※2021/03/10 追記
株式会社カラー khara inc.officialから『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告【公式】が公開されました。
映像とともに流れる「One Last Kiss」という歌は、これまでも『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズの主題歌を担当してきた宇多田ヒカルさんによる楽曲です。
個人的にも大ファンで、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』でも主題歌を担当ということで、本当に嬉しい限りです。
ようやく買えた。『One Last Kiss』もいいけど『Beautiful World(Da Capo Version)』も最高。#シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| #宇多田ヒカル #OneLastKiss #beautifulworld pic.twitter.com/P0kKRS3GiL
— アリスケ (@walking_planets) March 16, 2021
今回は「One Last Kiss」に込められた意味を考察していこうと思います。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』とともにに公開された「One Last Kiss」の後半部についても、考察していきたいと思います。(微ネタバレが含みます)
目次
「Beautiful World」はシンジ目線の曲?宇多田ヒカルさんと『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の歴史。
宇多田ヒカルさんと『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズとの関わりは、2007年『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の主題歌「Beautiful World」を担当してからになります。
2009年にはシリーズ2作目『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』には「Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-」を『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』には「桜流し」を担当しました。
その後宇多田氏は一旦音楽活動休止を挟み、2016年に活動を再開し、2020年に『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の公開日が2021年1月23日になることが発表され、
新曲「One Last Kiss」が同映画の主題歌に起用されることが発表、12月25日に、曲の一部が映画本予告編に使われることになりました。
中でも「Beautiful World」はシリーズ屈指の名曲としてファンから愛されています。
宇多田ヒカルさん自身、エヴァンゲリオンの大ファンであり、キャラクターへの思い入れは相当なものと考えられます。
当時、宇多田ヒカルさんのインタビューでは「Beautiful World」は「特に誰の(キャラクター)ためのもの」として作られたわけではないと語られています。
しかし、シンジを例に、孤独やそれ故に他人の関心を求めることや、大切な人を思う無垢な気持ちを語っており、ある程度は「誰か(シンジやエヴァキャラクター)の目線」として作曲されているものと考えられます。
「One Last Kiss」歌詞は『シンエヴァ』のストーリーそのものか。
本予告では、特報に使われていたいつものエヴァの「次回予告」の曲ではなく、「One Last Kiss」の1部が使われました。
考えすぎかもしれませんが「One Last Kiss」は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』のストーリーをなぞってるようにも感じます。
初めてのルーブルは
なんてことは無かったわ
ルーブル=ルーブル美術館=パリ=0706作戦を表しているのではないでしょうか?
冒頭10分ですでに公開されている本編映像であり、「なんてことは無かった」ことはないですが、無事に作戦は成功しています。
私だけのモナリザ
もうとっくに出会ってたから
『モナ・リザ』と言えば美術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた油彩画であり、この世でもっとも有名な絵と言っても過言ではないほど、複製画が世に溢れています。
ただ、正直モナリザの来歴やモデルがどうこうというものではないと思います。
イタリア語で「ma donna」は「私の貴婦人」を意味し、短縮形で「mona」と綴られることから、「私だけのモナリザ」というのは「自分にとって最愛の人」と捉えることができます。
それが「もうとっくに出会ってたから」というのは、エヴァの新旧ループ説に関係しているのではないかと思います。
初めてあなたを見た
あの日動き出した歯車
大切な人と出会ってから物語が動き始めたという意味。
止められない
喪失の予感
二巡目の世界で、その人を失うことを知っている。
いっぱいあるけれど
もう一つ増やしましょう
何体もあるもの、増やせるもの、エヴァか?綾波シリーズか?新劇場版のカヲルくんか?
Can you give me one last kiss?
忘れたくないこと, oh…
忘れたくないこと, oh…
I love you more than you’ll ever know
エヴァンゲリオンの作品内でキスが描かれているシーンはかなり限定されてきます。
ぱっと思いつくものでミサトと加持リョウジ、シンジとアスカぐらいでしょうか?(旧劇場版の幻影綾波によるLCL化のシーンは別として考えます。)
歌詞はシンジ目線か?それとも主要人物全員のものか?
この歌詞を聞いて1番先に思いついたのは、「カヲルに対するシンジ目線」or「シンジに対するカヲル目線」です。
初めてのルーブルは
なんてことは無かったわ
ルーブルの由来には諸説ありますが「偉大な」「価値のある銀塊」というような、意味があります。
しかし、シンジ目線のカヲルとの出会いは、TVアニメ版、漫画版、劇場版、どれも最初はそっけないです。
そこから、一緒に時間を共有することでだんだんと惹かれていきます。
私だけのモナリザ
もうとっくに出会ってたから
シンジからすればすでに大切な人=綾波です。
綾波とはカヲルと出会うよりも前に出会っており、使徒との戦いの日々を経て、それなりに絆も深まっています。
しかし、これがカヲル目線だとすると新旧ループ説のことを指しており、TVアニメ版の時点ですでにカヲルにとってシンジは貴い人物であり、新劇場版では「とっくに出会ってた」ということになります。
初めてあなたを見た
あの日動き出した歯車
歌詞のこの部分に関してはどちらかと言うと「シンジに対するカヲル目線」かもしれません。
カヲルは劇中でシンジに対して「君に会うために生まれてきたのかもしれない」と発言しており、シンジに実際に会うことでそれを実感したのかもしれません。
この歌詞は「シンジ目線」だとすれば『SDAT』が当てはまるかと思います。
『SDAT(ウォークマンみたいなもの、シンジが持ってる音楽プレーヤー)』とは新劇場版ではとても重要なアイテムです。
シンジの物語が進むにつれて、『SDAT』の曲も次へ次へと進んでいきます。
新劇場版Qでは、シンジは壊れた『SDAT』をカヲルに直してもらうことで曲が次へとまた進みました。
止められない
喪失の予感
止められない喪失=カヲルの死、カヲルは新旧どちらでも死亡します。
いっぱいあるけれど
もう一つ増やしましょう
新劇場版の月には何体もの(旧劇場版の量産機分、もしくはそれ以上か?)カヲルが保存されており、カヲルはシンジを幸せにすることを諦めていません。
Can you give me one last kiss?
忘れたくないこと, oh…
忘れたくないこと, oh…
I love you more than you’ll ever know
忘れたくないこと、世界が旧劇場版から新劇場版の世界へと再構築されても存在を忘れたくない存在、カヲルにとってのシンジであると考えられます。
「忘れたくないこと」という歌詞が流れる時、バックにはシンジが映っているのもポイントです。
と、ここまでシンジ、カヲル目線の歌詞として考えましたが、これらは全てのキャラクターにも当てはめようとすれば当てはめられることです。
初めてのルーブルは
なんてことは無かったわ
ルーブル=パリのルーブル美術館=0706作戦で活躍したマリ目線。
私だけのモナリザ
もうとっくに出会ってたから
この歌詞でこのシーンが映されますが、この白い鳥が電柱の上を羽ばたくシーンは、シンジが綾波を初めて視認する時の後に流れる映像です。
これはTVアニメ版も新劇場版も同じです。
つまり綾波レイ=モナリザ=貴い人、大切な人としてみているのでシンジ目線。
初めてあなたを見た
あの日動き出した歯車
アスカ目線。シンジと出会ってからアスカの人生が変わったから。と説明出来なくもないが、これは正直根拠が薄いです…
止められない
喪失の予感
カヲル目線。理由は上記と同じ。
いっぱいあるけれど
もう一つ増やしましょう
レイ目線。有名なセリフに「代わりはいるもの」というのがあります。
さらに『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の特報3には、新しい綾波レイ、通称「黒綾波」が人間味を取り戻していく姿が観られます。
Can you give me one last kiss?
忘れたくないこと, oh…
忘れたくないこと, oh…
I love you more than you’ll ever know
これは世界が再構築されるなか、忘れたくない関係があると考察すると、全キャラクターにあてはまります。
大穴、庵野監督目線。
ロシア・ルーブルの語源は「Рубить(割る)」という動詞だそうです。
これは、「Гривна(グリヴナ)」と呼ばれる価値のある銀の延べ棒を4等分したことに由来するそうです。
つまりルーブルとは4つの割かれた銀塊です。
4つにさかれたものと言えば「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズそのもでしょう。
新劇場版は序、破、Q、シン、の4部構成になっています。
しかし、もともと庵野監督は新劇場版を「新世紀エヴァンゲリオン」のダイジェスト作品のような立ち位置で作ることを考えていました。
後に続いてくるアニメーター達が自由にエヴァの派生作品(ガンダムシリーズのような)を作っていけるようにするための総集編こそ新劇場版なのです。
しかし、庵野監督は新劇場版を作っている熱が入ってしまったことを語っています。最初はなんてことなかったわけです。
ただ、まあここまでくるとこじつけ甚だしいですが個人的にはなくはないかなと思って楽しんでいます。
「One Last Kiss」後半部。人と繋がるということの尊さ。
※ここからネタバレあり
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を観て、あらためて「One Last Kiss」を後半部合わせて聴くと『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の後半部で語られる、キャラクターの心情をよく表しています。
※一部歌詞をカットしています(1番にはなかった歌詞だけを抜粋してます)
「写真は苦手なんだ」
でもそんなものはいらないわ
あなたが焼きついたまま
私の心のプロジェクター
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の劇中に、アスカがビデオに映るのを嫌がっているシーンがありました。(写真ではありませんが)
つい、そのシーンを連想してしまいます。
しかし、アスカよりも、写真を嫌っているといえば、ゲンドウのほうが当てはまっているかと思いました。
ユイを失ったゲンドウは、ユイと思い出の写真を全て破棄してしまいました。全ては心の中にあればそれでいいとシンジに言ってのけました。
絶対に再会してみせるという強い意志があったからこその発言です。
寂しくないふりしてた
まあ、そんなのお互い様か
誰かを求めることは
即ち傷つくことだった
一人でいることが好きだったゲンドウは、ユイに出会うことで、人の温もりを知りますが、失うことで初めて孤独と一人で生きることのつらさを知ります。
I love you more than you’ll ever know
もう分かっているよ
この世の終わりでも
年をとっても
忘れられない人吹いていった風の後を
追いかけた 眩しい午後
ここまでゲンドウを軸に考えていましたが、「特定の誰か」というよりも、これは全てのエヴァキャラクター、出会いや別れを経験した全ての人達に当てはまると思います。
この世の終わりの中、年をとっても忘れられない人が存在して、その人との別れを乗り越えられたのがシンジで、乗り越えられなかったのがゲンドウです。
これは『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の最終決戦の勝敗を決める大事な要因でした。(最終決戦の考察はまた別の記事で書きます)
「One Last Kiss」は、人と人との繋がりがどう終わるか、どう始まるかを描いている『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』と最高に最高に合っていると思います。(声を大にして言いたい)
人との思い出に引きずられるのではなく、それを美しい過去として心の中で完結させ、次のステージ(大人)へと成長したシンジと重なります。
「One Last Kiss」をゲンドウに聴かせたら、ユイのことを思い出して泣いてしまうでしょうが、シンジはきっと笑みを浮かべることができると思います。
「One Last Kiss」の後に流れた「Beautiful World」も最高でした。
つまり「Beautiful World」は劇場版エヴァンゲリオンの作品全体の歌であり、「One Last Kiss」は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』のための歌だと言えます。
それでは次の記事で!
よければ、Twitterのフォローもいただけたら嬉しいです。ぜひ、感想の共有をしましょう!