
株式会社カラー khara inc.officialから『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告【公式】が公開されました。
映像とともに流れる「One Last Kiss」という歌は、これまでも『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの主題歌を担当してきた宇多田ヒカルさんによる楽曲です。
個人的にも大ファンで、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』でも主題歌を作ってくださり、嬉しい限りです。
何度も聞きたくなるような中毒性のある曲ですが、今回はこの楽曲にこめられた意味を考察していこうと思います。
「Beautiful World」はシンジ目線の曲?宇多田ヒカルさんと『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の歴史。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告【公式】より
宇多田ヒカルさんと『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズとの関わりは、2007年『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の主題歌「Beautiful World」を担当してからになります。
2009年にはシリーズ2作目『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』には「Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-」を『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』には「桜流し」を担当しました。
その後宇多田氏は一旦音楽活動休止を挟み、2016年に活動を再開し、2020年に『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の公開日が2021年1月23日になることが発表され、
新曲「One Last Kiss」が同映画の主題歌に起用されることが発表、12月25日に、曲の一部が映画本予告編に使われることになりました。
中でも「Beautiful World」はシリーズ屈指の名曲としてファンから愛されています。
宇多田ヒカルさん自身、エヴァンゲリオンの大ファンであり、キャラクターへの思い入れは相当なものと考えられます。
インタビューでは「Beautiful World」とくに「誰の(キャラクター)ためのも」として作られたわけではないと語られています。
しかし、シンジを例に、孤独やそれ故に他人の関心を求めることや、大切な人を思う無垢な気持ちを語っており、ある程度は「誰かの目線」として作曲されているものと考えられます。
「One Last Kiss」歌詞は『シンエヴァ』のストーリーそのものか。

本予告では、特報に使われていたいつものエヴァの「次回予告」の曲ではなく、「One Last Kiss」の1部が使われました。
考えすぎかもしれませんが「One Last Kiss」は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』のストーリーをなぞってるようにも感じます。
初めてのルーブルは
なんてことは無かったわ
ルーブル=ルーブル美術館=パリ=0706作戦を表しているのではないでしょうか?
冒頭10分ですでに公開されている本編映像であり、「なんてことは無い」ことはないですが、無事に作戦は成功しています。
私だけのモナリザ
もうとっくに出会ってたから
『モナ・リザ』と言えば美術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた油彩画であり、この世でもっとも有名な絵と言っても過言ではないほど、複製画が世に溢れています。
ただ、正直モナリザの来歴やモデルがどうこうというものではないと思います。
イタリア語で「ma donna」は「私の貴婦人」を意味し、短縮形で「mona」と綴られることから、「私だけのモナリザ」というのは「自分にとって最愛の人」と捉えることができます。
それが「もうとっくに出会ってたから」というのは、エヴァの新旧ループ説に関係していると思います。
初めてあなたを見た
あの日動き出した歯車
大切な人と出会ってから物語が動き始めたという意味。
止められない
喪失の予感
二巡目の世界で、その人を失うことを知っている。
いっぱいあるけれど
もう一つ増やしましょう
何体もあるもの、増やせるもの、エヴァか?綾波シリーズか?新劇場版のカヲルくんか?
Can you give me one last kiss?
忘れたくないこと, oh…
忘れたくないこと, oh…
I love you more than you’ll ever know
エヴァンゲリオンの作品内でキスが描かれているシーンはかなり限定されてきます。
ぱっと思いつくものでミサトと加持リョウジ、シンジとアスカぐらいでしょうか?(旧劇場版の幻影綾波によるLCL化のシーンは別として考えます。)
歌詞はシンジ目線か?それとも主要人物全員のものか?

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告【公式】より
この歌詞を聞いて1番先に思いついたのは、「カヲルに対するシンジ目線」or「シンジに対するカヲル目線」です。
初めてのルーブルは
なんてことは無かったわ
ルーブルの由来には諸説ありますが「偉大な」「価値のある銀塊」というような、意味があります。
しかし、シンジとカヲルの出会いは、TVアニメ版、漫画版、劇場版、どれも最初はそっけないです。
私だけのモナリザ
もうとっくに出会ってたから
シンジからすればすでに大切な人=綾波です。
綾波とはカヲルと出会うよりも前に出会っており、使徒との戦いの日々を経て、それなりに絆も深まっています。
しかし、これがカヲル目線だとすると新旧ループ説のことを指しており、TVアニメ版の時点ですでにカヲルにとってシンジは貴い人物であり、新劇場版では「とっくに出会ってた」ということになります。
初めてあなたを見た
あの日動き出した歯車
歌詞のこの部分に関してはどちらかと言うと「シンジに対するカヲル目線」かもしれません。
カヲルは劇中でシンジに対して「君に会うために生まれてきたのかもしれない」と発言しており、シンジに実際に会うことでそれを実感したのかもしれません。
この歌詞は「シンジ目線」だとすれば『SDAT』が当てはまるかと思います。
『SDAT(ウォークマンみたいなもの、シンジが持ってる音楽プレーヤー)』とは新劇場版ではとても重要なアイテムです。
シンジの物語が進むにつれて、『SDAT』の曲も次へ次へと進んでいきます。
新劇場版Qでは、シンジは壊れた『SDAT』をカヲルに直してもらうことで曲が次へとまた進みました。
止められない
喪失の予感
止められない喪失=カヲルの死、カヲルは新旧どちらでも死亡します。
いっぱいあるけれど
もう一つ増やしましょう
新劇場版の月には何体もの(旧劇場版の量産機分)カヲルが保存されており、カヲルはシンジを幸せにすることを諦めていません。
Can you give me one last kiss?
忘れたくないこと, oh…
忘れたくないこと, oh…
I love you more than you’ll ever know
忘れたくないこと、世界が旧劇場版から新劇場版の世界へと再構築されても存在を忘れたくない存在、カヲルにとってのシンジであると考えられます。
「忘れたくないこと」という歌詞が流れる時、バックにはシンジが映っているのもポイントです。
と、ここまでシンジ、カヲル目線の歌詞として考えましたが、これらは全てのキャラクターにも当てはめようとすれば当てはめられることです。
初めてのルーブルは
なんてことは無かったわ
ルーブル=パリのルーブル美術館=0706作戦で活躍したマリ目線。
私だけのモナリザ
もうとっくに出会ってたから

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告【公式】より
この歌詞でこのシーンが映されますが、この白い鳥が電柱の上を羽ばたくシーンは、シンジが綾波を初めて視認する時の後に流れる映像です。
これはTVアニメ版も新劇場版も同じです。
つまり綾波レイ=モナリザ=貴い人、大切な人としてみているのでシンジ目線。
初めてあなたを見た
あの日動き出した歯車
アスカ目線。シンジと出会ってからアスカの人生が変わったから。と説明出来なくもないが、これは正直根拠が薄いです…
止められない
喪失の予感
カヲル目線。理由は上記と同じ。
いっぱいあるけれど
もう一つ増やしましょう
レイ目線。有名なセリフに「代わりはいるもの」というのがあります。
さらに『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の特報3には、新しい綾波レイ、通称「黒綾波」が人間味を取り戻していく姿が観られます。
Can you give me one last kiss?
忘れたくないこと, oh…
忘れたくないこと, oh…
I love you more than you’ll ever know
これは世界が再構築されるなか、忘れたくない関係があると考察すると、全キャラクターにあてはまります。
終わりに。大穴庵野監督目線。
ロシア・ルーブルの語源は「Рубить(割る)」という動詞だそうです。
これは、「Гривна(グリヴナ)」と呼ばれる価値のある銀の延べ棒を4等分したことに由来するそうです。
つまりルーブルとは4つの割かれた銀塊です。
4つにさかれたものと言えば「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズそのもでしょう。
新劇場版は序、破、Q、シン、の4部構成になっています。
しかし、もともと庵野監督は新劇場版を「新世紀エヴァンゲリオン」のダイジェスト作品のような立ち位置で作ることを考えていました。
後に続いてくるアニメーター達が自由にエヴァの派生作品(ガンダムシリーズのような)を作っていけるようにするための総集編こそ新劇場版なのです。
しかし、庵野監督は新劇場版を作っている熱が入ってしまったことを語っています。最初はなんてことなかったわけです。
ただ、まあここまでくるとこじつけ甚だしいですが個人的にはなくはないかなと思って楽しんでいます。
本予告にはまだまだ考察の余地があるのでできれば今後の記事も読んでいただければありがたいです。
それでは次の記事で!