今回は漫画『藤本タツキ短編集22-26』の中の一つ『予言のナユタ』についてレビューと考察&解説していきます。
『チェンソーマン』の作者藤本タツキ先生の読み切り短編の一つである『予言のナユタ』。チェンソーマンにて、ラスボスの生まれ変わりが同じ名前になったことで、チェンソーマンファンからも注目を集めています。
『チェンソーマン』に登場するナユタと同じ名前に同じような雰囲気のキャラクターが登場することで注目を集めていますが、世界観やストーリーも面白かったので元ネタや小ネタなんかも考察していきたいと思います。
まだ未読の方も本記事を機に読んでみようと思っていただけると幸いです。
目次
『予言のナユタ』とは?無垢で残酷な妹と思いやりあふれる兄の物語。
作品名 | 予言のナユタ |
---|---|
作者 | 藤本タツキ |
出版社 | 集英社 |
収録 | 藤本タツキ短編集22-26 |
主人公 | ケンジ |
主要人物 | ナユタ |
『予言のナユタ』とは、『藤本タツキ短編集22-26』に収録された短編漫画の内の一つです。
あらすじは、魔法が存在するが廃れており、物事の価値観が現代へと移り変わろうとする時代が舞台で、年老いた魔法使い達の「ツノを持つ魔法使いが産れ、やがて世界を滅ぼすだろう」という予言に兄妹が振り回されるというもの。
ナユタは予言で語られる内容「角が生えている」「残酷で理解不能な言葉を喋る」という部分が該当しており、角が生えているのはもちろん、小動物を殺すのにためらいがなく、ケンジが「むやみな殺生はいけない」と何度言っても通じていないのかキョトンとしています。
母親はナユタを生む際に死亡し、父親は予言を恐れた教信者に殺されており、ケンジはナユタを一人で育てていかなければいけません。
序盤はケンジのナユタに対する愛情と疑心、決意と不安が丁寧に描かれています。
※結末ネタバレ。ナユタの真意。ケンジへの思いやり。
実はナユタが小動物を殺していたのは、全てケンジへの思いやりからでした。
ケンジはナユタと二人になってから、少ない稼ぎで買ったご飯はナユタに優先的に食べさせており、それをナユタは気にしていたというナユタの思いやりにケンジは気が付きます。
ケンジはこれまでナユタを守ろうとするばかりに過保護になってしまっており、強く叱ったりしてきませんでした。ナユタはケンジをよく観察していましたが、ケンジはナユタの奇怪な行動ばかりに目を向けていたことに気が付きます
ラストで二人は旅にでて物語は幕を閉じますが、予言が当たっているのか外れているのか明らかになってはおらず、海を背にするナユタからはちょっと不穏な空気を感じますが、一応ハッピーエンドで終わります。
ジブリっぽい世界。『予言のナユタ』の世界は破壊済み!?
『予言のナユタ』の世界はジブリの『風の谷のナウシカ』に似ている気がします。(藤本タツキ先生がジブリ好きという前情報があるからそう見えるだけかもしれませんが…。)
砂犬や鯨牛など、動物×動物のキメラみたいな動物が登場します。一方『風の谷のナウシカ』も、鳥馬などの動物×動物のキメラが登場します。
そして、どちらの作品のキメラも作中世界では当たり前にいる動物として扱われています。
『風の谷のナウシカ』にキメラが登場する理由は”発展しつくした文明が一度滅びたから”です。
実は『予言のナユタ』の世界も、作中でやたら時代遅れと卑下されている魔法文明の一度滅んだあとの世界で、ナユタの存在は現行の文明の破壊者でありながら、魔法文明復興の救世主なのかもしれません。
変な動物が出るのもファンタジーだからといってしまえばそれで終わりで、筆者の考えすぎかもしれませんが、上記のように考えるのもナユタの見え方が180°変わって面白いと思います。
作者お気に入り?ナユタの生まれた理由。
ナユタが生まれた理由は編集部に「藤本タツキのキャラには個性的なキャラがいない」と言われてなにくそと思って描いたそうです。(個性的なキャラがいない←初期の読み切りを読みましたがそんなことはないと思います。漫画の世界は厳しいですね。)
ちなみにナユタに限らず、藤本タツキ作品で妹キャラが登場することが多いのは、妹キャラに対する嗜好性からではなく”守る側守られる側”などの人間関係の説明を省くため、だそうです。
ただ過去のTwitter妹なりきり事件や、ほくろに関しては嗜好性があるそうなのでちょっと疑っちゃいますね。
予言のナユタと支配の悪魔ナユタ。
藤本タツキ先生は“ナユタ”というキャラクターが、上記の経緯から生まれたこともあってか、お気に入りだと語っており別作品である『チェンソーマン』にも登場しました。
『チェンソーマン』に登場したナユタも、予言のナユタにまけず劣らずの可愛さと恐ろしさを持っています。
共通点は
- 見た目が幼い
- ぐるぐる渦を巻いた瞳
- 泣き黒子
- 恐ろしい力をもっている(世界を滅亡させられるレベル)
- 単語しか喋らない
- 主人公と同居している
さすがに角が生えているところは同じではありませんが、『チェンソーマン』2部の展開次第では、ナユタが覚醒して角が生えるなんてこともあるかもしれません。そんな展開になったら熱い…!
まとめ:『予言のナユタ』チェンソーマンと世界は繋がる?
今回は『藤本タツキ短編集22-26』に収録されている『予言のナユタ』について、レビューと元ネタについて考察&解説をしました。
さすがに世界線は違うと思いますが、ナユタの外見や設定、主人公の立場や現代とは少し文明の発達が遅い世界など似ているところはあるので、これからも『予言のナユタ』がもとになったお話や描写があるかもしれませんね。
以上まとめると
- 「予言のナユタ」は「藤本タツキ短編集22-26」の中の読み切り短編の一つ。
- 「予言のナユタ」は魔法が存在するが廃れており、物事の価値観が現代へと移り変わろうとする時代が舞台。
- 「やがて世界を滅ぼすだろう」という予言にとある兄妹が振り回される。
- ケンジのナユタに対する愛情と疑心、決意と不安が丁寧に描かれている。
- フィクションのお話なのに子供の子育て漫画を想起させるほどケンジの心情がリアルに感じる。
- ナユタが小動物を殺していたのは、全てケンジへの思いやりから。
- 藤本タツキの「ナユタ」が生まれた理由は編集部に「個性的なキャラがいない」と言われたから。
- 藤本キャラに妹キャラが多いのは“妹”に対する嗜好性からではなく、人間関係の説明を省くためだという…が真偽は不明。
- 予言のナユタは『チェンソーマン』に登場する支配の悪魔“ナユタ”に共通点が多く、物語が進むにつれて更に似ていくかもしれない。
『予言のナユタ』はおそらく藤本タツキ先生の読み切り短編の中で『ルックバック』に継ぐ有名な作品だと思います。
『ルックバック』は魔法やファンタジーはありませんでしたが、『予言のナユタ』はかなりファンタジーな作品なのでそういう雰囲気が好きな方はぜひ読んでみることをお勧めします。
最後までお読みいただきありがとうございました。