのものであったりします。
そしてコケピーの元ネタは”生き様”、”名前”、”デザイン”の3つが合わさっています。
元ネタ①『命の授業』チェンソーマンに世界で命の授業に意味はなかった!
コケピーの生き様の元ネタは“命の授業”です。命の授業とは、とある小学校のクラスで豚を育てて食べるという、小説化やドラマ化もされた有名なお話です。
「小学生達は育てた豚に愛着が沸いてしまい殺していいのかわからない」「殺すのなら自分たちの手でやるべきなのでは?」という葛藤がありますが、コケピーに関してはそこまで深く議論が交わされている様子はありません。
なんとなくかわいそうだから殺さないといった感じで、担任の先生も「悪魔だからといって命を粗末にしてほしくなかった」などともっともらしいことを言って授業をほったらかしてみんなで遊び始めてしまいます。
描かれていないだけであのクラスメイト達にも葛藤があったのかもしれませんが、アサへのいじめの道具に食べ物が粗末に使われていることを見る限り、コケピーの身を挺した命の授業は意味がなかったことがわかります。
コケピーは本当に不憫。
元ネタ②『タコピーの原罪』デンジ「タコピー鬼つええ このまま逆らう奴ら全員ぶっ殺していこうぜ!」
タコピーの原罪とは、『チェンソーマン』2部と同じくジャンプ+で配信されていた全16話の短期連載漫画です。
内容はいじめられっ子のヒロインを蛸型の地球外生命体“タコピー”が救うというもの。
ヒロインの名前がしずかちゃんだったり、不思議な道具が登場したり一見『ドラえもん』パロのギャグ漫画かと思いきや、物語はいじめや虐待、自殺が絡んだハードな内容です。
読者が毎週肝を冷やしながら読み進めて、何かあるたびに登場人物たちの行く末を憂いているジャンプ+のコメント欄に、問題のコメントが現れました。
「タコピー鬼つええ このまま逆らう奴ら全員ぶっ殺していこうぜ!」
このコメントがつけられた第4話は、タコピーがしずかちゃんがいじめられているのを前にして、なんとか勇気を振り絞って止めに入ったら、勢いあまっていじめっ子を殺してしまったという回です。
物語の鬱要素のすべての始まりであり、原罪というタイトルを想起させる不穏な展開に当時の読者達は阿鼻叫喚でした。
「タコピー…」「考えうるなかで最悪な選択」「ええぇ」「うわぁ、」「なんちゅうんもん読ませてくれたんだ、」「バッドエンド確定」
多くの読者がしずかちゃんとタコピーの逃れられない犯した罪を憂う中で、まるで少年漫画を読んでいるような無邪気なテンションのコメントがありました。それが「タコピー鬼つええ このまま逆らう奴ら全員ぶっ殺していこうぜ!」です。
倫理観がなく、純粋にバトルを楽しんでいるようなコメントは、いつしか同時期にジャンプ+で人気を博していた『チェンソーマン』の主人公デンジが言っているようなセリフだとされ、SNSやまとめサイトでネタにされまくってしまうのでした。
なかには有名人もネタにしており、デンジが言っていないのにチェンソーマン構文としてファンの間で使われていました。
そして、とうとう『チェンソーマン』第2部では逆輸入の形でパロディがされることになりました。藤本タツキ先生は時事ネタやインターネットミームが好きなようで度々作品内に見ることがありますが、ここまで露骨なパロディは「タコピー鬼つええ」が相当気に入ったのかもしれません。
SNSでは『チェンソーマン』第2部の連載が始まったとき「コケピー鬼よええ」とつぶやかれまくっていました。
元ネタ③『首無し鶏マイク』 弱いのは元ネタの死に方があっけないからか?
コケピーのデザインの元ネタは、首無し鶏マイクだと思われます。
首無し鶏マイクとは、1945年にアメリカのコロラド州の養鶏場で生まれた存在で、首を切り落とされてもなお生きていた実在した鶏です。
首を切られても奇跡的に脳幹が損傷しておらず、出血もすぐにとまったことでマイクは生き延び、その生命力は称えられ、地元ではお祭りになるほど騒がれました。
首を切られてもしばらく動く鶏は珍しくないそうですが、そのほとんどが数分と経たずに息絶えてしまいます。しかし、マイクは食事をし、毛づくろいまでしていたとされており、地元の大学はマイクはしっかり生きていると証明しました。
しかし、そんな生命力の象徴の首無し鶏マイクは、餌をのどに詰まらせあっけなく死んでしまいました。首がないのに窒息死した生物はおそらくこの世でマイクだけだと思いますが、このあっけなさはなんだかコケピーと似ています。
とはいえマイクのほうは、3か月どころか1年以上は生きていたそうなので、マイクとコケピーを比べるのは、マイクに失礼かもしれませんね。
再登場の可能性は?アサにまとわりつく不穏な影。
110話のアサの夢の回想シーンの前にはいってる鳥の羽のカットインはコケピーの羽根なのかな?
吉田とデンジがお茶してたカフェの鳥籠の中の羽根と同じにみえるけど、なにか意味があるのか?
ないか…。あの鳥籠の羽根は戦争の悪魔のものだと思ってたけど。
— アリスケ (@walking_planets) November 8, 2022
『チェンソーマン』2部110話では、アサは鶏の死骸が出てくる夢を見ていました。コケピーを殺したことに罪悪感を感じていないとされていたアサですが、やはり何か思うところはあるのかもしれません。
今のところ、武器にするには罪悪感が重要なので、コケピーの死骸は武器に役立ちそうにないですが、今後アサが悔い改めてコケピーに罪悪感を感じる日が来るかもしれません。その時はコケピーを武器にすればきっと強力な武器が作れるでしょう。
その前にコケピーほど弱い悪魔なら、地獄で瞬殺されてすぐ輪廻転生してきそうですが、110話ではアサの夢が描かれる前に奇妙な鳥の羽根のカットインがありました。
普通に考えればこれはアサの夢の中の鶏の羽根なのでしょうが、この羽根はデンジと吉田ヒロフミが会話したカフェに飾ってあった「鳥かごに入った羽根」の絵とつながりがあるようにも感じます。
「鳥かごに入った羽根」についての記事はこちら
絵の鳥かごに入った羽根は、てっきり戦争の悪魔(ヨル)のよだか状態の羽根のことを暗喩しているのだと思っていましたが、これがもしコケピーのことだとすると、コケピーはまだまだ2部にかかわってくるかもしれませんね。
まとめ コケピーとは何だったのか?不憫なところがかわいくも不気味。
- コケピーとは、漫画「チェンソーマン」第2部の記念すべき第1話より登場した作中最弱レベルの悪魔。
- 見た目は頭がないこと以外は普通の鶏で、悪魔としての危険度も低い。コケピーは教室から逃げ出したところで野良猫に殺されてしまうほど弱いという。
- コケピーの元ネタは「命の授業」だが、コケピーの身を挺した命の授業は意味がなかったことが、アサへのいじめの道具に食べ物が粗末に使われていることからわかる。
- チェンソーマン第2部で、逆輸入の形で『タコピーの現在』のパロディがされるようになった。
- チェンソーマン2部110話で、アサは鶏の死骸が出てくる夢を見ていて、アサの夢が描かれる前に奇妙な鳥の羽根のカットインがあった。カフェに飾ってあった「鳥かごに入った羽根」の絵とつながりがあるようにも感じる。
最後までご覧いただきありがとうございます。
コケピーは元ネタのタコピー鬼つええ構文が好きなので再登場があれば個人的にも嬉しいです。