『シン・ウルトラマン』のビジュアルが、ついに公開されました。初代ウルトラマンをデザインした成田亨さんの『真実と正義と美の化身』という絵画をモチーフにしたデザインは、カラータイマーや背びれ、ブーツ等の、特撮のためのパーツをはぶいたデザインになっています。
映画のカットと思われるビジュアルも公開され、その生物感あふれる姿に、それを見た方の中には「怖い」という感情を抱いた方も多いそうです。
前回の記事では、「『シン・ウルトラマン』のデザインの怖さ、違和感」について解説しました。
なので今回は『デザインの怖さから伝わってくる、シンウルトラマンのテーマ』について考察していきたいと思います。
前回の記事はこちら⤵︎
シンウルトラマンが怖いのは『生物』を感じるから?。
なぜ『シン・ウルトラマン』のデザインを怖いと感じるのでしょうか?
それは『宇宙人といての生物感』があるからだと思います。もちろん棒立ちで遠くをみている風貌も、怖さのひとつです。
その他の理由として、『光沢がある事』『肉感がある事』だと思います。
ツルツルとした表皮に、肋骨が浮き出ているところに、『ウルトラマン』が宇宙の中の生物感があります。
ウルトラマンは元々、「宇宙人が人間(ハヤタ隊員)に力(自分の体)を貸している」という設定からして宇宙人なのです。
しかし『特撮』という性質上『ウルトラマン』は作り物っぽさがあり、「人間の延長線上にある物」に感じてしまいます。
また、庵野秀明監督や樋口真嗣監督は、「『シン・ウルトラマン』は初代ウルトラマンをリスペクトした作品にする」といった内容を語っています。
『リスペクトする』というのは、成田亨さんデザインのウルトラマンをモチーフにしたことからも伝わってきますが、『初代の特撮』という点ではなく、『ウルトラマンの在り方』という点であり、『シン・ゴジラ』でそうだったように、『特撮よりも本来の構想を優先する』と考えられます。
もちろん庵野監督や樋口監督は、特撮が大好きなので、『シン・ゴジラ』でも特撮を使ったシーンは存在しましたし、『シン・ウルトラマン』でも特撮を一部採用するかもしれません。
しかし、少なくとも公開されたビジュアルからは、「ウルトラマンは宇宙人だから、あたりまえだけど人間とは違う生物なんだよ!」という意思が伝わってきました。
『シンウルトラマン』が、『初代ウルトラマン』で表現しきれなかった『ウルトラマンという宇宙人の姿』を描くことは分かりました。
では、肝心のテーマはどんなものになるのでしょうか?
『シンウルトラマン』では移民問題が描かれる!?
初代ウルトラマンや『シン・ゴジラ』がそうであったように、『シンウルトラマン』も二重構造で物語が描かれると思います。
映画における二重構造とは、例えば『シン・ゴジラ』なら「ゴジラが街を壊したり、自衛隊と戦うシーン」という子どもが観ても楽しめるシーンもありながら、「裏で行われる政治や外交、核問題等」の大人向けのシーンもあります。
この子ども向けの映画であっても『大人が考えさせられるテーマがある』ということが大事になってきます。
必ずしも、子ども向けと大人向けの側面があるわけではありませんが、面白い作品や、偉大な監督の作品ほど二重構造の物語になっています。
初代『ウルトラマン』や昭和ウルトラマンも二重構造になっている話が多くあります。
子どもが楽しめる『ウルトラマンと怪獣が戦うシーン』もありながら、大人も考えさせられるような『社会問題』も物語に取り入れられています。
そんな初代『ウルトラマン』をリスペクトする『シン・ウルトラマン』は二重構造の傍らとして、どんな社会問題やテーマを作品に溶け込ませるのでしょうか?(ウルトラマンの戦闘シーンはどうせ面白いから考えません。)
私は『移民問題』をテーマとして持ってくると思います。
この『移民問題』を解説するにあたって、皆さんに知ってほしいエピソードがあります。
みなさんは『バルタン星人』というキャラクターを知っていますか?世代の方は、両手を✌🏻にして「ふぉっふぉっふぉ」と誰しもモノマネを、一度は見た事あるあのキャラクターです。
名前や見た目を知っていてもどんなキャラクターか知らないという方へ、簡単に解説したいと思います。
バルタン星人とは?(初代バルタン星人のみ解説)
『ウルトラマン』第2話「侵略者を撃て」にて登場。
『ウルトラマン』初の、地球侵略を目論んだ宇宙人。
狂った科学者達(バルタン星人の中の科学者)によって母星を滅ぼされてしまったバルタン星人達。
バクテリア程の大きさまで体を縮小し、宇宙船で旅行中だった一団(約20億3千体)だけが助かり、そのまま宇宙を放浪。
放浪の末、地球へたどり着いたバルタン星人は移住を考え、1個体だけが地球(ハヤタ隊員や科学特捜隊の前)に姿を現す。
初めは人類との共存も視野に入れていたようだか、宇宙船にいるバルタン星人の多さや、ハヤタ隊員(ウルトラマン)との交渉決裂から、人類を滅ぼしにかかり、ウルトラマンと交戦。
分身や素早い攻撃によってウルトラマンを一時は翻弄できたものの、スペシウムというバルタン星人の弱点物質が含まれるスペシウム光線をウルトラマンにくらい絶命。
宇宙船にいた20億の同胞も、ウルトラマンのスペシウム光線によって宇宙船ごと倒された。というお話。
このお話も二重構造となっており、『ウルトラマンと異星人の戦い』と『移民問題』が同じお話で描かれています。
初代ウルトラマンだけでなく、次作の『ウルトラセブン』ではもっと深く『移民問題』について描かれたテーマの作品があります。
何度も言いますが『ウルトラマン』は宇宙人なのです。バルタン星人からしたら『地球人とバルタン星人の事』なのに部外者の宇宙人(ウルトラマン)が話に割り込んで来ているのです。
ウルトラセブンのある話では「今の“人”はあとから地球に来た民族で、もともと地球に住んでいたのはノンマルトという民族で今は海に追いやられている。人間がこれ以上海を汚染するなら、ノンマルトと戦いになる。」というお話もあります。
『先住民を追い出し、後から来た民族が栄える。先住民は元の地に帰りたいが、いまさら帰ってこられてもどうしようもない。』
これら『移民問題』は国単位で、現実にも起こっている問題です。
欧州連合(EU)が発足され、ヨーロッパでは中東エリアの内戦や紛争によって、国外から逃げてきた移民が増えてきているという背景があります。
日本でも少子化が進み、労働力確保のため『外国人労働者』の方がどんどん日本に増えています。
そこで衝突するのが、お互いの国における文化の違い。
そういった異文化との接し方を、『シン・ウルトラマン』で教訓として描くことができれば、国際的にも評価を得られる作品になると思います。
核問題についての外交は『シン・ゴジラ』でやったので、『シン・ウルトラマン』では『ウルトラマン』ならではのテーマを持ってくると思います。
異文化や外国人との接し方を、『シン・ウルトラマン』で、異星人との接し方として描かれるとおもしろいと思います。
そもそも『ウルトラマン』というは、宇宙人であり地球人とは違う生き物だということを、はっきり描いてくれると、個人的には嬉しいです笑。(特殊な人間が、特殊能力で巨大化出来るというのは、避けて欲しい。)
今後も新情報が発表され次第、考察を広げていきたいと思います。
余談:バルタン星人と交渉成立出来たのか?
よくバルタン星人とは、「もうちょっとちゃんと話したりすれば、皆殺しという悲劇を免れたのではないか?」という考察がされているので、個人的な見解を語ってみようと思います。
よければ、お付き合いください!
個人的には、『バルタン星人』との共存の道はなかったと思います。
もちろんバルタン星人の特使で現れた一体だけが、好戦的だっただけの可能性や、宇宙船の中には優しいバルタン星人もいるのではないか?という考えもできますが、
「生命、分からない。生命とは何か?」
「話は終わりだ。我々は地球をもらう。」
こういったセリフから、そもそも地球人とは『生命の定義が違うところ』や『一方的に話に見切りをつけてしまうところ』から、やはり地球人との共存は不可能に近い気がします。
ただ、爆発したかしていないかの違いで、皮肉にも母星を自ら破壊してしまう実験をしているのは、人類と同じですが…。
バルタン星人は『地球の美しさに惹かれた。』と語っています。
中には「地球の美しさに気づいてるバルタン星人に、人類は地球を譲った方が良い。」なんていう寄生獣のパラサイトみたいな考え方の人もいて、同じ作品でたくさんの考察が生まれるのも、醍醐味の1つだと思います。
今後もシンウルトラマンに関する考察や解説、レビュー記事等もあげていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
それでは次の記事で!