アニメ『メイドインアビス2期 』烈日の黄金郷編、盛り上がっています。ワズキャンのお子様ランチに喫ミーティもいいですが、原作漫画を読んでからアニメを観た筆者としてはファプタがイメージどおり過ぎてもっと大好きになりました。
そこで今回は、つい読み流してしまいそうになるファプタの正体や本当の目的、復讐について考察、解説していこうと思います。
- ファプタの概要
- ファプタの性別
- ファプタの人間関係
- ファプタの復讐
- 気が付きにくいファプタの真の復讐
- ファプタを読み解くとでわかる黄金郷編のテーマ
について考察と解説をしますので、良かったらぜひ最後まで読んでいってください!!
目次
ファプタとは。母のために復讐に燃える美しき姫君!?
考察に入る前にまず、そもそも“ファプタ”とはなんなのかおさらいしていきましょう。
ファプタとは、深界六層にある成れ果て村『イルぶる』の周辺に住まう謎の人型生物です。鳥のような羽毛におおわれた手足と褐色の肌を持ちます。
金色に輝くつぶらな瞳をもち、女の子のような外見もあいまって大半可愛らしいですが、怒りや憎悪のような負の感情を抱いている時は獣のような形相に変貌します。
怒りや憎悪を向ける対象は主にイルぶるの住人、成れ果て達で、成れ果て達と関係を持ったリコや干渉機達にも攻撃的な一面をみせました。
ファプタの生みの親イルミューイとイルぶるの関係とは。
ファプタはイルぶるに住む成れ果て達を憎悪し、復讐することを望んでいました。
イルぶるとは、かつて深界六層に到着した決死隊が案内役として連れていた現地の子供“イルミューイ”が、アビスの遺物“欲望の揺籃”で村に変身した状態を呼びます。
イルぶるとなり、子供を食われ続けたイルミューイは決死隊をアビスの危険から守るため、村になったと思われていましたが、イルミューイは決して決死隊のことを許していませんでした。
欲望の揺籃の力で子供を産み続けたイルミューイは、決死隊が生きるためとはいえ、子供を奪われ失い続ける苦しみを味わい続けていました。
その地獄の営みもイルミューイが成れ果ての村“イルぶる”になることで終焉を迎えますが、イルミューイは最後の子供を村人たちの手の届かない村の外に産みました。
ファプタを食べることも、ましてや触れることさえ出来ない決死隊をみてファプタは怒りと憎悪を爆発させたかのようにみえます。(もちろん決死隊の成れ果て達にファプタを食べようなんて気はなく、贖罪の気持ちしかないだろうが。)
ファプタの行動原理は親であるイルミューイの無念を晴らすこと、親の敵をとることです。(イルミューイがほんとに無念だったかは後で考察します。)
おしりの穴いっこだ!ファプタと単孔類の関係。
ファプタは人間のような見た目に鳥のような羽毛と骨格を持っていますが、おしりが1個という単孔類の特徴も持っています。
単孔類といえば、これまたほ乳類と鳥を混ぜたような見た目を持つ「カモノハシ」が有名です。
カモノハシは愛くるしい見た目故かぬいぐるみやキャラクターのモチーフにもなっています。(カモノハシはファプタのようにくるまるのが得意。)
大変愛くるしいカモノハシですが、実は縄張り意識が強く、縄張りに入った同族をくるまって水に沈めて溺死させたり、浮気した相手をくるまって上記の方法で殺してしまうほど嫉妬深い生き物です。
ファプタの性別 カモノハシ説を推すならおとこの娘?
ファプタの性別は作中で明言されておらず、度々読者の間ではファプタの性別について議論されています。
男の子のレグに好意を寄せているたり、姫と呼ばれていることから女の子という説が有力ですが、上記で語ったカモノハシの習性は全てオスの特徴です。
つくしあきひと先生がわざわざおしりの穴が1個だという描写を入れて、専門家の間では有名な嫉妬深いカモノハシと共通点を持たせたのにはちょっとひっかかります。
つくしあきひと先生がショタ好きな時点で怪しいですが、メイドインアビスではおとこの娘が出てくる上に同性愛の描写もあります。
ファプタが実はおとこの娘だったとしてもファンは減るどころか増えそうですが、とりあえず個人的は雌雄同体説を推しておきます。
ファプタの人間関係。レグとのイチャイチャに必見。
ファプタの人間関係の幅は意外と広いです。物語を通して怒っている時や、拗ねている時が印象的ですが話せばわかるタイプで、ファンの中ではチョロイン疑惑まで上がっています。
特にレグ関係ではファプタの喜怒哀楽が全て観られるので、漫画アニメ共に何度でも見返してしまいますね。
ファプタの育ての親カブールン。
ファプタはイルぶるの外で生まれ、イルぶる周りの干渉機を破壊し尽くしたあと、村人達の好奇の目から逃げるように立ち去りました。
イルぶるから離れたファプタは、干渉機のカブールンと出会い関係を深めていきます。
ファプタは最初こそ警戒していましたが、カブールンのおおらかな態度にすぐに心を開き、まるで父と子のような関係を深めていきました。
生みの親がイルミューイなら、育ての親はカブールンと言った所でしょう。
ファプタとレグ。友達以上恋人未満の関係の変化。
ファプタは、リコ達と出会う前のレグと友達以上恋人未満の関係を築いていました。少ない回想シーンからでもわかる2人の仲睦まじい様子は、殺伐なメイドインアビスの大事なほっこり要素です。
レグが記憶喪失したことで、2人の関係はゼロからになってしまい、ファプタは自分が忘れられたことに怒り狂ったり拗ねたり悲しんだりと感情が大変なことになっていました。
しかし、レグと関係がリセットされ、それでもレグがファプタに歩みよったことで、2人はは友達以上恋人未満の曖昧な関係から“仲間”という強固な関係になることが出来ました。
メイドインアビスは“絵柄詐欺”“ロリグロエロ”の要素から、一部でゲテモノ扱いをされていますが、“仲間”という少年漫画の王道をちゃんと押えていて大切に丁寧に描いているところが面白いですよね。
ファプタの嫉妬の対象だったリコ&ナナチ。
リコとナナチはファプタにとって恋のライバルと言っていい存在で、リコに関してはレグの記憶喪失の原因になったかもしれない憎むべき相手です。
最終的にリコとらナナチはファプタと和解し、かけがえのない探掘仲間になりますが、ファプタの相手をレグだけに任せず、ちゃんと4人で向き合って問題を解決
しようとする姿はラストバトルにふさわしいものでした。
イルミューイとヴエロエルコの関係。母と子に憧れた2人。
ファプタの人間関係、人格形成を語るにあたってはずせないのがイルミューイとヴエロエルコの関係です。(ヴエロエルコはながいのでヴエコって呼びます。)
ヴエコとはアビスの深部、黄金郷を目指す決死隊の一員で、イルミューイにとって母親のような存在です。
イルミューイは決死隊がアビスの淵にある村で出会った少女で、生まれ持って体に異常があり、子どもを産めない体でした。
そしてヴエコもまた幼少期から性的虐待を受けており、子供をつくれない身体でした。子供を産めないことを理由に村八分状態になっているイルミューイを見かねたヴエコは決死隊の道案内としてイルミューイを同伴させるように進言します。
決死隊と共に黄金郷を目指したイルミューイの日々は過酷ながらもヴエコとの幸せに満ちた日々でした。
そしてヴエコとイルミューイはいつしか母子のような関係にまで発展していましたが、アビスの中では幸せな日々は長く続きませんでした。
決死隊は現地の寄生型の生物「水もどき」に侵され始め、全滅の危機を迎えてしまいます。体が小さい少女のイルミューイはすぐに身体に異常が出始め、ヴエコも時間の問題になりました。
この危機を脱するため、ワズキャンの手によって欲望を形にするアビスの遺物“欲望の揺籃”がイルミューイに使われました。
結果として、欲望の揺籃はイルミューイに子供が産める体を与えました。しかし、子供の欲とははっきりしているぶん細かいところが足りないのか、イルミューイの子供は生きていくのに必要な器官がなくすぐに死んでしまいます。
イルミューイの欲望は単に子供を産みたいというものではなく、”母親になりたい”、”ヴエコに近づきたい”という想いがあったのかもしれません。
ちなみにイルミューイの子供を食べると、水もどきの症状をおさえることができます。
これは母親であるイルミューイが水もどきに侵されながら欲望の揺籃を使って変身したために、子供に水もどきに対する耐性が備わっていたのでしょう。
この子供に耐性ができるという設定は、ファプタがアビスの上昇負荷に耐性を持って生まれてきたことの伏線になっています。
ファプタ復讐の流儀。母イルミューイ解放への道。
ファプタは母であるイルミューイを文字通り食い物にしたイルぶるの住人たちに激しい憎悪を抱いています。
結果として、母親イルミューイはイルぶるの崩壊とともに自由になりました。村人達へのファプタが望んでいた復讐は一応完了したことになります。
しかし、イルミューイは自分を食い物にした決死隊を恨んでいるわけでもなく、純粋にヴエコと一緒にいることを願っていただけでした。
ヴエコとイルミューイの関係、村人達の思いを知ったファプタは皆殺しをするのではなく、むしろ村人達アビスの危険な生物から守ろうとします。
欲望の揺籃おかわり!2つ目欲望の揺籃が果たしたイルミューイの心の願いこそ、ファプタにとっての真の復讐。
村人もファプタの頑張りに答えるかのように、自分たちをファプタに食べさせることでファプタを復活させます。
ファプタには母親から受け継いだ村人達への呪いとと共に、一日で死なないで欲しいという思いから“不滅”
の祝福を受けています。
呪いと祝福の関係はボンドルド編でも深く取り上げられていましたし、これからどんどん謎が明かされていくと思うとワクワクしますね。
イルミューイは1つ目の欲望の揺籃を使ったことで、子供を産める体になりました。そして欲望の揺籃をワズキャンにおかわりすることで村となり、末の妹であるファプタが産まれました。
ファプタはイルミューイの「すぐに死なないで欲しい」「元気に育って欲しい」「五体満足で生まれてきて欲しい」という願いのもと生まれてきました。
ファプタの不死性や異常までの頑強さはイルミューイの願いから授かったものでした。
イルミューイのファプタに対する願いは、まさに子供を思う母親の気持ちそのものです。そして、村人たちもファプタの成長に親心を抱いていました。
イルミューイは末の妹で、子供を産めないと判明する前は村中に可愛がられたそうです。(末っ子はかわいかられるよね。)同じく末の妹であるファプタも村人全員の想いを背負っていました。
呪いが祝福でもあったように、物語終盤にファプタの復讐は村人達への恩返し出会ったことがわかります。
イルぶるからの解放も贖罪もファプタの復讐もファプタの成長も、全てファプタにとっては復讐でありながら、村人達にとっては心の底で願っていたことでした。
このあたりに作者つくしあきひと先生の親子の関係に対する考えがでているのではないかと思います。
親は子を育て、子供は立派に育ったら親元を離れていってしまいます。空の巣症候群というものがあるほど、子の親離れは親不孝だと一部では言われています。(ファプタの鳥に似た姿も巣立ちを連想させる。)
しかし、親にとっても子供にとっても、子供が十分に育ったら独り立ちして自分の成長した姿を親にみせてあげることが1番の恩返しなんだと思います。
ファプタにとっての村人達に対する真の復讐とは、イルミューイを解放することではなく、イルミューイが感じた子離れの苦しみと喜びを村人達にも味わわせることだったのではないかと思います。
ファプタまとめ。リコと重なるファプタの冒険への動機。黄金郷編とは望郷と巣立ちの物語だった。
ファプタはアビスの底で生まれ、母親を意識して生きてきました。
これは「メイドインアビス」の主人公リコと重なる部分があります。リコもファプタと同じく、アビスの底で生まれ、アビスの底を目指す理由も母親の生存確認のためでした。
しかし、リコはいつしか“母親に会うため”ではなく、アビスの底の謎を解き明かすことが冒険の目的になっていきます。
ファプタもリコと同様に、母親の復讐という想いはいつしか冒険への憧れに変わっていきます。
親の思いを受け継ぐと聞くとなんだか聞こえはいいですが、それは一種の呪いでもあります。
「アイドルや俳優になりたかった」「一流の大学に入りたかった」などの親の無念を子が晴らす系の物語は現実にも創作物にも多くありますが、『メイドインアビス烈日の黄金郷編』の物語は、親と子の“親離れ子離れ”の関係を、つくしあきひと先生なりにテーマとして描いたものでは無いかと思います。
ワズキャンの語る望郷もまた、故郷があってこそのものです。ワズキャンに関しての記事はこちら
故郷を大切に想う気持ち、逆に故郷にいる家族や友人が自分を想ってくれることで子供は独り立ちした後でも頑張ることができます。
「無理をしないで」「いつでも帰ってきていいよ」という言葉は、妥協のための甘い誘惑の呪いの言葉でもあれば、家族や友人が門出を祝う祝福の言葉でもあります。
リコは孤児院の仲間たちに「すぐ帰ってきてもいい」と言われて旅立つ事ができ、ファプタも村人達とちゃんと和解して心配と激励を受けてから旅立つことができました。
ヴエコはファプタとの最後の会話で、ファプタの母親であるイルミューイはもういないのだとちゃんと伝えます。
それは村人達と同じくイルミューイに行動を縛られていたファプタにとって重要なことです。ファプタが旅立つ時「みなのも、いってきます」と言っていますが、ファプタはこの時あきらかにイルぶるの村人全員を家族のように意識しています。
イルぶるに住んでいた成れ果て達は例外もいますが、ワズキャンも含めてみんな故郷がない(故郷から見捨てられた)もの達です。
イルぶるに囚われていた村人達は故郷をつくることはできても、ワズキャンの言う望郷を感じることはできませんでした。
望郷もまた村人達の悲願であり、ファプタが旅立って初めて“望郷”という現象が起きます。これには望郷に憧れたワズキャンもニッコリですね。
『メイドインアビス烈日の黄金郷編』はアニメ化をずっと期待していましたが、アニメになることでより原作を楽しめる素晴らしい作品になっていました。
ファプタの冒険はまだまだ続くようなので、これからの展開も見逃せません。これからもメイドインアビスについての考察をしていこうと思うので、また読んでいただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。